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2015年07月22日 (水) 午前0:00〜(NHK総合)
時論公論 「辺野古埋め立て取り消し判断は?」
西川 龍一 解説委員
沖縄のアメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設計画を巡って、沖縄県の前知事が行った埋め立て承認に瑕疵があるとする報告書を県の第三者委員会がまとめました。これを受けて翁長知事は、来月以降、埋め立て承認の取り消しなどを判断することにしていますが、政府は引き続き埋め立てに向けた作業を進める考えで、政府と沖縄の溝はさら深まる様相です。今夜はこの問題について考えます。
沖縄県の第三者委員会は、普天間基地の名護市辺野古への移設に反対する翁長知事が設置しました。弁護士や生態系に詳しい研究者など6人がメンバーです。今年2月から行われた会議では、仲井真前知事が行った辺野古沿岸部の埋め立て承認に▽法律的な問題はなかったか▽「環境保全への十分な配慮」や「国土利用上、適正で合理的」といった埋め立て承認基準に適合しているかどうかといったことについて、検証が進められてきました。
第三者委員会は、ほぼ半年をかけて行った検証の結果をまとめ、先週、翁長知事に報告しました。示された内容のうち、ポイントは2つです。仲井真前知事が行った埋め立て承認について、▽普天間基地の移設のためにただちに辺野古沖の埋め立てが必要だとすることに疑いがあること。もう一つは▽法律に基づく既存の環境保全計画に違反している可能性が高いことです。こうした点を踏まえれば、承認には瑕疵があり、法律に定められた要件を満たしていないと結論づけました。
内容を詳しく見てみます。まず、移設のために辺野古沖の埋め立てが必要だとすることに疑いがあると指摘したのは、どういう意味があるのか。政府は、普天間基地の危険性を一刻も早く除去するためには、辺野古移設が唯一の解決策という立場です。これに対して沖縄県側は、なぜ移設先が辺野古でなければならないのか問い続けてきました。県内移設では、沖縄の負担軽減にはつながらないうえ、海兵隊の基地が沖縄になければならないという合理的な理由がないという考えからです。沖縄県にとって明確な回答が得られない中で、報告書は、海を埋め立てるという取り返しの付かない工事を進めるのなら、合理的な説明が必要だということを示し、国側に突きつけた形です。
もう一つは、環境保全の問題です。元々、県の環境部局は、予定地周辺のさんご礁や国の天然記念物であるジュゴンへの影響など環境保全への懸念が払拭できないという意見でした。それが承認の際には、県の見解は「現段階で取り得ると考えられる環境保全措置が講じられている」となり、移設に反対する住民や自然保護団体などから疑問視する声があがっていたという経緯があります。報告書が法律に基づく環境保全計画に違反している可能性を指摘したことはこうした疑念を裏打ちする形です。
翁長知事は、第三者委員会を設置した時から、委員会の報告を重視するという考えを示してきました。報告書の提出を受けて、顧問弁護士などと相談しながら、最大限尊重して承認の取り消しなどを判断する考えを示しています。資料とあわせると500ページを超える報告書の内容を精査するには、1か月程度はかかる見通しですが、承認が取り消されれば、国が進めている埋め立ての法律的な根拠が失われることになります。
これに対して、国側はどう考えているのでしょうか。菅官房長官は、沖縄県の有識者会議に関することに政府としてコメントすることは控えるべきとことわった上で、「前知事の埋め立て承認によって、すでに行政判断は示されている。」「わが国は法治国家で、行政の継続性という観点からはすでになされた承認に基づいて埋め立て工事を進めさせて頂いている」と述べました。
国の沖縄防衛局は、翁長知事が第三者委員会を設置した際、結論が出るまで作業を中断して欲しいと要請したもののこれを受け入れず、ボーリング調査を続けています。こうした状況からすれば、報告書が出たからと言って、作業をやめるという選択肢はないというのが実情でしょう。
一方、この間、沖縄県議会で、辺野古移設に関係する新たな条例が成立しました。沖縄県内に持ち込まれる埋め立て用の土砂を規制するというもので、翁長知事の県議会与党の主導で成立したのです。条例の目的は、外来生物の進入を防ぐことで、本土とは異なる沖縄独特の生物の多様性を保護することです。県外から搬入される埋め立て工事に使う土砂に特定外来生物が混入しているおそれがある場合、知事は立ち入り調査を実施し、混入が認められれば使用の中止を勧告できます。辺野古の移設予定地の埋め立てには、2100万立方メートル、東京ドーム17杯分という大量の土砂が使われることになっていて、そのうち8割が県外から搬入される予定です。政府は、特定の事業を狙い撃ちにしたものにならないよう運用を見守るという立場を示しましたが、移設工事への影響は避けられないという見方が強まっています。
一連の沖縄側の動きを受けて、今後、どういったことが想定されるのでしょうか。
翁長知事は、報告書の内容に沿って、埋め立て承認の取り消しや撤回を判断することにしていますが、結論を出すまでの間、政府に対し、改めて移設計画を中止・撤回するよう要請することも検討しています。去年就任してからほぼ4か月間、政府首脳との会談が実現しなかった翁長知事ですが、今月4日にも菅官房長官とは会談しています。翁長知事としては、なんとか開いた対話の窓を閉ざすことはないという姿勢です。
今後、翁長知事が承認の取り消しや撤回を決めれば、埋め立て作業の法律的な根拠が失われます。政府は国が違法な作業を続けると言われる事態を避けるため、地方自治法に基づく是正指示などの対抗措置を取ることになると見られます。こうした対応によって移設に向けた作業自体は止まることはないという見方もあります。ただ、そうなれば、司法の場で国と県が争うという事態も予想され、対立は決定的なものともなりかねません。
安倍総理大臣は、新国立競技場の建設計画の見直しにあたって「国民の声に耳を傾けて見直す」と述べました。方針を転換したこの問題に比べ、こと辺野古移設に関しては、これまで県知事選挙や衆議院選挙など、各種の選挙で移設反対という沖縄の民意が示されても、政府は「普天間の危険性を一刻も早く除去するためには、辺野古移設が唯一の解決策」との立場を崩してきませんでした。民意によって見直しをするというのなら、辺野古の問題にはなぜかたくなな態度を取るのか、沖縄の気持ちに寄り添うと繰り返す政府側の言葉はどうなっているのかというのが、沖縄の人たちの気持ちです。国内問題とは違い、アメリカという相手がいるだけに、同じ対応は難しいとは言え、それでも主張すべきことは主張する。政府が県民の思いを伝える努力は不可欠だと思います。
(西川龍一 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/223461.html
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