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澤藤統一郎の憲法日記
戦争法阻止運動に新たな広がりの可能性ー自分の言葉、自分のスタイルのさわやかさ
http://article9.jp/wordpress/?p=5286
市民運動、社会運動、大衆運動、民衆運動、政治運動…。なんと名付けてもよいが、被治者である市民・国民・住民・消費者が共通の要求を実現しようとする運動(仮に「市民運動」と言っておこう)は、純粋に参加者の自発性に支えられている。その運動体に内部統制の強制力はなく、上命下服の指揮関係を持たない。
市民運動の全体力量は、「参加者の数×各参加者の意欲」と定式化できるだろう。運動の参加人員を大きくするためにも、参加者一人ひとりの行動意欲を引き出すためにも、一人ひとりを尊重する運動スタイルでなければならない。運動参加者が、自分の言葉で語り、自分のスタイルで活動できる多様性を尊重することこそが運動を大きく広げることのカギではないか。
いま、戦争法案反対の国民運動に、若者と女性を中心に運動の新しいあり方が話題になっている。さわやか、かっこういい、自分の言葉で語り、自分のスタイルを大切にする。そのような評価であり期待でもある。
私は、7月5日下記のブログで若者の運動にエールを送った。しかし、その程度。
「7月3日雨の金曜日 澁谷に集まった若者たちに寄せて」
http://article9.jp/wordpress/?p=5164
ところが、同期の友人郷路征記弁護士が若者の行動にいたく感激したとメールを送ってきた。以下、その抜粋である。
SEALD’sのスピーチとコールがメチャカッコいいと思っています。こんなカッコのいい若い女性の口から、「アベハ ヤメロ」、「コクミン ナメンナ」、「センソウシタガル ソウリハ イラナイ」等という激し い言葉が飛び出してくると、私の理性は霧消してしまって、聞き惚れてしまいます。新聞やテレビでは知りえないことです。インターネットの持つ訴求力は、大変なものなのかもしれません。
日曜日、コンピューターの前に座って、ずっとSEALDsの動画、ツイッター等を追いかけてきました。そして、強く心を揺さぶられました。奥田愛基君は「30万人を集めましょう」と言っていましたが、可能性があるかもしれません、彼らなら。
ネットにアップされている彼らのスピーチは、素晴らしいと思いました。
まだ、見ていない方は、ぜひ、クリックして、彼らの訴えに耳を傾けてください。
SEALDS関西の女性のスピーチも、非常に感動的です。まるで、憲法9条が乗り移ったかのような。安倍を断罪する言葉の強さ、鋭さ。その訴える力。激しい言葉を並べるのではなく、大きな声を張り上げるのでもないのですが。言葉が、借り物ではない彼女の信念に裏打ちされているからでしょうし、事態の本質をとても明解に指摘する能力に優れているからでしょうね。前日の日比谷の野音の集会に出たお爺さん、お婆さんをあげて、この人たちが闘い続けてきてくれたから、いまの平和があるというところでは、思わず、うると来ましたね。
スピーチをしている人は、みんな、自分で考えたことを、皆に訴えようと誠実に展開している。押し付けている感じはまったくない。悲壮感などの余分な感情もない。驚くほど、しっかりしている。こんな素晴らしい若者たちがいるなんて、本当に希望を持てます。コールは本当に素晴らしい。ノリがよくて、リズムがあって。
そして郷路君は、同期有志の弁護士が作っているメーリングリストに「希望を拡げたい」というタイトルで次の記事を寄せた。
「前略、突然のメールをお許し下さい。ぜび、お知らせしたいことがあり、ご迷惑をかえりみず、メールをさせていただきました。
7月17日、ユーチューブを徘徊していて、戦争法制に反対する動画が目について、ついクリックしたのですが、すぐ引き込まれてしまいまし た。スピーチをしている女性がとてもカッコ良かったのです。
スピーチの内容は勿論素晴らしかったのですが、その後のコールが一段と素晴らしかった。正直言って、驚きました。その映像は次のリンクをクリックすることで見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=I5nowbc1Jqs&list=PL0r_ha6smF6TY6DQ4cO_QgXIAvJ62CbSl&index=4
その驚きをメーリングリストに投稿したら、別のスピーチを紹介してもらいました。
https://www.youtube.com/watch?v=BzSwC8wSNNA
7月18日からの3連休は、関連するスピーチを見続けました。それらは、以下に大体纏められています。
https://www.youtube.com/watch?v=I5nowbc1Jqs&list=PL90_FDu3Dz6MIauQ6vjUg-igiQ0bl7RIh
結論として、私は、この国の若い世代に、強い希望を抱くことができたのでした。
ツイッターやフェイスブックで、彼らが所属する「SEALD-s」に関する情報を集めました。
SEALD-sとは「(Students Emergency Action for Liberal Democracy ? s・自由と民主主義のための学生緊急行動」の略です。彼らの考え方については以下のウエブを参照してください。
http://www.sealds.com/
彼らは、戦争法制に関しては6分間の動画で要領よく批判していますし、動画の最後では、我々に対する呼びかけをしています。
https://www.youtube.com/watch?v=6LuZDH0GHOE
その呼びかけに触発されて、みなさまに「SEALD-s」のスピーチをぜひ聞いていただきたいと私は思い、このメールを差し上げようと決意をしたのです。
それは、私が抱いた希望を拡げることなのだと・・・。
可能であれば、ぜひ、動画を見てその印象を記載したメールを関係する方々に広く送付して頂きたいと思います。このメールの転送でもかまいません。多くの広い層の方々に、希望を拡げることが、岐路に立っている日本の民主主義にとって、立憲主義にとって、平和主義にとって、今、最も大切なことだと思うからです。」
これに対して、仲間ゆえの遠慮なさから、忌憚のない突っ込みの反応が直ぐにあった。このあたりがメーリングリストの面白いところ。
「そんなに若者に変に感動してないで、北海学園事件のときのように貴兄自らが街頭デモやスピーチの先頭に立たなきゃダメだよ。今は傍観者(失礼)的感動の時に非ず。平和国家『存立危機事態』故、戦争法案阻止、安倍内閣打倒に向けて今日明日明後日と大衆行動あるのみ。」
これに対する郷路君の返答が、また素晴らしい。
「僕にとっては、これが戦争法案阻止、安倍内閣打倒にむけての行動なので、頑張ります。昔から、他人と同じ行動は取れないタイプだったので、ゴメンね」
彼は所属する札幌弁護士会の会員全員(メールアドレスの分かる人) に、同文をメール送信したという。
「530通ですね。1通、1通手作業だったので、よく使う指の部分が痛くなりました。」
そして、「嬉しい反応が返ってきています。」と、今度は返事を送信してくれている。
これはすごいことだ。
おそらく彼は、どうすれば保守派も反動派も含めた多くの弁護士の耳に、戦争法反対・安倍政権打倒の訴えを届けることができるだろうかと思い続けていたに違いない。そして、若者たちの訴えを届けようと考えたのだ。
一昔前。街頭に立った若者は、「われわれわぁ、せいけんをぉ、だんことしてぇ、ふんさいするぅ」と、独特の抑揚でアジ演説をした。アメ帝と日本独占資本が敵で、たいていの問題は、その敵とその手先を糾弾することでこと足りた。それも真実かも知れないが、独特のスピーチスタイルであり、仲間内以外には通じない言葉を使って平気だった。今の若者は、もっと多様。自分の言葉で語る人が多くなっている。しかも、シールズの動画を見る限りだが、その語る内容は誰にも了解可能なうえ的確で訴える力をもっている。
札幌弁護士会に所属する全弁護士に若者の声を伝えた郷路君も「自分の言葉、自分のスタイル」にこだわった自分流の運動参加なのだ。戦争法案反対のこの運動、まだまだ拡がりそうではないか。
(2015年7月24日)
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