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佐藤正久『ヒゲの隊長のリーダー論 指揮官・指導者に求められる条件』(並木書房)
自民党の安保法PRアニメ「ヒゲの隊長」が作者不明の反安保パロディ動画に再生回数で抜かれた! 隊長の説明もことごとく論破
http://lite-ra.com/2015/07/post-1314.html
2015.07.23. リテラ
自民党の安保法制PRアニメ「教えて!ヒゲの隊長」が話題になっている。といっても、「国民の間で『ヒゲの隊長がカワイイ』と人気」とかいう話ではない。なんと、このアニメを批判したパロディ動画が登場し、そちらに人気が集まってしまったらしいのだ。
本家の「教えて!ヒゲの隊長」は元陸上自衛官で2004年のイラク派遣では第一次復興業務支援隊長を務めた経験を持つ“ヒゲの隊長”こと佐藤正久参院議員を模したキャラクターが、“あかりちゃん”なる女子中高生風キャラの安保法案に関する質問に答えていくというもので、7月2日にYouTubeで公開された。
もっとも、評判は芳しくなく、インターネット上では、「隊長が一方的にしゃべっているだけ」「電車の中での会話というのが意味不明」といった意見が寄せられていた。
すると、一週間後の9日に、これに反論する作者不明のパロディ動画「ヒゲの隊長に教えてあげてみた」がアップされる。映像は自民党のつくったアニメほぼそのまま、ヒゲの隊長のセリフもほとんど変わっていないのだが、あかりちゃんのセリフがそっくり入れ替わっていたのだ。本家ではシンプルな質問と相槌を打つことしかしないあかりちゃんが、ヒゲの隊長の説明に逐一、毒舌のツッコミを入れていくというもの。
すると、このパロディ動画が人気を集め、再生回数で本家の自民党アニメを抜き去ってしまったのだ。23日0時現在の両者の再生回数を見ると、本家動画が約24万回に対し、パロディ動画が約28万回。“PR”よりも“反論”が人気というこの状況は、安保法案強行に疑問を持つ国民がいかに多いか、の証明だろう。
だが、このパロディ動画がスゴいのは、本家より注目集めているというだけではない。その内容が素晴らしく、本家でのヒゲの隊長が訴える安保法案の必要性を、徹底的に論破しつくしているのだ。
たとえば反論動画の冒頭、あかりちゃん(以下あかり)はヒゲの隊長(以下ヒゲ)に対して、こう直撃する。
あかり「じゃあ、ズバリ言うけど、今回の安保法制、憲法違反だよね」
ヒゲ「そーりゃ大変だ」
あかり「超大変だよ。この時代に立憲主義の否定なんて。どこの独裁国家って感じ。ありえない。恥ずかしすぎて国際社会に顔向けできないんだけど」
ヒゲ「そんなことない。でも、本気で心配なんだね。大事な問題だよね。政治をあずかる私たちも真剣に考えているんだ」
あかり「真剣に考えているわりには、真剣に国民に説明する気はなさそうだけどね。国民の8割が説明不足、6割が反対って言ってるのに、理解を得られなくても決めるって、首相も高村(正彦・副総裁)さんも言ってたよね。戦争法案って批判されたら名前だけ変えてみせたり、まったく詐欺師かよって話だよ」
ここ一ヶ月、安保法案を検証するのが日課になっている本サイトからみても、あかりちゃんの毒舌は的確な批判だ。この後、「改憲したいならしたいで堂々と筋とおせよ」と皮肉るあかりちゃんに対して、ヒゲの隊長は“国際情勢の変化”と“ミサイルの脅威”を持ち出すのだが……
ヒゲ「実際に日本にミサイルを向けている国があるの知ってる?」
あかり「中国って言いたいんでしょ? はっきり言えよ。しかもなんか最近ミサイル向けられたみたいな言い方してるけど、ミサイルの照準が向いているのは冷戦期から変わってないんだけど。なんのために危機感煽ってるの?」
ヒゲ「もし、現実にミサイルを撃ってきたらどうする?」
あかり「現実にミサイル撃ってきたら個別的自衛権で対応できるでしょ。あんたたちが無理やり押し通そうとしてる集団的自衛権の話とは関係ないよね。それにミサイルを撃たせないようにすることが政治なんじゃないの? ちょっと煽られただけで大騒ぎするなんてプライドだけ高くて気が安いボンボンの発想だよね」
とメッタ切りにされてしまう。実際、ヒゲの隊長だけでなく、安倍首相が意味不明の比喩を用いて説明する集団的自衛権発動の具体例もまた、ほとんどが個別的自衛権の範疇に収まるものばかり。ヒゲの隊長は、閣議決定後の首相会見と同様、“自衛隊のスクランブル発進は10年前の8倍だ”と中国の脅威をアピールするのだが、これにも、あかりちゃんは「そもそも冷戦期にはそれ以上の発進回数があったのに、あえて最低の回数だった10年前と比べる理由は?」と、鋭く切り返すのだ。そして、「北朝鮮も核実験を繰り返しているし、最近はテロや、サイバー攻撃も本当に深刻。私たち日本人もいろんな脅威にさらされているんだ!」という例の決まり文句にもこう返す。
あかり「サイバー攻撃とか言ってる暇あったら、まずは年金の情報流出の件なんとかしてくんない? つーか、テロって戦争に参加するから狙われるんだけど。あんたたちは戦争に参加できるようにしたいんだよね? 自分言ってることが矛盾してるのわかってる?」
とにかくひとつひとつの説明をぐうの音も出ないほど叩き潰し、「狂った政権が一番の脅威だってのは私もびっくりだけど」というオチまでつける。まさにフルボッコというやつである。さらに、動画内でヒゲの隊長が強調する“安保法制によって抑止力が高まれば戦争が起きにくくなる”という論については、こう畳み掛けるのだ。
あかり「抑止力って言葉、ほんと好きだよね。対テロ戦争にそんな抑止力なんて効かないし、アメリカ見てみなよ。日本は今まで戦争しない国として様々な平和貢献をしてきた。特に紛争地域、貧困地域における民間レベルの活動は、本当に大きな信頼を得てる。それこそが一番の抑止力でしょ? なのにそんなことも無視して無駄なマッチョイズムを政治に持ち込むわ、そのために憲法違反まで侵して突っ走っちゃうわ……あんたのとこのボスに一言伝えてあげてよ、『狂ってますよ』って。簡単でしょ」
ヒゲ「(ニッコリして)あはん。そんなに簡単じゃあないんだ」
あかり「でしょうね」
ヒゲ「(突如3体に増殖して)でも何重にも備えることは大事」
あかり「増えてんじゃねえよ、キモいな」
とまあ、万事がこのような感じで、キレッキレのあかりちゃんに思わず吹き出してしまうのだが、やはり、特筆すべきは、本家動画で自民党が尻切れトンボに終わらせた、徴兵制についての議論だろう。
あかり「最後にひとつ、徴兵制に関して。憲法を軽んじて解釈改憲しようとしているくせに、なぜか徴兵制に関してだけは『憲法で禁じられているから』と言って絶対にしないと言い張ってる」
ヒゲ「そんなこと──」
あかり「あなたたちの狙っているのは経済的徴兵制だから。日本はいま貧困大国になろうとしてる。大学に通いたくてもお金のない18歳の若者に、他の仕事とは比べものにならない厚遇で自衛隊入隊の手紙が来る。そうやって自発的に軍隊に押し込むんだよ。アメリカがそうしてるみたいに」
ヒゲ「そんなことないから」
あかり「本音をいえば徴兵もしたいんじゃないの? そういうマッチョなの大好きだもんね。訓練受けさせて思想教育して美しい日本人が作れるとでも思ってるんでしょ。選挙権を18歳にまで引き下げたのもその関係だもんね」
ヒゲ「絶対にありえない、だって、だって、だって──」
あかり「ほらね、その先言えないでしょ? 図星だもんね。あんたたちが間抜けなことばかり言っているあいだに国会前は法案に反対する人たちで溢れかえるよ。もし来てくれたら“主権在民”っていう中学で習う単語について教えてあげるね。待ってますよ、佐藤正久議員」
繰り返すが、ヒゲの隊長のセリフは、「だって──」のあと説明しないことも含めて、ほぼ本家動画と同じである。いやはや、反論動画でここまで完膚なきまでにやられるとは……。
そもそも、今回のPR動画に自民党が佐藤議員を起用したのは、イラク派兵を知る自衛官OBという経歴を見込んでのものだろう。いわば“戦場のプロフェッショナル”として説得力のある説明を期待されていたわけだ。しかし結果は、どこの誰とも知れない人に完膚なきまでに論破されてしまった。結局、安保法案というのは、安倍首相ら政府だけでなく、自衛隊の制服組すら、自分たちの願望以上のことは語れないということらしい。……ほんと、なんなんだろう、このグダグダ法案は。
しかも、恐ろしいのは、この動画について佐藤議員が22日、ツイッターで〈中身は間違っているけど、佐藤も思わず吹いた〉〈なかなかよく出来ている。現時点で本家が24万回再生、パロディーが27万回再生。共にすごい再生回数だ、関心が高い!〉と語っていることだ。
「思わず吹いた」って、国民を戦争に巻き込む法案をつくっておいて、反論に対してこういうノーテンキなコメントを出すとは、いったいどういう神経をしているのか。それとも、論破されたこと自体を理解できていないのか? いずれにしても、安倍政権と自民党の反知性主義、恐るべしである。
(宮島みつや)
教えて!ヒゲの隊長
【あかりちゃん】ヒゲの隊長に教えてあげてみた
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