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No.3690
2015年7月23日(木)放送[NHK総合:クローズアップ現代]
検証“安保法案” いま何を問うべきか
検証“安保法案” 問われた憲法との関係
衆議院の審議で焦点となった安全保障関連法案と憲法との関係。
民主党 岡田代表
「違憲であるという声が強いわけですね。
私も強い懸念を持っています。
なぜ集団的自衛権の限定行使が必要になったか。」
安倍首相
「まさにどの国も一国のみで自国の安全を守り得る時代ではなくなった。
私たちはこの正当性、合法性については完全に確信を持っている。」
合憲か違憲かの議論は、採決当日まで続きました。
今から69年前に公布された日本国憲法。
第9条で、戦争の放棄、戦力の不保持をうたっています。
憲法上の制約を理由に歴代の内閣は、集団的自衛権は行使できないとしてきました。
中曽根首相(当時)
「集団的自衛権に参加しようということは憲法が許さない。」
小泉首相(当時)
「集団的自衛権について、政府は従来から憲法上許されないと考えてきております。」
その考え方がまとめられたのは1972年、田中内閣のときです。
憲法は、自衛の措置を禁じているわけではない。
その上で、自衛の措置は必要最小限度の範囲にとどまるべきとしています。
そして、自衛の措置が認められるのは、自国が攻撃されたときのみだとして集団的自衛権の行使は憲法上許されないとしたのです。
一方、安倍内閣は安全保障環境が根本的に変容していることを理由に、他国への武力攻撃であっても日本の存立を脅かすことも起こりうるとして集団的自衛権の限定的な行使は合憲だとしたのです。
「違憲」か「合憲」か 法律の専門家は
法律の専門家は国会の議論をどう見ていたのか。
NHKは、日本で最も多くの憲法学者が参加する日本公法学会の会員や元会員で大学などに所属する憲法や行政法などの研究者1,146人に独自にアンケートを送付。
422人から回答を得ました。
回答した研究者の中では377人が、法案は違憲もしくは違憲の疑いがあると答えました。
違憲 青野篤 大分大学准教授(憲法学)
“名目が『自衛』でも、日本が武力攻撃を受けていないにもかかわらず武力行使するのは違憲”
違憲 長岡徹 関西学院大学教授(憲法学)
“政府の解釈変更で憲法の根幹を揺るがすことは、立憲主義にもとづく国家運営を否定するものだ”
また、国会での政府の説明についての意見もありました。
違憲 齊藤芳浩 西南学院大学教授(憲法学)
“政策論と憲法解釈を混同し、政府は自らの憲法解釈を正当化している。どうしても必要ならば、憲法改正を提起すべきだ”
一方、回答した研究者の中では28人が法案は合憲だと答えました。
その多くが安全保障環境の変化を理由に挙げました。
合憲 長尾一紘 中央大学名誉教授(憲法学)
“そもそも政府見解を変えてはいけないというルールはない。日本を取り巻く状況は一変した”
合憲 木原淳 富山大学教授(憲法学)
“自衛に必要かどうかの判断は、国際関係や軍事的な判断が不可欠”
合憲 井上武史 九州大学准教授(憲法学)
“日本国憲法を見ると、集団的自衛権の行使についても明確な禁止規定は存在しない”
集団的自衛権と憲法 分かれる見解
法案が憲法上認められるかどうかを審査する内閣法制局です。
横畠裕介長官は、集団的自衛権の限定的な行使は自国防衛のためであり合憲であると繰り返し答弁しています。
一方、歴代長官の多くからは批判も出ています。
大森政輔さんは、これまで積み重ねられてきた集団的自衛権は行使できないという解釈を尊重すべきだと考えています。
元内閣法制局長官 大森政輔さん
「集団的自衛権を行使できるのかどうかという点は、時々議論にはなりましたけれども、政府は一貫して9条の下では認められない。
憲法解釈をして(集団的自衛権の行使容認を)行うというのは、法的安定性を著しく欠く。」
大森さんの長官在任中も安全保障環境に大きな変化がありました。
中国が台湾近海でミサイルを発射。
また、北朝鮮のミサイルが日本上空を通過する事態が起きたのです。
大森さんは、日本周辺の有事の際の自衛隊によるアメリカ軍への後方支援を定めた周辺事態法の制定に携わりました。
しかし、安全保障環境の変化があったとしても集団的自衛権の行使が可能だという解釈に踏み出せるとは考えていません。
元内閣法制局長官 大森政輔さん
「自国が武力攻撃を受けるということが(武力行使の)要件なんです。
それに対して、集団的自衛権というのは自国は武力攻撃を受けていない。
現下の国際情勢、その他の必要性だけで比較できるのは、そもそも間違っている。」
一方、安全保障環境の変化に応じて憲法を柔軟に解釈すべきだと主張する人もいます。
日本外交史が専門の北岡伸一さん。
安倍総理大臣が設置した有識者懇談会の座長代理として去年(2014年)、集団的自衛権の行使を可能とするよう提言しました。
北岡さんが指摘するのは、憲法の解釈を事実上変えてきた歴史です。
憲法が公布された直後、政府は自衛のための戦争も放棄したとしていました。
しかし、東西冷戦が深まる中、1954年に自衛隊を創設。
自衛のために戦うことは合憲という解釈を打ち出しました。
国際大学学長 北岡伸一さん
「憲法の解釈を変えてはいけないという人が多いのだが、1954年の解釈が変わったことを認めておられないのでしょうか。
集団的自衛権は一部くらいいいんじゃないかということになったのは、54年の解釈の変更に比べれば、はるかに小さな解釈(の変更)だと思います。」
北岡さんは、国民の安全をどう確保すべきかという視点から憲法を捉え直すべきだと考えています。
国際大学学長 北岡伸一さん
「いま世界の情勢を考えれば、自国の意見だけで、自分の軍事力だけで自分を守れる国がどれだけあるでしょうか。
ほとんどないと思いますよ。
安全保障に則した議論にして欲しいと思います。」
安保法案 国民の理解は進んだか
ゲスト田中泰臣記者(政治部)
●政府は世論調査をどのように受け止めているか?
そうですね、危機感を持っていると感じます。
安倍総理大臣は、各種の世論調査で、内閣支持率が低下した原因として、法案への支持が低く、理解が進んでいないことを挙げているんです。
このため安倍総理大臣は、自ら連日、テレビ番組などに出演して、国民に直接、法案の内容や必要性について説明し、理解を得ようと努力しています。
まさに異例の対応を取っていると思います。
●5月から国会での審議を取材してきて、どのように映っているか?
5月下旬から始まった審議を一貫して見てきました。
当初は他国の領域で、集団的自衛権の行使がどこまで認められるか、また自衛隊員のリスクについての論戦が中心だったんです。
その後、法案と憲法の整合性を巡る議論が中心になり、民主党などは憲法違反とか、憲法違反の疑いが強いと指摘しました。
これに対して、政府・与党は、日本を取り巻く安全保障環境が変化したことを理由に、限定的であれば、集団的自衛権の行使は憲法上、認められるなどと反論しました。
法案を巡る多様な論点について議論を深める前に、そもそもこの法案は憲法上、認められるのかという、いわば入り口の議論で、与野党の主張が平行線をたどったまま、特別委員会の採決を迎えた印象を受けました。
●法案が合憲か違憲かという問題 参議院でも議論の焦点にならざるをえないのでは?
そうですね、政府としても、憲法との整合性をなおざりにするわけではなく、法案で可能にする集団的自衛権の行使であれば、ぎりぎり憲法の範囲内だとして、理解を得る努力を続ける考えで、参議院でも引き続き、焦点となりそうです。
ただ一方で政府は、国民の理解を得るためにも、憲法論だけでなく、安全保障政策の観点からの議論も深めたいという考えも持っているんです。
集団的自衛権 平和と安全につながるか
法案に対する国民の理解が進んでいないことを認めた安倍総理大臣。
今、自ら法案の必要性を訴えています。
「国民の皆様にメッセージを。」
安倍首相
「ちゃんと戸締まりしている家には泥棒が入らないのと同じように、備えをしていることによって、事前に戦争を防ぐことができる、それが抑止力なんですね。」
戦後、日本が安全保障の柱としてきた日米同盟。
アメリカは安倍政権の姿勢を歓迎しています。
対日政策に深く関わってきた元国務副長官アーミテージ氏です。
アーミテージ元国務副長官
「私は長年、日本が集団的自衛権を容認しない限り、日米間の協力が難しくなると指摘し続けてきました。
安倍政権は正しい判断をしていると思います。」
集団的自衛権の行使容認は日本の平和と安全につながるのか。
防衛省や自衛隊の元幹部の間でも見解は分かれています。
2006年から3年間、統合幕僚長を務めた齋藤隆さんです。
自衛隊のトップとしてインド洋でのアメリカ軍などへの給油活動の指揮に当たるなどしました。
齋藤さんは、日本がより積極的にアメリカなどとの連携を強め抑止力を高めるべきだと指摘します。
元統合幕僚長 齋藤隆さん
「たこつぼ掘って中に入って弾が飛び去るのを待ってるという、それじゃあ対応できないんじゃないかなと。
厳しい荒波のなかで日本が生き残っていくためには、脱皮をしないとなかなか難しいんじゃないかなと。」
さらに齋藤さんは法案が成立すれば、自衛隊がアメリカ軍などとより実践的な訓練ができるようになると言います。
アメリカ軍が主催する世界最大級の多国間軍事演習・リムパック。
2年に1度開かれ、去年は22か国が参加しました。
しかし、日本は集団的自衛権の行使を前提とした一部の訓練には参加してきませんでした。
元統合幕僚長 齋藤隆さん
「集団的自衛権が行使できる“限定的”になるにせよ、できることによって多国間での共同訓練がやれるようになっていくわけですね。
まさに(アメリカなどと)スクラムを組んで、いろんな外交的シグナルになっていく。
それが冒険主義的なところをある程度抑えられる。」
一方、集団的自衛権の行使容認は、日本の安全につながらないと指摘する人もいます。
元防衛官僚の柳澤協二さんです。
自衛隊のイラク派遣で中心的な役割を担った柳澤さん。
集団的自衛権の行使を容認すれば、アメリカからこれまで以上の貢献を求められ断れなくなるのではないかと危惧しています。
元内閣官房副長官補 裄V協二さん
「(集団的自衛権の行使を)法律的にもできるようにしてしまうというのは、断れなくなるという意味もあるので、言葉遣いは何ですけれど、もっと従属を深める道にもなり得るわけですよね。」
さらに、今回の法案では、どのような場合に集団的自衛権を行使するのか政府に委ねられる裁量が大きすぎると指摘します。
元内閣官房副長官補 裄V協二さん
「“国の存立が脅かされる”という要件の曖昧さなんですよ。
そこは政府が判断するしかないわけなのでね。
その政府の判断によっては、どんなことでもやるようになるのではないか。
そういう疑問があるわけですね。
それが結局、今までの国会での議論を通じて、まったく払拭されていない。」
集団的自衛権 平和と安全につながるか
●集団的自衛権行使にあたっての3要件 厳しい歯止めをかけたとする一方で、どういう場合に行使するかについては抽象的な答弁が多く、あいまいな説明になっていないか?
政府はこの要件に当てはまる事例として、中東のホルムズ海峡での機雷の掃海活動などを挙げて、説明はしているんです。
ただ、安倍総理大臣は、安全保障上の対応は、事細かに事前に設定するのは、避けたほうがよいとも述べているんです。
これは、安全保障に関わる問題では、具体的な想定など、自らの手の内をさらすべきではないという考えなんです。
これに対して、民主党などは、結局基準があいまいになり、政府の裁量に委ねる幅が大きくなるなどと批判しているんです。
●集団的自衛権のほかに自衛隊の活動拡大についての議論を深めることも大事では?
今回の法案は、非常に多岐にわたるものなんですが、憲法解釈を変更して、実施できるようにするのは、集団的自衛権の行使だけなんです。
このため、どうしてもこのテーマに論戦が偏りがちになっているんです。
ただ、法案には、国際貢献のための後方支援を恒久法として整備するものや、PKO活動の際に、自衛隊が武器を使って他国の部隊などを救援する、いわゆる駆けつけ警護を可能にするものなども含まれているんです。
その一つ一つが大きな法改正なんですが、それらについては、議論が尽くされていないと感じます。
参議院での審議は、憲法論議と並んで、こうした分野の議論を深めることも重要だと感じます。
●NHK世論調査では今国会での成立に反対が多くなっているが、なぜ成立を急ぐのか?
第1次安倍内閣のときから、長年、取り組んできた課題であり、今、政権基盤が比較的安定しているうちに、自らの手で成し遂げたいという思いもあるものと見られます。
また、国民の間で議論が分かれる問題なだけに来年(2016年)夏に控える参議院選挙から、なるべく離れた時期に決着させたいというねらいもあるのではないでしょうか。
●この審議に注がれる国民の目はより厳しくなっていると思うが、与野党はどのように臨むのか?
与党内でも、国民の理解が進んでいないという危機感は強く、参議院では、与党の質問時間をより多く確保して、政府側に法案の必要性などをわかりやすく説明してもらう方針なんです。
一方、民主党などは法案の問題点を指摘し、それを国民に伝えて、国民世論対安倍総理大臣という構図を作りたいとしています。
安全保障の問題は、実感は湧きにくいと思うんですが、国の根幹に関わり、国民の命や暮らしに直結するテーマだと思います。
日本の安全保障にとって必要なのかどうか、憲法上、認められるのかどうか、そして審議が尽くされているのかどうか、しっかり私たちは見ていく必要があると思います。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3690_1.html
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