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日本国民は安倍首相の政治の進め方に疑問を呈している。(ロイター/Toru Hanai)
「集団的自衛権」が、安倍首相の命取りになる 強引に押し進めるほど、国民は引いていく
http://toyokeizai.net/articles/-/77758
2015年07月25日 リチャード・カッツ :本誌特約記者(在ニューヨーク) 東洋経済
安倍晋三首相自身が、集団的自衛権行使を日本に定着させる上での最大の障害になるかもしれない。なぜならば、日本人の多くが、首相の集団的自衛権擁護を彼の超ナショナリスト的見解と切り離すことができないからだ。
この問題は、多くの人が報道の自由への攻撃ととらえていることとも切り離せない。自民党議員が新聞社の広告収入を枯渇させ「懲らしめる」よう要求した一件は自民党の体質を多くの人に想起させた。
■安倍首相を信頼したワシントン
安全保障で日本の役割を拡大することには根強い抵抗がある。それにしても、この件で国民と対話を始めるには、もっとナショナリスト色が弱い首相のほうが国民の信頼を得られたのではないだろうか。
首相は日本国民の感情に注意を払わぬまま、4月に米ワシントンで、これら法案を7月に国会で成立させると約束した。今やそれは不可能になっている。ワシントンは首相の力を非常に信頼していたので、日本の国会が審議する前であるにもかかわらず、武力攻撃事態における日米協力のための新しい共同指針を発表することに合意した。
学者の間では首相の法案が違憲であるというのがほぼ一致した見解であるが、日本国民の意見もこの見解と一致する。
日本国民は首相の政治の進め方に疑問を呈している。彼は国会を9月27日まで延長した。そうすれば参議院で承認を得られなかった場合、衆議院で3分の2の賛成票を得れば法案を強引に通すことができるだろうというもくろみがある。こうした中、首相に近い議員が報道を脅す事態が起き、当初彼はそれを擁護したが、後にその姿勢を変えざるをえなくなった。
■強引さは命取りになる
強引な策略を使って法案を可決すると、合法性が疑わしくなるだろう。今後、特に自衛隊員が死亡するような大きな危険がある場合、実際に集団的自衛権を行使するのは難しくなりかねない。
首相は、この不人気な安全保障法案を通すため、国会議員にごり押しすることに政治生命を懸けようとしている。これにより、経済改革で支持の得られにくい方策を通すために同様の圧力をかけるのが難しくなるだろう。
首相の人気が非常に高かったときは、自民党議員が彼に反対を唱えるのは政治的自殺行為であった。だが、首相の支持率が低下し続けるなら、この陣笠議員たちへの支配力を失うだろう。
(週刊東洋経済2015年7月25日号)
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