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一刻も早い安否の確認が望まれる(安田純平Facebookより)
安田純平氏のシリア拘束で政府は? 懸念されるイスラム国人質事件の対応の繰り返し
http://lite-ra.com/2015/07/post-1299.html
2015.07.18. リテラ
ジャーナリストの安田純平氏がシリアで消息を絶ったという問題は昨日、CNNでも報道された。本サイトがつかんだ情報では、ISとは別のイスラム過激派に拘束された可能性が高く、ヌスラ戦線などの名前も取沙汰されているが、いずれにしても、一刻も早い情報収集、状況把握、解放交渉が必要な切迫した事態であることはたしかだろう。
しかし、日本政府の動きは鈍い。いや鈍いどころか、何か手を打っている気配もない。大手マスコミも菅義偉官房長官の「拘束されたとの情報に接していない」の一言で、これを一切報じていない。
この状況を見ていて思い浮かぶのはやはり、先のイスラム国人質事件だ。あの事件では、後藤健二さんと湯川遥菜さんという2人の人質が惨殺されたが、日本政府の対応は無策どころか、むしろイスラム国を挑発し、事態を悪化させるものだった。
最近出版された『検証「イスラム国」人質事件』(朝日新聞取材班/岩波書店)でその詳細が描かれているので、同書を紹介しながら、改めて事件を振返ってみたい。責任はどこにあるのか、政府は何をすべきだったのか、何をしなかったのか。安田氏の拘束が濃厚となった今、それを検証することが、安田氏救出のヒントとなるはずだ。
イスラム国事件では2015年1月20日、イスラム国側が2人の殺害予告映像を流す以前に政府がどう対応したかが重要だった。イスラム国の人質となり、その後解放された人々は全員、映像公開以前の水面下での交渉の結果だった。そしてオレンジ色の拘束服を着せられ映像を公開された人質は全員殺害されていたからだ。
そもそも14年8月中旬に拘束された湯川さんは解放される可能性が極めて高かった。湯川さんが拘束された際、イスラム国のオマル・グラバ司令官は政府ではなくジャーナリストの常岡浩介氏と元同志社大学教授の中田考氏に連絡を取っている。
「オマル氏が常岡氏に伝えたのは、湯川さんにはスパイ容疑がかかっており、裁判をしようと思っているが、湯川さんは英語もアラビア語もできないため意思疎通がとれない。そこで、通訳と立会人が必要だ」
2人は要請を受け、同年9月3日にラッカに向け日本を出発した。経由地のイスタンブールでは外務省職員4、5人に「行かないでください」と諭されたが、しかし2人はシリア入りした。当初から既に政府、外務省は2人のイスラム国接触を妨害したのだ。相手の手の内には湯川さんと言う日本人人質がおり、その救出可能性があるにもかかわらずだ。
さらに重要なのは、この時点でオマル司令官は湯川さんについて「身代金は取らない。処刑はしない」と常岡氏に明言していることだ。
「イスラム法にのっとって裁かれ、無罪にならなくても殺されるよりはましだし、交渉すれば解放の可能性はある」
常岡氏の当時の判断は人命を優先するためにも、的確だったはずだ。そのためにも2人はシリアに渡ったのだから。しかしアサド政権によるラッカが空爆されたことで、2人は一時帰国を余儀なくされ、1カ月後の再渡航の準備の途中、事件が起こる。
10月10日、北海道大学学生がイスラム国で戦闘に加わろうとしたという容疑が浮上、関連先として常岡氏、中田氏の名があり2人の出国は不可能となったのだ。これは明らかな捜査当局による妨害行為だった。
この時点で警視庁では連絡室を立ち上げ、湯川さんの父親と接触するなど情報収集しているが、しかし「官邸の情報連絡室など、ほとんど動いていない状態だった」という。その約2週間後、今度は後藤健二さんがシリア入りし消息を絶った。
後藤さんの妻へイスラム国からメールが届くのが10月下旬。そして政府がそれを知るのは12月3日だった。しかし政府がとった対応は、無策どころか“何もしない”という意思を伴った方針だった。
「特に1月20日以前は『交渉主体は妻であり、最初からコンサルタントが先行して相談にも乗っていた。政府は当事者にはなれない』(官邸幹部)」
「メールを通した身代金などの交渉は、完全に後藤さんのコンサルタントらのコントロール下で進められた」
「政府が身代金交渉から距離をとろうとした背景には、安倍首相の『テロリストの要求には絶対に応じない』という強い意向があった。政府関係者は『妻を装ったメールの代筆はできない。全てコントロールすれば政府とテロリストの直接交渉になってしまう』と説明し、身代金交渉については『何とか助けたいと考えた妻がコンサルタントと相談して、政府の方針と反する内容を発信するのも仕方がない』と語った」
まるで他人事。全て“夫を助けたい妻”に責任を転嫁し、黙認という形で放置したのだ。
身代金を要求されているのは政府でなく、妻個人。だから好きにすればいい。当事者は自分たちではない。それが日本政府、官邸の“本音”だった。
だからこそ、安倍首相は湯川さん、後藤さん拘束を知った後の15年1月16日からの中東訪問で、「ISILと闘う周辺諸国に」2億ドルもの支援を表明し、イスラム国を平気で刺激する演説をした。イスラム国が2人の人質にオレンジ色の拘束服を着せカメラの前に立たせたのは、そのすぐ後だ。
水面下での交渉も、ろくな情報収集も打開策もなく、交渉カードも持たずにただ「テロリストとは交渉しない」と言い続ける。さらに結果の責任さえ取らない。これがこの国の首相と政府の姿なのだ。
そして湯川さんが殺され、身代金は不可能だと判断したイスラム国は後藤さんの解放条件を変更した。イスラム国がつきつけた、ヨルダンに拘束されていたイスラム国死刑囚と後藤さんの交換は、世界にイスラム国の存在をさらにアピールする格好の宣伝として利用された。
安倍首相の頭の中には、自国民救済の努力や工夫ではなく、米国の「テロリストからの身代金要求に応じない」という方針への追随しかなかった。これまでフランス、ドイツ、スペインなどの人質が水面下での交渉の末、身代金を払い解放されている。こうした国々と連携すればルートはいくらでもあったはずだ。しかし安倍政権は人命よりも、アメリカへの忠誠、選挙、政治日程を優先させたのだ。
本書には、イスラム国に斬首されたアメリカ人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー氏の母親のこんなコメントが掲載されている。
「我々が文明社会の一員であり、なおかつ身代金を支払いたくないというのであれば、人質が殺されるのを防ぐ方法が必要でした」
安倍首相が「テロリストと交渉しない」のであれば、それとは別の方法を模索し、見つけ、解決する必要があった。実際、日本政府には中東とのパイプを生かし、アメリカとは違った対応をする能力もあった。しかし安倍政権がそれを模索した形跡はない。
では、今回はどうなのか。もし現在、安田氏の拘束、解放に関し、政府や外務省など関連機関が秘密裏の交渉を水面化で行われているなら、教訓が生かされているということだろう。しかし、冒頭にも言ったように、残念ながら、その形跡はまったくない。
後藤さんと湯川さんが殺害された後、安倍首相は「日本人にはこれから先、指一本触れさせない」と啖呵を切った。また、一連の集団的自衛権や安保法案でも「日本国民を守り抜く」という言葉を何度も繰り返している。
しかし、実際には安倍首相は自国民の命など、なんの関心ももっていない。この男にとっては、自国民の命などより、アメリカとの関係、政局、そして自分の祖父コンプレックスの方がよっぽど大切なのだ。
もはや、政府には何も期待できない。ただ、安田氏解放に向け、湯川さんのケースのように民間人やジャーナリストが水面下で動いている可能性もある。もしそうだとしたら、せめて政府は妨害だけはしないで欲しい。
湯川さん拘束で、常岡氏らの動きが実行されていたら、湯川さんが殺されることはなかったし、後藤さんも湯川さんを救出するため危険地帯に行く必要もなかったのだから。
いずれにしても、安田さんの消息について注視を続けたい。
(伊勢崎馨)
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