http://www.asyura2.com/15/senkyo190/msg/194.html
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安倍内閣の安保法案は、集団的自衛権の行使不可という従来の憲法解釈の堤を、アリの一穴で一部分だけ決壊させようするレベルのものではなく、この法案は、闇夜の中で堤の全体にダイナマイトを仕掛けておいて、法案成立後に、大爆発させて堤の全面決壊を計画しているように見えます。
集団的自衛権の行使に関しては、安保法案の核心は、自衛隊法第76条に記載されているように、従来の武力攻撃事態の他に、存立危機事態という事態でも、自衛隊が防衛出動できるようにすることにあります。
武力攻撃事態は、従来からの日本が個別的自衛権を発動するための要件です。
一方、存立危機事態とは、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態であり、日本が限定的な集団的自衛権を発動するための新たな要件とされています。
安倍首相や中谷防衛大臣、岸田外務大臣がしきりに「新三要件」と言っているものの、一つ目の条件です。
存立危機事態の定義の中に、単に密接な他国への攻撃があるだけでなく、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」という限定があることが、フランスやドイツのようなNATO加盟国と異なる、日本独特の集団的自衛権行使の要件であるという説明が政府からなされています。
そのような、現行法での個別的自衛権の発動の用件である武力攻撃事態にあてはまらない、集団的自衛権の行使が可能な存立危機事態としては、ホルムズ海峡における停戦前の機雷掃海が必要な事態が、念頭にある唯一の事例だと、安倍首相は答弁しています。
それならば、「存立危機事態」を「ホルムズ海峡危機事態」とでも言い、法案名を『ホルムズ海峡有事における機雷掃海法』とでも名付けて、その事例に限って集中的に国会で審議した方が、賛否はともあれ、安倍政権の安保法案の意図するものが、国民にも野党にもよく理解されたことでしょう。
政府の政策変更によって、後方支援での核弾頭付ミサイルの輸送を可能とするような条文をこっそり盛り込むような内閣が提出した法案ならば、政府答弁の内容を政策変更によって正反対に変えてしまえるような罠が、内閣によって法案の中の至るところに仕掛けられていていると察するのが当然でしょう[文献1]。
そのような観点から、安保法案に記載されている限定的集団的自衛権というものには、実質的な限定は存在せず、安倍内閣は「限定ツケてる詐欺」をやっているのだと考えています[文献2]。
つまり、政府の安保法案の本当の目的は、これを法律化して事実上の憲法改正をおこなうことにより、日本がフランスやドイツのように、互いに互いの国を守るためにNATO加盟国の他国の領内での武力行使をおこなったり、NATO域外で武力行使をおこなったりする、アジア版NATOのようなアジアにおける新たな多国間軍事同盟、あるいはNATOそのものに加わることができるようにすることだと考えています。
筆者が、安倍内閣の安全保障法案の本当の目的が、NATOへの加盟、またはアジア版NATOの構築であることを確信したのは、衆院で維新の党が提出した安全保障法案の対案に対しての自民党の岩屋毅議員(自民党・安全保障調査会長)の質問中の発言によってです[文献3]。
「お互いがお互いを守りあうという体制」「安全保障の大きな屋根を掛けていく」と聞いて、NATOのような広域の多国間軍事同盟を思い浮かべない人は、おそらくいないでしょう。
それを可能にするような、二つの仕掛けを政府は考えていると思います。
一つは、日本は一般に他国の領土・領海・領空では武力行使はできないとする制約を取り払うことです。
実は、この制約は国会での政府答弁、国会への政府の答弁書の中で憲法上の制約として述べられていたものであり、しかも、あくまでも原則でしかなく、例外を設けることは憲法違反ではないとされています。
およそNATOのような多国間軍事同盟で、他の加盟国の領土・領海・領空で武力行使できないないような軍事同盟では意味をなさないと考えられますが、この法案での他国での武力行使の制約は、政府の見解を変更することで、容易に他の加盟国の領土・領海・領空で武力行使できるようになります。
二つめの仕掛けは、法律に対する条約の優越性を悪用して、法律の条文(自衛隊法第76条)の中で、集団的自衛権行使のための要件である「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」(新三要件の一つ目)という限定を無効化することでしょう。
日本がアジア版NATOを構築する際の条約や、NATOに加盟する際に改正される北大西洋条約の中に、北大西洋条約の第5条に類する条文が含まれていた場合に、法律の解釈はどう変更されるでしょうか。
安保法案成立後に、日本が結ぶ新たな条約に、次のような条文が含まれているとします。
「ヨーロッパ又は北アメリカ又はアジアにおける一又は二以上の締結国が武力攻撃を受けて、当該締結国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、その武力攻撃を、全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。」
このような条文を含む、多国間軍事同盟条約が締結された場合には、加盟国の何れかの国において存立危機事態に該当すると自動的に日本の存立危機事態の要件が満たされるとされ、国際法上、他国の存立危機事態は、日本の存立危機事態とみなされるようになります。
国民を騙す意図を持った法案を提出した政府与党に対しては、国会は法案審議の場ではなく、内閣法制局や閣僚から供述を引き出し、法案に込められた政府与党の詐欺の犯行の証拠を突きつける法廷の場です。
本件に関しては、NATO高官とオーストラリア政府高官を参考人として、日本の国会の法廷に招致して尋問することが最も効果的だと考えています。
陪審員は国民であり、国民が選挙で判決を下します。
* * * * * * * *
【参考文献】
[1]防衛相、核兵器の運搬排除せず 実現性は強く否定
2015年08月05日12時23分 (更新 08月05日 13時10分)
西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/article/186643
[2]政府の安保法案の条文に、集団的自衛権行使の「限定」は、一切、存在しない!(新共産主義クラブ)
http://www.asyura2.com/15/senkyo189/msg/356.html
[3] 自民党・岩屋毅議員の質問中の発言
「やっぱり幅広く、安保協力関係を構築していって、お互いがお互いを守りあうという体制を作っていくべきだという我々は問題意識があるわけです。だから、まあ、将来はアジアにおいてもですよ、たとえば、中国、北朝鮮も含めて、どの国も排除しない、安全保障の大きな屋根を掛けていくというぐらいの、我々ビジョンをしっかり持っていないといかんと思うので。維新さんの定義を見るとですね、とにかく、それを一所懸命、限定しようとしておられるわけですね。」(岩屋毅議員)
(衆議院インターネット審議中継ビデオライブラリ
開会日 : 2015年7月13日 (月)
会議名 : 平和安全特別委員会
質疑者 : 岩屋毅
発言開始時刻(13時 01分)から概ね24分後)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=45125
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