http://www.asyura2.com/15/senkyo189/msg/773.html
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酷いというかデタラメというか、今なお国民の間で共有できるような事故原因が特定されておらず、事故原因を津波として津波への対処不足責任で過失傷害致傷罪を立証しようとすると、被告側にはぐらかされてしまうおそれもある。
福島第一1号機は、津波の襲来がなくとも、地震で受けたダメージによりメルトスルーに至った可能性が高く、事故原因と事業者の対応責任論を“津波”に集約してしまうと、国策民営事業である原発の自己責任については、日経新聞が「立証のハードル高く」と書き、後述するが元検事の高井康行弁護士が語るような反論で逃げ切られる可能性もある。
原告側が今できることは、公表されている資料(東電及び保安院のデータ・政府事故調報告書・国会事故調報告書)をベースに、事故発生後、事故及び人的損害を拡大させていく不合理でデタラメな事故対応につながった東電の教育管理システムの欠陥を明らかにし、その責任を被告たちに追及していくことだと思う。
強制起訴の罪状である過失傷害致傷罪の対象として、事故翌日に過酷な状況下で避難することになったために44名の入院患者が亡くなってしまった双葉病院問題が取り上げられているが、これ一点に絞って、そうなってしまった経緯と原因そして回避方法を立証すれば、まともな裁判官が担当するのなら有罪に持ち込めるはずである。
(同時に、中央政府=菅政権及び福島県の責任も明確になる)
簡単に説明すると、1号機は、作業員が原子炉内核燃料の冷却を維持するための非常用復水器(IC)装置の稼働状況を確認しようとした午後5時頃には、放射性物質が格納容器から外に漏れ出している事実が確認されている。
稼働時に立ち入っても安全だと豪語されている沸騰水(BW)型原発の格納容器の外に点検活動を断念するほどの放射性物質が漏出していることは、原子炉ないし原子炉に通じる配管の一部に“穴”があき、放射性物質を含む冷却水(蒸気)が格納容器に流れ出し、格納容器の蓋を押し上げるほど圧力が高まっていることを意味する。
さらに、非常用復水器(IC)装置は、タンクに貯蔵している水がなくなる90分ほど後には機能を喪失してしまう。(タンクに水を補充する手段を失っていた)
冷却が途絶えた後どれくらいの時間でメルトダウンに至るかは原発管理者など有識者であればすぐにわかることである。
これらの事実だけで、1号機は、遅くとも11日のうちにメルトスルーに至ることが予測できたはずである。(実際にそうなっている)
周辺住民の避難は翌日になって始まったが、事故状況から、双葉病院などの入院患者をはじめ、老人・幼児など自立的避難が困難な人たちの避難を3.11時点で優先的に行う“責務”があった。そして、円滑に避難を進めるために、原発事業者である東電は、事故の状況及び見通しをきちんと政府に伝えなければならなかった。
避難困難者を3.11の夕方から夜にかけて優先的に避難させていれば、11年3月中に双葉病院の50人の患者や入所者が亡くなるような事態は避けられたのである。
事故対応では、「ベントの遅れ」や「注水中止指示」が大きな問題(話題)になったが、格納容器ベントは、メルトスルーにも格納容器破損にも関わらないものである。前述したように、BW型格納容器は、圧力が高まると蓋との接合部に隙間があくことで一定レベル以上に圧力が上がらないようになっている。だからこそ、BW型原発には元々格納容器ベント施設がなかった。(90年代になって義務化)
必要のない格納容器ベントをしたことで、膨大な量の放射性物質が外部環境にまき散らされたのである。
(無知や錯誤のせいとは言え、わざわざ過剰に放射性物質を外部に放出した行為はそれだけで犯罪である)
菅元首相が叩かれるネタにもなっているが、翌日夕方のできごとである「注水中止指示」も、1号機はすでにメルトダウン→メルトスルーを経て核燃料の一部が地中に達している可能性さえあったときの話だから、それほど大きな意味があるわけではない。メルトスルーが終わったあとの注水作業が“恥ずかしい”停電で何度かとまったほうがよほど問題である。
津波対策に触れることも必要だが、犯罪立証の中核を、事故に対応できる教育や訓練をきちんと行ってこなかったことで事故の傷を広げ人的損害を拡大させたことにしなければ有罪に持ち込めないと思う。
※ 転載記事からの一部引用
「過失と感情論は別
元検事の高井康行弁護士の話 議決は「万が一にも」の事故も想定すべきだったとしている。ただ、千年に1回とされる今回の地震や津波が予測しなければならない範囲に含まれるのか疑問は残る。原発を運転する電力会社の経営陣に特別に重い注意義務を負わせることが許されるのかという点も議論が必要だ。
国民に「旧経営陣はとんでもない」という気持ちがあるのは理解できるが、刑事事件としての過失は別問題だ。結果の重大性に照らして判断する感情論が入り込んだ部分もあると思う。」
※ 参照投稿
「NHK「チェルノブイリ原発事故 隠された“真実”」:福島第1の「隠された“真実”」も語らねばならない」
http://www.asyura2.com/15/genpatu43/msg/507.html
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東電元会長ら強制起訴へ 検察審議決、原発事故「回避できた」
東京電力福島第1原子力発電所事故をめぐり、東京第5検察審査会は31日、東電の勝俣恒久元会長(75)ら旧経営陣3人を業務上過失致死傷罪で「起訴すべきだ」との議決を公表した。東京地検は同容疑で告訴された3人を不起訴にしていた。検察審が3人を起訴すべきだと議決したのは2回目。今後、東京地裁が指定する検察官役の弁護士が強制起訴する。
ほかに強制起訴されるのは、武藤栄元副社長(65)と武黒一郎元フェロー(69)。東日本大震災後の津波で発生した未曽有の原発事故について、東電旧経営陣の刑事責任が法廷で争われることになった。議決は17日付。
検察審査会は有権者11人で構成し、検察の不起訴処分が妥当かどうか審査する仕組み。
東京第5検察審は東電トップだった勝俣元会長や原子力部門の責任者だった2人が、福島第1原発を襲った津波を事前に予測できたか、必要な対策を取っていたかなどを検討した。
議決によると、東電は震災前の2008年、福島第1原発に最大15.7メートルの津波の可能性があると試算していたと指摘。勝俣元会長らは、津波の浸水で電源喪失し重大事故が起きることを具体的に予測できたとした。
そのうえで、防潮堤を強化したり小型発電機を高台に置いたりするなど必要な対策を取っていれば、福島原発事故は避けられたと結論付けた。
東京電力の話 検察審査会の審査結果へのコメントは差し控える。原発の安全性強化対策に取り組んでいく。
[日経新聞8月1日朝刊P.1]
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津波予想できたか 争点
原発事故東電元会長ら強制起訴へ 立証のハードル高く
今なお、11万人以上が避難生活を余儀なくされている東京電力福島第1原子力発電所事故から4年4カ月。市民で構成する検察審査会は31日までに、東電の勝俣恒久元会長(75)ら旧経営陣3人を起訴し刑事責任の有無を法廷で審理すべきだと判断した。3人は公判で全面的に争うとみられる。検察は2度にわたり刑事責任は問えないとしており、検察官役を務める指定弁護士の立証のハードルは高い。
■「災害への備え責務」
公判での大きな争点の1つは、勝俣元会長、武藤栄元副社長(65)、武黒一郎元フェロー(69)が原発事故前、福島第1原発に全電源喪失が起きるほどの10メートル超の巨大津波が襲来することを予測できたかどうかだ。
検察審は、東電が原発事故の3年前の2008年、政府機関の地震予測に基づき、明治三陸地震(1896年)並みの地震が起きた場合、福島第1原発に到達する津波の高さは最大15.7メートルになると試算していたことを重視した。
試算の信頼度は「必ずしも高いとはいえない」としつつ、チェルノブイリ事故(旧ソ連)を引き合いに、原発事故被害の甚大さに言及。電力会社の経営陣は「『万が一にも』という津波や災害に備えておく責務があった」と指摘した。
そのうえで高さ15.7メートルという試算結果は「原発にかかわるものとしては絶対に無視できないものというべきだ」とし、3人は「最悪の場合、浸水事故による炉心損傷が起き、放射性物質の大量排出を招く重大事故につながると具体的に予測できた」とした。
こうした判断は、3人を不起訴にした東京地検より格段に厳しい見方といえる。地検は試算の信頼度に疑問を示し、「大津波が現実的だったとはいえない」として予測はできなかったとした。法務・検察幹部は「個人の刑事責任を問うには事故の漠然とした不安があったという程度では足りない」と解説する。
■対策取れば防げたか
もう1つの争点は、東電が防潮堤の強化などの対策を取っていれば、今回の事故が防げたかどうかだ。
検察審は、東電内で15.7メートルの津波の試算が出た際、「安全対策を検討し、その間だけでも福島第1原発の運転を停止していれば今回の事故は回避できた」と指摘。
さらに具体的な対策として、海面から10メートルの敷地上に約10メートルの高さの防潮堤を造ることや、浸水を前提として小型発電機を高台に置いておくことなどを挙げた。
勝俣元会長ら3人について「安全対策よりも経済合理性を優先させ、万が一の災害には目をつぶって効果的な対策を取らなかった」と非難し、「適正な法的評価を下すべきではないか」と起訴すべきだと結論付けた。
東京地検は不起訴の理由として「防潮堤などを造っても今回の津波は防げなかった」などとしていたが、検察審は「説得力が感じられない」と批判した。
■膨大な資料精査 東京地裁は今後、3人を起訴し公判も担当する検察官役の弁護士を指定する。指定弁護士は関係者の取り調べや家宅捜索など補充捜査もできる。
勝俣元会長ら3人は告訴された後、一貫して無罪を主張。強制起訴されても、起訴内容を全面否認するとみられる。
検察審査会法は、指定弁護士は「速やかに起訴しなければならない」と規定している。過去の事例では起訴議決から1カ月程度で強制起訴となることが多いが、政府や国会の事故調査委員会の調査内容、地震や津波に関する学術的な知見など膨大な資料の精査が必要で、通常よりも時間がかかる可能性は高い。
指定弁護士側は、検察が立証を断念した刑事責任の追及ができるのか。法廷での激しい争いが予想される。
識者の見方
真相解明の一助に
田口守一・信州大法科大学院特任教授の話 真相解明に向け、行政的な調査だけでなく、司法制度を通じて明らかになる部分もあるはずだ。起訴する以上は有罪でないといけないという考え方もあるが、今回の原発事故は多くの人が真相を知りたいと思っており、有罪になる可能性が低くても法廷で審理してもいいのではないか。
起訴議決を出した検察審査会の審査員の中には、旧経営陣には過失があると判断した人も、過失の有無は裁判で明らかにすべきだと考えた人もいたと思う。
過失と感情論は別
元検事の高井康行弁護士の話 議決は「万が一にも」の事故も想定すべきだったとしている。ただ、千年に1回とされる今回の地震や津波が予測しなければならない範囲に含まれるのか疑問は残る。原発を運転する電力会社の経営陣に特別に重い注意義務を負わせることが許されるのかという点も議論が必要だ。
国民に「旧経営陣はとんでもない」という気持ちがあるのは理解できるが、刑事事件としての過失は別問題だ。結果の重大性に照らして判断する感情論が入り込んだ部分もあると思う。
[日経新聞8月1日朝刊P.2]
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[きょうのことば]検察審査会 不起訴の妥当性、有権者が審査
▽…検察の不起訴処分が妥当かどうかを国民の視点で審査する組織。有権者からくじで選ばれた11人の審査員で構成する。1948年に起訴・不起訴の判断に民意を反映させる目的で始まり、2009年に強制起訴制度が導入された。全国の地裁などに計165の検察審があり、規模の大きい東京地裁本庁だと第1〜6の検察審がある。審査員の任期は半年。これまでに55万人以上の国民が選ばれている。
▽…審査する会議は非公開。検察から取り寄せた事件記録などを調べる。法律上の問題点について弁護士の助言を求めることができる。審査の結果、さらに詳しく捜査すべきであるという「不起訴不当」、起訴すべきであるという「起訴相当」の議決が出た場合、検察は再捜査する。
▽…起訴相当議決には審査員11人のうち8人以上の賛成が必要。起訴相当議決に対し、検察が再捜査して再度不起訴にした場合、改めて検察審が審査する。その結果、8人以上の賛成で再び起訴をすべきであるという「起訴議決」が出ると裁判所が指定した検察官の役割を担う指定弁護士が強制的に起訴する。補充捜査や公判も担当する。
[日経新聞8月1日朝刊P.3]
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