106. 2015年7月27日 01:05:34
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東シナ海ガス田にプラットホーム建設 「中国の蛮行」なぜ報じないのか 2015年7月安倍晋三首相が展開する地球儀外交の最大の眼目は何か。深まる中国の危機に直面して、如何にして日本国民と国土、領海を守り通すか、日本人の価値観や歴史との向き合い方などを無理矢理歪曲させられることのないように、如何にして日本の主張を世界に発信し続けるかということであろう。 中国との交渉には細心の注意が必要である。彼らは何を語り、他方、何をしているのか。大小の嘘を巧みに使う一筋縄ではいかない中国の、国家としての「言と動」の両方を見て、彼らの真の意図を把握し、対処することを忘れてはならない。 東シナ海ガス田に新施設 日本国政府に、そのような注意深い外交が展開できているか。疑わざるを得ない事態が発生していた。 日本人の目が東シナ海尖閣諸島に、国際社会の目が南シナ海にそれぞれ釘付けになっている隙を突かれたというべきだろうか。中国が東シナ海の日中中間線のごく近くでガス田を開発し、プラットホームの建設を急拡大していることが判明した。 東シナ海の日中中間線に極めて近い海域でのガス田開発は、日中間のせめぎ合いの中で中国が強引に進めてきたが、ここへきて昨年(2014年)から今年(2015年)6月までの1年間に中国の施設は12カ所に急増し、他に4つの施設が建設中なのである。 詳細を見ると、中間線に近い場所に「黄岩14の1」が建設され、「平胡」南東方向に「黄岩1の1」、その真東に「黄岩2の2」、平胡西南に「紹興36の5」、八角亭北東に「団結亭」と「宝雲亭」のプラットホームが堂々、建設されている。完成した複数の施設には、各々作業員の宿舎と見られる3階建ての建物や精製工場、掘削装置はもちろん、ヘリポートまである。 資源の盗掘は無論、問題である。だが、複数のプラットホームが軍事利用されれば、わが国にとってそれは取り返しのつかない深刻な問題となる。プラットホームは新たな対日前線基地となって、わが国の安全保障環境を脅かすだろう。 私は確かな証拠を入手し、2015年7月6日付の産経新聞「美しき勁き国へ」欄で、一連のガス田開発とプラットホーム建設の状況を報じた。 菅義偉官房長官は同日午後の記者会見で、中国の海洋プラットホーム建設について「政府として(建設の)実態を把握している」「中国が平成25年6月以降、日中中間線の中国側海域に、掘削のための新たな海洋プラットホームを建設している」「一方的な開発を進めていることに対し、中国側に繰り返し抗議すると同時に、作業の中止を求めている」と述べた。 その数や建設状況の詳細については「政府の活動状況や情報収集、外交交渉に支障を来す」として言明を避けたが、施設の建設そのものは否定せず、私の報じた内容を追認した。 2015.7.6 11:00 【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】 中国、東シナ海ガス田開発を急加速 机上の空論続ける政治家は猛省せよ http://www.sankei.com/premium/news/150706/prm1507060007-n1.html 2015.7.7 12:39 政府、中国のガス田開発に抗議 東シナ海に新拠点建設 http://www.sankei.com/politics/news/150707/plt1507070011-n1.html 防衛白書を書き直し 一方、中国外務省の華春瑩副報道局長は翌2015年7月7日の会見で、日本の抗議について「中国の管轄海域での活動で、日本の要求は受け入れられない」と語った。同発言もまた、中間線付近での開発を事実上、認めたものだ。 菅官房長官の発言で判明したように、政府は以前からこの情報を掴んでいた。私の取材では、情報を共有していたのは外務省、防衛省、経済産業省の3省と海上保安庁、それに官邸および国家安全保障会議(日本版NSC)だ。 しかし、情報は各組織の限られた人々が共有するだけで、機密情報として秘匿され、外部への公表は厳しく禁じられてきたと思われる。 結果として、2015年版の防衛白書でも、東シナ海ガス田の中国による侵略的開発には全く言及されていなかった。2015年7月7日の自民党国防部会はこれを不満として、白書の了承を見送った。すでに5000部を印刷済みだった防衛白書を了承せず、書き直させるのは極めて異例だ。事はそれだけ深刻だということだ。 政府は日本の眼前で進んでいたほとんど侵略に近い開発行為に対して、なぜ沈黙を守ったのか。 国会の安保法制の議論では、野党が非現実的な観念論を展開し、現実の危機とは異次元の世界のような審議が行われていた。中国の脅威が東シナ海のわが国の領海に迫っているというのに、野党からは「なぜ今なのか」「拙速だ」「どこに脅威があるのか」などと、まるで日本周辺の実態を認識していない声が上がり続けた。 現在進行形の”現実的脅威”を見ようとしない政治家たちに、政府はこの事実を突き付けるべきではなかったか。 悪しき日本外交の宿痾 「日本にとって重要な海洋天然資源を吸い上げるだけでなく、中国は軍事転用可能な施設を東シナ海で急拡大中だ。南シナ海で起こることは東シナ海でも起こる。中国の膨張思想、国際法や外交を無視した横暴、力による現状変更の意図を抑止するためにも、この安保法制が必要だ」 そう国民に訴えれば、国民の多くも眼前の具体的危機を認識し、安保法制の重要性をよりよく理解できるのではないか。公表して得られる国益は、非公表によって得られるそれよりも遥かに大きいと思う。 一連の取材から、「公表せず」の判断を下したのは、おそらく国家安全保障会議(日本版NSC)が主導と思われる。NSC事務局初代局長は、外務省出身の谷内正太郎氏である。つまり今回の判断自体、実質的には外務省が主導した可能性が高い。 ちなみに谷内正太郎氏は、首相の靖国参拝に関していわゆる曖昧路線を唱えたことで知られる。参拝するともしないとも明らかにせず、政治問題化されるのを防ごうという戦術である。 私は、外交には戦術も大いに必要であることは十分認めるものだ。しかしこれでは、中国の反発を避けるために、国家の根幹をなす靖国参拝について永久にこちらが妥協し続けなければならず、真の解決には繋がらないと思う。戦術も大事だが、より大きな戦略としての信念が欠かせないことを強調したい。 靖国参拝問題と同様に、今回も眼前の摩擦を避ける小手先の術を使ったわけだが、中国が現在も開発を続けていることに見られるように、中国による好き放題のやり放題を日本は抑止できていない。地球儀を俯瞰し、力による現状変更に反対する安倍首相の外交と外務省主導の外交は、果たして同一歩調を維持しているのか。 外務省が主導した拉致問題は完全な失敗であり、今のところ進展はない。世界遺産登録問題でも、完全に韓国に敗北したのではないか。対中路線についても同様で、今後の展望についての懸念は拭いきれない。 東シナ海ガス田問題への対応もまた、悪しき日本外交の宿痾が凝縮され、失敗の連続ではないか。 中国政府は少なくとも、1996年には日中中間線の日本側排他的経済水域(EEZ)に侵入し海洋調査を実施し始めた。国際海洋法で、他国による調査は禁じられている海域だ。だが彼らは「東シナ海のほぼ全海域、沖縄トラフまでが中国の海である」との主張を展開し、日本の抗議を受け入れずに調査を続行した。 日中間で海の境界線をどこに引くかの議論継続中にも、中国側は開発を進め、ガス田「白樺」(中国名「春暁」)のガス田にプラットホームを建設してしまった。 また、1998年までには「平胡」ガス田等にプラットホームを建設し、1999年頃からは、早くも同ガス田での天然ガスの生産を開始した。海洋調査の回数も増していた。 中国の勝手な言い分 一連の開発は、日本としては到底受け入れられない。2000年に行われた日中外相会談で、当時、外務大臣だった河野洋平氏は、度重なる中国の行動に「事前の通告もなく調査をするのは問題だ」と抗議した。 ところが、この言葉を中国側は逆手に取った。「悪意はなかった。事前連絡の枠組みを作りたい」と言い出したのだ。すると驚くことに河野氏も、氏を支える外務省もこれを受け入れたのである。結果として、「2カ月前の事前通告があれば調査を許可する」という愚かな妥協をしてしまった。このような馬鹿なことは、まともな主権国家ではあり得ない。 河野談話を考えた氏であればこそ、このように日本の国益に反する合意をしてしまったのではないかと極めて残念に思うものだ。 その後、何も行動しない日本を尻目に、中国は東シナ海で着々と開発を進めた。2005年には日本の抗議をよそに、日中中間線から2`と離れていない白樺(春暁)でのガス採掘施設建設に本格的に着手した。 この間、日本政府は中国に、東シナ海を係争の海ではなく、協調の海にするために共同開発をしようと提案した。中国側は以下の理屈を展開した。 日本が領有権を主張するのは日中中間線までである。中国が主張するのは日本列島のすぐ近くの沖縄海溝までである。したがって日中中間線以西、つまり日中中間線から中国側の海は中国が単独で開発する。日中中間線から日本側の海でのみ、共同開発に応じてもよいー。 中川昭一大臣の英断 中川昭一氏は私の取材に対し、「中国の主張は俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの。とても受け入れられない」と憤慨してみせた。 2003年、中川昭一氏は小泉内閣で経産大臣に就任したが、中川昭一氏の怒りは中国にだけ向けられていたのではなく、日本外交全般に対する怒りだったのではないか。なぜなら、中国とは対照的に日本政府は東シナ海の海底調査も遠慮して行っていなかったからである。 2005年、中川昭一大臣の決断でようやく海底調査を行うことになったが、海洋大国日本でありながら、日本は調査船も保有していなかった。中川昭一氏はまたもや驚き、憤慨し、数億円を払ってノルウェーから船を借りて、ようやく調査を実施した。 すると、中国がすでに建設を進めていた「春暁」などの採掘施設が、実際には海底で日本側のガス田と繋がっていたことを突き止めた。これでは、日中中間線の中国側からガスを採ってもストローでコップの水を飲むのと同じ原理で、日本側の資源も吸い上げられる。 中川昭一氏は、日本の権利を主張するためにも一連のガス田に日本名をつけた。それが樫(中国名・天外天)、白樺(春暁)、楠(断橋)などである。 中川昭一氏のもう1つの英断は、帝国石油に試掘権を与えたことだ。だが、日本企業に試掘権を与える件については、外務省はじめ親中派と呼ばれる政治家の間に根強い反対論があった。実は、帝国石油(当時)など民間企業は1960年代から同海域の調査をし、試掘権を認めるよう政府に求めていた。政府はこれを却下し続けていたのだ。 この時の試掘権認可の過程で、外務省は「日中関係の混乱要因がまたひとつ加わる」などと言って懸念を表明していた(2005年4月13日付朝日新聞)。中川昭一氏はその種の反対論を「譲れば押し込まれる」と退けて、試掘権を与えたのである。 一方で、首相の小泉氏は中川昭一氏の怒りを共有してはいなかった。改造内閣で中川昭一氏を農水大臣に異動させ、中川昭一氏の後継に”親中派”として名高い二階俊博氏を据えたのである。二階俊博氏は「試掘という道はとらない」と言明し、ガス田開発は沙汰止みとなった。 では、中国のほうはどうしたか。 この間もガス田開発の手を緩めはしなかった。1998年までに4カ所のガス田を開発し、プラットホームと採掘装置を建て続けた。昨年(2014年)6月までに、施設は6カ所に増え、さらにこの1年で12カ所にまで倍増、建設途中のものがさらに4カ所ある。 当然のことながら、これらの施設は軍事転用が懸念される。施設は日中中間線に近く、北緯29度東経125度の交点を中心にした半径60`の円内に集中している。プラットホームをヘリパッドとして活用し、空中偵察のためのヘリコプターや無人機の展開拠点とすることも可能だ。 中心部にレーダー等を設置すれば500`圏内の通信波を拾い、沖縄、南西諸島全域の自衛隊や米軍の動きを捕捉できる。 2015年7月10日、衆議院の平和安全保障法制に関する特別委員会で、民主党の長島昭久氏が2015年7月6日の「産経新聞」報道をもとに質疑を行ったが、中谷元防衛大臣は中国の情報収集能力に関して次のように答えた。 「中国が設定した東シナ海防空識別区には地上レーダーの覆域、範囲が届かない区域があり、早期警戒機等による補完にも一定の制約がある」 中国側は、防空識別圏をわが国の尖閣諸島とガス田を含む上空に設定したものの、現状ではその空域全体をカバーする能力はないと言っているのである。しかしガス田を活用すれば、現状よりも飛躍的に情報収集能力は高まる。 アメリカも強く警戒 中国は、狙ったものを手に入れるためには手段を選ばない。国際法違反との非難を受けようと、力づくの現状変更を実行してくる。2015年6月30日に埋め立てが「完了」した南シナ海がいい例だ。人工島を起点に新たな領土、領海を臆面もなく主張し始めるのは眼に見えている。 もとより東シナ海は、中国が「沖縄トラフまでが自国領だ」と主張する海域である。南シナ海同様、、東シナ海もガス田のプラットホームを拠点に権益拡大の違法行動を推し進めるだろう。この中国の蛮行を、広く国民へ知らせることが大事だ。 中国のこのような侵略的進出は、オバマ米大統領の消極的な姿勢を見て取ってのことだろう。「世界の警察ではない」と宣言した超大国を尻目に、中国は帝国主義的本心を隠そうとせず、アメリカは中国の振る舞いを強く警戒している。 2015年7月1日、米統合参謀本部は「国家軍事戦略」を公表した。2011年以来、4年ぶりの改定だが、ここではロシア、イラン、北朝鮮の3カ国に加え、中国を含む4カ国を「潜在的敵性国家」と捉えて、「国際条約や国際法を覆すリビジョニスト国家」と名指しした。 アメリカが中国を敵性国家と位置付けたのは初めてではないか。極めて厳しい現状認識と言える。 また、ハリー・ハリス太平洋軍司令官は、先に南シナ海を埋め立てと7つの人工島の建造を「砂の万里の長城」と喝破。2015年7月9日には、米軍の制服組トップの統合参謀本部議長に指名された海兵隊のダンフォード総司令官が会見、「最大の脅威はロシア。2番目が中国、3番目がイスラム国と北朝鮮」と断じた。 これまでに米国防総省、国務省ともに中国の人工島の領有権を認めないと言明し、米艦船と航空機を南シナ海の中国が造った人工島の12海里内に送り込むべきだとの考えを複数回、示している。 戦後日本、最大の危機 だが、オバマ大統領は対中姿勢を鮮明にしない。2013年6月にはカリフォルニアで8時間にもわたるオバマ・習近平会談を行い、蜜月ぶりを内外に示した。 2014年11月に国賓として中国を訪れたオバマ大統領を、習近平国家主席は丁重にもてなし、両首脳は都合10時間、会談したと報じられた。 さらに今年(2015年)6月には、ワシントンで米中戦略・経済対話が行われた。主要演説に目を通して感ずるのは、今年(2015年)の米中対話こそ、「アメリカの凋落・中国の台頭」を象徴しているのではないかということだ。 中国が提案する「新型大国関係」は、チベット、ウイグル、台湾に加え南シナ海とわが国の尖閣諸島、つまり東シナ海を絶対に譲れない中国の核心的利益とするものだ。その新型大国関係の確立および受容を中国に迫られ、拒否できないアメリカの姿勢が日本のみならずアジア全体の安全保障環境を危うくしている。 中国の提案は、平たく言えば「太平洋分割統治論」である。太平洋を二分し、中国とアメリカで管理する考えだ。現在の”押し込まれる米国”と”押し込む中国”を見れば、この中国の誇大妄想が実現しないとも限らない。 その時には南シナ海はもちろん、東シナ海も中国の内海の如く、中国船がわが物顔で航行することにもなろう。日本にとって戦後最大の危機である。 東シナ海で異変が生ずる時、中国と相対するのはアメリカでなく、日本である。日本こそ当事者である。その現状認識が政治家に共有されていない。国会での野党の主張からはこの危機感、切迫感はおろか、当事者意識さえも感じられない。政治家、とりわけ野党政治家は猛省すべきだろう。 安倍首相も国会の議論では、「脅威」の本体である中国を名指しすることを徹底して避けている。安保関連法案が閣議決定された2015年5月14日、安倍首相は記者会見を開き、北朝鮮の名は口にしたものの、中国に関しては言明を避けた。 <わが国に近づいてくる国籍不明の航空機に対するスクランブルの回数は、10年前と比べて実に7倍に増えています>と語ったが、防衛省発表の資料によれば、急増しているのは中国の戦闘機に対する緊急発進である。 また、安倍首相は日本近海の警戒監視にも触れたが、対象となっているのは明らかに中国公船や漁船が中心である。 取材では、安倍首相は中国軍艦によるレーダー照射や中国船による領海侵犯、接続水域への入域などを例として挙げた。国会や記者会見の場では明言していない。なぜか。むしろ、批判すべき点は率直に批判するのがよいのである。 中国の「足場固め」 多くの国民は中国の示威行動が今に始まったことではないとすでに承知している。中国が尖閣のみならず、沖縄本島までも「中国領だ」とする主張を論文などで展開していることも、少なからぬ日本人は知っているはずだ。 2013年には長崎・五島列島に100隻あまりの中国船が押し寄せ1週間も居座る威圧行動を取った。2014年秋には小笠原諸島に現れた最大200隻あまりで構成される漁船の一団が、赤珊瑚を根こそぎ奪う暴挙に出た。これがわが国にとって脅威でなくて何なのか。 脅威を振り撒きつつ中国は着々と自らの足場を固めてきた。米国が「国家軍事戦略」を公表したのと同じ2015年7月1日、彼らは全人代で「国家安全法」を採択し即日施行したが、その内容は恐るべきものだ。国家の安全のため領海と海洋権益を防御し、テロや暴動、治安維持対策に注力する。 その上で国家主権と領土保全の維持は「香港、マカオ、台湾の住民を含む中国人民の共同義務」であると規定し、台湾人までがまるで中国国民であるかのように一方的に法を定めてしまったのである。台湾人には到底、受け入れられないだろう。 香港や台湾で民主化活動などを行った人物や中国共産党批判を行った言論人などが中国に入国した場合、逮捕される懸念があるということだ。実に身勝手な中華帝国主義を強めているのである。 このような中国の実態をいち早く見てとり、政治家は脅威を実感して日本の安全保障体制を確実にするべきなのだ。だが、脅威を十分には感じとっていないのは政治家だけではない。メディアも同罪であろう。 詳細は控えざるを得ないが、今回、私が公表したガス田開発に関する情報を、複数のメディアが掴んでいたと思われる節がある。にもかかわらず1社も報道しなかったのは、一体どうしたわけか。 「報じない自由」のメディア 2015年7月6日の第一報以降、ガス田開発を報じたのは産経と読売だ。NHK、毎日、琉球新報、時事通信などは菅官房長官の会見内容を伝える形で、「新しいガス田開発」のニュースを報じた。だが朝日新聞や東京新聞、ほとんどの地方紙はこのことを報じなかった。 2015年7月7日、自民党国防部会が「ガス田の記述がない」として防衛白書の了承を見送ると、ようやく朝日新聞や東京新聞はベタ記事で報じたが、「ガス田に新たに施設が建設されている」という事実については一切書いていない。 これでは朝日新聞だけを購読している読者は、「なぜここへきて、防衛白書にガス田の問題が入っていないとクレームがつくのか」の理由が、今も分からないままだ。 資金も潤沢で自前の報道ヘリを持つ新聞各社はすぐにでもヘリを飛ばし、現地の取材に当たるべきではないのか。ましてや、菅官房長官の会見でも触れられた重大事を「報じない」という姿勢は非難されて然るべきだろう。 最大限、新聞社を擁護すれば「情報を出さないことによって守れる国益」を取ったのかもしれない。だが、特定秘密保護法に声高に反対し、情報開示や透明性を大声で叫んでいた朝日新聞が、読者である国民に対して「出すべき情報」を報じないのは実に理解に苦しむ。 中国に不利益な報道をすることで支局の閉鎖や記者のビザが下りないなどの嫌がらせを怖れたのかもしれないが、それで萎縮するようでは朝日新聞は人民日報に成り下がる。 今回の安保法制の議論でもメディア、特に朝日新聞は「戦争への道」「戦争法案」「地球の裏側まで派遣」「徴兵制への懸念」などという劣悪なレッテル貼りと、印象操作を行い、国民世論を反安保法制へと扇動した。 政府は断固たる姿勢を レッテルは、劣悪で過激であるほど広まりやすい。純粋な若者たちが「戦争に行きたくない」「自衛隊に人を殺させないで」と叫ぶデモや集会が開かれているのは、彼らに正しい情報が届いていないことを証明している。 朝日新聞は、自らの報道姿勢を省みるべきだろう。彼らは戦後、こと国防や安全保障に関わる問題では「すべて間違えてきた」のである。戦後の単独講和然り、岸内閣の安保改定然り、PKO派遣然り。1つとして、朝日新聞の主張が正しかったことはない。慰安婦問題にも言えることだが、なぜ彼らは反省しないのか。 一度や二度の間違いではなく、性懲りもなく同じことを繰り返し、国民を亡国の道へ誘わんとする報道姿勢は実に罪深い。国民への背信行為と言っても過言ではない。 一方で、繰り返し、政府に要請したい。朝日新聞などに扇動され、目の前の脅威を覆い隠されている国民の、植え付けられた思い込みを打ち破るためにも、中国の蛮行の実態を積極的に公表すべきだ。民主主義国家の基本は、正しい情報をより多くの人と共有することだ。仮に短期的には都合が悪い情報であったとしても、できる限りの情報公開こそが、長期的には必ず国益に資する道となる。 安保法制という戦後日本の重大事を審議し、国民の理解を得なければならない今、そのことを特に強調したい。 外務省 中国による東シナ海での一方的資源開発の現状 平成27年7月22日 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/higashi_shina/tachiba.html
1 近年,中国は,東シナ海において資源開発を活発化させており,政府として,日中の地理的中間線の中国側で,これまでに計16基の構造物を確認している。 2 東シナ海の排他的経済水域及び大陸棚は境界が未画定であり,日本は日中中間線を基にした境界画定を行うべきであるとの立場である。このように,未だ境界が画定していない状況において,日中中間線の中国側においてとは言え,中国側が一方的な開発行為を進めていることは極めて遺憾である。政府としては,中国側に対して,一方的な開発行為を中止するとともに,東シナ海の資源開発に関する日中間の協力について一致した「2008年6月合意」の実施に関する交渉再開に早期に応じるよう,改めて強く求めているところである。 中国による一方的な資源開発の状況 写真(PDF) http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000091720.pdf / photos(PDF) / 照片(中文)(PDF) 地図(PDF) http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000091723.pdf / map(PDF) / 地图(中文)(PDF) (参考)東シナ海における資源開発に関する我が国の法的立場 1 日中双方は、国連海洋法条約の関連規定に基づき、領海基線から200海里までの排他的経済水域及び大陸棚の権原を有している。東シナ海をはさんで向かい合っている日中それぞれの領海基線の間の距離は400海里未満であるので、双方の200海里までの排他的経済水域及び大陸棚が重なり合う部分について、日中間の合意により境界を画定する必要がある。国連海洋法条約の関連規定及び国際判例に照らせば、このような水域において境界を画定するに当たっては、中間線を基に境界を画定することが衡平な解決となるとされている。 (注:1海里=1.852キロメートル、200海里=370.4キロメートル) 2 (1)これに対し、中国側は、東シナ海における境界画定について、大陸棚の自然延長、大陸と島の対比などの東シナ海の特性を踏まえて行うべきであるとしており、中間線による境界画定は認められないとした上で、中国側が想定する具体的な境界線を示すことなく、大陸棚について沖縄トラフまで自然延長している旨主張している。 (2)他方、自然延長論は、1960年代に、隣り合う国の大陸棚の境界画定に関する判例で用いられる等、過去の国際法においてとられていた考え方である。1982年に採択された国連海洋法条約の関連規定とその後の国際判例に基づけば、向かい合う国同士の間の距離が400海里未満の水域において境界を画定するに当たっては、自然延長論が認められる余地はなく、また、沖縄トラフ(海底の溝)のような海底地形に法的な意味はない。したがって、大陸棚を沖縄トラフまで主張できるとの考えは、現在の国際法に照らせば根拠に欠ける。 3 このような前提に立ってこれまで、我が国は、境界が未画定の海域では少なくとも中間線から日本側の水域において我が国が主権的権利及び管轄権を行使できることは当然との立場をとってきた。これは中間線以遠の権原を放棄したということでは全くなく、あくまでも境界が画定されるまでの間はとりあえず中間線までの水域で主権的権利及び管轄権を行使するということである。したがって、東シナ海における日中間の境界画定がなされておらず、かつ、中国側が我が国の中間線にかかる主張を一切認めていない状況では、我が国が我が国の領海基線から200海里までの排他的経済水域及び大陸棚の権原を有しているとの事実に何ら変わりはない。
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