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100億円はいくら見直しても戻らない(C)日刊ゲンダイ
新国立“白紙”でも戻らず…JSCがドブに捨てた100億円
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/161914
2015年7月19日 日刊ゲンダイ
どんぶり勘定で迷走した揚げ句、やっぱり「白紙撤回」――。世界中の五輪関係者がアングリしているに違いない。17日、安倍首相が見直しを表明した新国立競技場の建設問題。理由について、安倍首相は「コストが当初の予定よりも大幅に膨らみ、国民から批判があった」と説明していたが、一体、どのツラ下げて言っているのか。
そもそも新国立の建設問題が浮上したのは昨日今日じゃない。2012年11月にザハ・ハディド氏のデザインが選ばれ、翌13年9月に東京五輪開催が決定した直後から、約1300億円の巨額工費に対して国内の建築家から異論が続出。世界的建築家の槇文彦氏は同11月に「計画見直し」を文科省に訴えたのに完全無視だった。それが今さら「白紙撤回」を宣言しているのだからお笑いだ。
「建築のノーベル賞と呼ばれるプリツカー賞を受賞している建築家の伊東豊雄さんは昨年5月、旧競技場を改修した案を発表しました。スタンドの一部を削り、観客席を増設する内容で、工費は新国立計画の『半分程度』。つまり700億円程度と試算していました」(建築ジャーナリスト)
この時、見直していれば現状工費(2520億円)の3分の1以下で済んだのに、今や旧競技場は跡形もない。それに安倍首相は「ゼロベースで見直す」と威張っていたが、既に事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が新国立の関連工事費で使ったカネはざっと85億円にも上る(表)。ハディド氏に支払ったデザイン監修料13億円と合わせると約100億円。「白紙撤回」でこれらのカネもパーだ。
それだけじゃない。今後、デザイン変更に伴う違約金や損害賠償が発生する可能性もある。JSCは9日、スタンド部分の資材を大成建設に発注し、32億9400万円の契約を結んだ。大成建設が担当するスタンド建設費は現段階で約1570億円、屋根部分を担当する竹中工務店は約950億円の建設費を見込んでいるが、大幅見直しとなれば、両社がJSCに“損失補填”を求めるかもしれない。JSCは「ハディド氏側から、デザイン見直しに伴う違約金や損害賠償を求められる可能性はある」(広報)と認めた一方、他の賠償については「分からない」(同)。大成建設や竹中工務店に、JSCに賠償を求める可能性を問うと「個別の工事についてお答えしていない」(大成)と回答した。
大手ゼネコン関係者がこう打ち明ける。
「契約内容にもよるが、1000億円の受注を見込んでいたのに事業主の都合で500億円になった、なんて事態になったら業者側は賠償請求を検討する。ただ、今回の場合、それほど大幅なコスト削減は難しい。工期が短くなるほど、現場の作業員を確保するために人件費が膨らむからです。それに建設資材もどんどん高くなっている。17年4月には消費税が10%になり、さらに高騰するのは確実。削っても総工費は2000億円を切るかどうか……」
メーン競技場以外でも、開催地が二転三転した会場ではコスト増が囁かれている。こんなんで五輪なんて開催できるのか。いっそのこと、五輪そのものを「白紙撤回」で返上したらどうか。
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