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2015年07月18日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆安倍晋三首相は7月17日午後、2020年の東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場建設計画問題について、首相官邸で記者団に「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直す決断をした」と表明した。新国立競技場建設費用が、2520億円というとてつもない巨額となる計画に国民有権者の80%が「高すぎる」として反対の意思を示していることを無視できなくなったのだ。
安倍晋三首相は、「内閣支持率低下」を相当気にしているらしい。たとえ「退陣を決意」するにしても、「刀折れ矢尽きる」(戦う手段をすっかり使い果たす。また、物事に立ち向かう手段がなくなる)惨めな姿で退陣に追い込まれたくない。衆院本会議(7月16日)で「安全保障法制整備関連法案」を強行採決、可決したことが、国民有権者の強い反発を呼んでいることから、「内閣支持率」が、さらに進んで、「政権維持の危険水域30%」を割りこむ危険を感じている。これをさらに後ろから背中を押して「低下」させる要因となっているのが、巨額の新国立競技場建設費用だ。
◆国民有権者は、生命を危機にさらす政策と税負担を重くする政策に対して極めて敏感である。
野田佳彦前首相は、生命を危機にさらす政策=「原発再稼働推進政策」と税負担を重くする政策=「消費税増税政策」によって、2014年12月16日の総選挙で大敗して、政権を失った。
安倍晋三首相は、生命を危機にさらす政策=「安全保障整備関連法案」と税負担を重くする政策=消費税5%アップ→10%アップ政策に加えて、国民負担を顧みず新国立競技場改築費用に2520億円を費やそうとしていた。
安倍晋三首相と野田佳彦前首相は、どう見ても相似形だ。安倍晋三首相は、野田佳彦前首相という「前車の轍」を踏もうとしている。
◆安倍晋三首相は7月17日午後、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相と会談し、計画見直しへの協力を求めた。これに森喜朗元首相も了承した。計画を白紙に戻すと、前日本ラグビー協会会長を務めた森喜朗元首相がこだわり続けた計画、つまり、新国立競技場を2019年のラグビーワールドカップ(W杯)で使うことが物理的に難しくなるので、森喜朗元首相は、この計画を断念した。
森喜朗元首相は、就任当初、それなりの支持があったものの、「失言」が報じられると支持率は急降下した。2000年5月15日、「日本は天皇を中心とした神の国」(神の国発言)と発言し、大きな波紋を呼び、6月の「無党派層は寝ていてくれればいい」など数々の不見識発言によって、「首相としての資質に欠ける」との批判が各層から噴出し、内閣支持率が急低下した。その最中、2001年2月10日、ハワイ沖で日本の高校生の練習船「えひめ丸」が、米海軍の原子力潜水艦と衝突して沈没、日本人9人が死亡するという事故が発生した。その第一報が入ったとき、森喜朗元首相は、神奈川県内のゴルフ場におり、連絡はSPの携帯電話を通じて入ったので、日本人が多数海に投げ出されたことや、相手が米海軍あることも判明していたのに、第2報のあとの第3報が入るまで1時間半の間プレーを続け、首相官邸に飛んで帰ることもしなかった。このため、危機管理意識の希薄さが問題になり、国会でも採り上げられ、内閣支持率は、9%まで下がった。竹下登内閣が政権末期に記録した7〜9%が史上(戦後)最低とされているので、森喜朗元首相の政権末期9%前後は、歴代2位の低支持率。民主党の鳩山由紀夫は「(支持率が)消費税(5%)並みになった」と揶揄した。在任期間は、2000年4月5日〜- 2001年4月26日のわずか1年21日だった。
安倍晋三首相が2014年8月20日午前中、静養先の山梨県鳴沢村の別荘から山梨県富士河口湖町のゴルフ場で森喜朗元首相や茂木敏充経済産業相らとプレーしていたところ、広島市内で土砂災害が発生しているとの急報を受けた。そのとき、森喜朗元首相は、「早く首相官邸に戻った方がいい」とアドバイスした。「えひめ丸事故」が元凶となり、退陣に追い込まれた自ら経験を思い出したのである。
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