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安倍政権に助け舟を出した翁長知事
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アリの一言 (「私の沖縄日記」改め)2015年08月06日
「『最高のタイミングだっただろう』。菅義偉官房長官は4日、辺野古への移設作業の中断を発表した記者会見の後、周囲に誇らしげにそう語った」(5日付朝日新聞)
翁長知事が辺野古埋立工事の「1カ月中断」と引き換えに、「埋立承認取り消し」を公式に棚上げした(4日発表)ことは、安倍首相の戦略に完全に取り込まれ、窮地の安倍政権に助け舟を出した合したものであり、きわめて重大です。
まず厳しく批判されなければならないのは、徹底した秘密主義です。
「交渉は約2カ月前から政府、県の間で秘密裏に進められた。5月下旬、菅氏と当選同期で親しい下地幹郎氏(維新)の呼び掛けで菅氏、安慶田光男副知事、外務、防衛幹部の計5氏が都内で顔をそろえた。席上、下地氏が『普天間基地移設交渉プラン』と書かれた紙を菅氏へ差し出し、一時中断を切り出した。・・・関係者によると、7月4日、翁長雄志知事と菅氏が都内のホテルで会談した際に、工事を停止する時期や期間について協議。同31日、翁長氏と菅氏が首相官邸で会談し、8月10日からの一時停止で正式に合意したという」(5日付沖縄タイムス)
こうした経過は県民にはまったく知らされていませんでした。いいえ、県民だけではありません。翁長県政を支えるはずの与党議員たちにも、さらにはまさに辺野古の当事者である稲嶺進名護市長にさえ、いっさい秘密にされていたのです。
「国と県の合意について、稲嶺進名護市長は4日、『びっくりしている。経緯も全然分からない』と驚きを見せた。県から連絡はなかったという」(5日付沖縄タイムス)
こうした秘密主義と情実人事は翁長県政発足以来一貫したものです。それはたんに事実が知らされないというだけではありません。政府との協議で何が話し合われ、どういう「妥協」が図られようとしているのか、その重大問題から県民・国民が完全に排除されているということです。地方自治、民主主義に真っ向から反するものと言わねばなりません。
安倍政権がなぜこの時期に「1カ月の中断」を持ち出してきたかは、ほとんどすべてのメディアが指摘しているとおり、重要課題がひしめく中で「内閣支持率にさらなる悪影響が出る」(5日付毎日新聞社説)のを避けるためです。
それはただの「アリバイづくり」(5日付沖縄タイムス社説)ではありません。安保法制=戦争法案に対するかつてない国民批判の高まりの中で、大きな窮地に陥っている安倍政権の必死の延命策なのです。戦争法案を成立させるまでは「辺野古」でさらなる批判を浴びたくない。逆に言えば、いまがまさに「辺野古埋立承認撤回・取り消し」で安倍政権に決定的な痛打を浴びせる絶好のチャンスだということです。
それなのに、安倍首相の願いどおり、川内原発再稼働、戦争法案成立、さらに自民党総裁選告示まで、「撤回・取り消し」を棚上げしてやろうというのですから、菅氏が誇らしげに喜ぶはずです。安倍政権に助け舟を出した翁長氏の犯罪的役割は明白です。
見過ごせないのは、このシナリオが、すべてアメリカ政府認知の下で行われていたという事実です。沖縄タイムス平安名純代・米国特約記者の記事を引用します。
「米政府関係者らの受け止めも冷静で、事前に日本政府から通達済みであることをうかがわせる。
移設問題に関わる国務省高官は、『6月の終わりごろ、第三者委員会が7月15日ごろに(前知事の埋め立て承認について)「瑕疵あり」の報告書を出すと聞いた』と述べ、その際に『取り消しや撤回の判断を公言している現知事が望む形で協議に応じることで、審議中の安全保障関連法案への影響を抑える方法などが検討されていると聞いた』と話す。
ある国防総省筋は『工事を中断して協議することが、逆に辺野古移設を進める上でメリットとなると理解している』と述べ、辺野古移設を着実に実行するという前提で協議を始めることにより、翁長知事の取り消しを凍結できれば計画の安定化につながるとの見解を示した」(5日付沖縄タイムス)
米政府高官は“正直”です。ここに今回の「1カ月中断」の意味、狙いが端的に示されています。
翁長氏は4日の会見でさらに重大なことを言っています。またそもそも、「辺野古」で「協議」とはどういうことなのか。それらを次回検討します。
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