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週刊金曜日ニュース
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安保法制でゆらぐ公明党の平和の理念(1)──森田実×中島岳志
2015年7月16日2:46PM
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=5325
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集団的自衛権の行使容認を含む戦争法案(安全保障関連法案)が7月16日午後の衆院本会議で、与党などの賛成多数により可決され、衆院を通過した。憲法が骨抜きにされてしまう危険性をどう考えるのか。自民党と連立している公明党は「平和の党」としての存在感を示しているのか。2015年4月17日号に掲載した緊急対談をネット公開する。
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もりた みのる・政治評論家。1932年生まれ。1980年代から、公明党、創価学会関係の取材を重ね、多方面で活躍。ブログ「森田実の時代を斬る」(http://mori tasouken.com/TEST03-2s.html)は毎日更新中。著書に『独立国日本のために 「脱アメリカ」だけが日本を救う』(2011年、ベストセラーズ)など。
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なかじま たけし・本誌編集委員、北海道大学大学院法学研究科准教授。1975年生まれ。インド政治、近代日本思想史研究。テレビ朝日「報道ステーション」の毎週水曜日コメンテーター。著書に『アジア主義 その先の近代へ』(2014年、潮出版社)、『下中彌三郎 アジア主義から世界連邦運動へ』 (15年、平凡社)など。
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中島 公明党は自民党に抵抗できるのか、僕は非常に怪しい気がしています。昨年7月、安保法制の整備についての閣議決定(注)がなされた前後から、僕は公明党に厳しい意見を言ってきました。創価学会にはたくさんの友人がいますが、彼らも閣議決定の内容を危惧している。
「自民党の暴走を食い止めるブレーキ」として期待もあったけど、いまはアクセルとブレーキを両方踏んでいる車だと思っています。どこに行くかわからない不安定な状態。アクセルを踏んでいる足のことをしっかり考えてほしいです。
森田 昨年初めから7月までに、公明党と創価学会の人たちの中では、相当な議論がありましたよ。私のもとには、学会一筋の人から「公明党とは決別する」「公明党の腐敗した連中と闘う」などといったメールが何件も届いた。ですが、いまはみんなが口をつぐんでいる。この沈黙を私は懸念しています。
党側は統一地方選挙が終わるまで、自民党との議論は「しばし休戦状態」と考えているのでしょう。ですが、自民党はこの間にも、着実に事態を先に進めています。
閣議決定後、公明党との協議はすでに済んだかのようにマスコミに「宣伝」をし、休戦に持ち込んだ。自民党の高村正彦副総裁は訪米して、米国への防衛協力が拡大されるなど好き勝手なことを言っている。今月末には安倍の訪米もある。ここで日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を決め、安保の法整備に入ろうという考えです。一方、公明党には米国の出方を注視している節がある。その動きを踏まえた上で法の骨抜き作業に入ろうとしているのでしょう。
(注)閣議決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」。第3項「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」で、集団的自衛権の行使容認についても触れられている。
(2015年4月17日号、一部敬称略、つづく)
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安保法制でゆらぐ公明党の平和の理念(2)──森田実×中島岳志
2015年7月16日3:00PM
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=5334
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安保法制見直し派が優勢
中島 政府の一連の動きは外務省が主導していて、中枢には兼原信克官房副長官補らがいる。彼らは「湾岸のトラウマ」(注2)をよく持ち出します。同じ轍を踏まないように集団的自衛権を行使すべきだ。そうしないと日本は普通の国家として扱われないし、「中国の脅威」に対抗できないということです。彼らと安倍さんのイデオロギーがうまく共犯関係を結んでいる。
今後は公明党が譲れないと考えている線をかなり超えた内容でガイドラインを決め、それを認めるよう圧力をかけてくるでしょう。
森田 安倍は、公明党を免罪符にして日本の平和憲法をつぶそうとしています。自民党が公明党との協議を進めるときには、米国との外交を重視する安保法制見直し派の数人が参加する。彼らは公明党と与党協議しているというポーズをとりながら、自民党内の議論を封殺する。ほかの党員は、議論をする場がないと嘆いていますよ。
公明党も安保法制見直し派が力を持ってきている。衆院議員の中には自民寄りの人も出てきています。公明党本部の中も衆院寄りで、自民党の安保法制に乗ろうとするムードが醸成されてしまっている。自公の衆院議員は選挙協力をしているし、絶えず会合を行なっている。そうして付き合っていると文化や考え方が似てくるんです。
公明党は参議院から代表を出しているので、これが安保法制見直し派の暴走の歯止めになっている。
中島 創価学会には自公路線を「本来の活動からの逸脱」と捉えている人がかなりいます。とくに池田大作名誉会長の側近を務めた人や婦人部、青年部の中に多い。学会内部は一枚岩ではない。私は彼らに「最後の歯止め」として立ち上がってほしいと思っています。
自衛隊員の命、守れるか
中島 公明党の山口那津男代表は湾岸戦争終結直後や、国際連合平和維持活動(PKO)の一環として自衛隊がカンボジアに派遣される前に、現地調査に入っています。イラク戦争の時には、派遣される自衛隊員の壮行会に出席し、「うちの夫、大丈夫なんですか」「もしものことがあったら、あんた責任が取れるんですか」と家族から詰め寄られた経験がある。これが彼の根っこにあって、閣議決定に至る過程でも慎重な態度をとっていましたが、与党協議の場から外された。結局、自民党の高村さんと公明党の北側一雄副代表が中心となって閣議決定の内容が詰められた。参議院議員の山口代表が外され、衆議院小選挙区当選の北側さんが中心となったことが大きかった。
森田 イラク戦争で防衛省(当時は防衛庁)も隊員の家族から非難を浴びた。官邸と外務省の暴走には防衛省も賛同していないところがある。公明党も隊員の命が守られるのか、そこの部分の問題は提起しています。
中島 日本では、「イラク戦争での死者は出なかった」と言われていますが、派遣から帰ってきた自衛隊員の中に、28人の自殺者が出ている。この事実は広く社会で共有した方がいいと思います。
森田 戦争好きの中谷元防衛相ですら動揺しつつある。今度の自衛隊法の改正で、隊員が危険地域に入る可能性も高くなる。
(注2)1991年の湾岸戦争で多国籍軍を結成した米国や各国とは違い、日本は資金のみ拠出。「血を流さない」と批判され、これが負い目となって後のイラク戦争での陸自海自派遣などにつながった。
(2015年4月17日号、一部敬称略、つづく)
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安保法制でゆらぐ公明党の平和の理念(3)──森田実×中島岳志
2015年7月16日3:21PM
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=5342
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森田さんと中島さん政権離脱論も
中島 憲法の枠組みを超えた解釈改憲はやっていない、集団的自衛権行使は認めていない。閣議決定後、公明党はこう説明しています。つまり、個別的自衛権の範囲内での「武力の行使」を認めた1972年の政府見解と、同じ考えを取っている。この見解は、憲法13条(幸福追求権)に基づいて、国民の生命、自由および幸福追求の権利が「根底から覆される」場合には、やむを得ない措置として自衛権を行使するとしています。
ただ公明党が出している文章を読むと、曖昧にごまかして解釈の余地を持たせている部分がある。
昨年9月14日付の公明党機関紙『公明新聞』は、「日本への武力攻撃に匹敵するような事態にのみ武力行使が認められており、外国の防衛それ自体を目的とした、いわゆる集団的自衛権の行使は認めていません」と閣議決定の内容を説明しています。問題は、「日本への武力攻撃に匹敵するような」と対象を曖昧にしているところです。集団的自衛権を認めていないのはあくまでも「外国の防衛それ自体を目的とした」場合で、「日本への武力攻撃に匹敵する」と強引に認定すれば、集団的自衛権が行使できるようになっている。集団安全保障の余地も十分に残している。
森田 公明党としては、最悪の事態は食い止めたという評価で決着した。最終段階になって、閣議決定の冒頭に「専守防衛」「軍事大国とはならず」「非核三原則を守る」などと書き込めたと(注3)。閣議決定の執筆を担当する官僚が、「どうぞ加えてください」という態度に変わったと言うんです。
実は、閣議決定の前に、公明党と創価学会内から政権離脱論が出ていた。これは安倍たちにも伝えられた。公明党の支持なしには当選できないので、自民党は困った。党内が分裂する恐れも出てくる。なので加筆させたのでしょうが。
(注3)閣議決定の冒頭部分は以下の通り。
「我が国は、戦後一貫して日本国憲法の下で平和国家として歩んできた。専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を守るとの基本方針を堅持しつつ、国民の営々とした努力により経済大国として栄え、安定して豊かな国民生活を築いてきた……(以下略)」
(2015年4月17日号、一部敬称略、つづく)
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安保法制でゆらぐ公明党の平和の理念(4)──森田実×中島岳志
2015年7月16日3:25PM
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=5345
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孤立させない闘いを
中島 自民党は高めの球を投げて、その落としどころを探るやり方を取っています。つり上げた要求を最初に出し、最終的に譲歩したように見せかけるやり方です。公明党は、その手法にはまっている。あるいは意図的にマッチポンプを繰り返している。「歯止めになった」という演出ができるからです。
昨年の閣議決定前、自民党は砂川判決と芦田修正論をセットでもってきました。砂川判決は米軍基地を合憲と認めた(注4)もので、芦田修正論は、侵略以外の戦争が認められるという解釈の余地を憲法9条に付したものです。9条の第1項には侵略戦争はしないという旨が書かれていて、第2項は「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」としています。
砂川判決と芦田修正論をつなげると、憲法は侵略戦争をするための戦力保持・行使を禁じているだけで、個別的自衛権も集団的自衛権も禁じていないと解釈できる。これに山口さんなどが強く反発し、落としどころとして1972年見解が出てきた。でも、ここにもさまざまなほころびが生じています。
閣議決定の直後、安倍さんはホルムズ海峡の機雷除去はできると発言したり、岸田文雄外相は米軍に対する武力攻撃は「新三要件」(注5)に当てはまる可能性が高いと言っています。つまり、「米国が攻撃を受けたら一緒に闘います」ということです。完全に自国防衛から離れた集団的自衛権ですが、公明党は明確な批判を避けている。
森田 今後は、日米ガイドラインとそれに基づく法律作りが勝負になってくる。ここで「頑張れよ」と言いたい。公明党が自民党に寄りすぎれば、学会員の支持は受けにくくなる。今後の選択肢として、創価学会は公明党からもっと自由になるべきだとも思っています。
中島 自民党がかつて池田名誉会長に対する証人喚問を要求したことがありました。公明党は政治的に圧力をかけられたこうした歴史があるので、創価学会に対して厳しい態度を取る権力や勢力に抱きついていくという傾向がある。
昨年、大阪で起きた現象も同じです。大阪都構想をめぐって公明党と対立した橋下徹大阪市長が、都構想に協力しない場合は次期衆院選で公明党が議席を持つ大阪府内の二つの選挙区に自身と松井一郎大阪府知事が対抗馬として出馬する意向を議会で示した。これに対し公明党は、都構想についての住民投票を認める選択をしました。
森田 公明党はかなり甘く見られ始めています。「どこまででも付いていく」なんてことが新聞にも書かれてしまう。支持者はやりきれないですよ。こんな状態を阻止するためにも、公明党と創価学会を孤立させてはいけないと僕は思います。このままでは、公明党をさらに自民党の懐に入っていくようにさせるだけ。平和を希求するひとりの人間として、私たちは公明党を引き戻さなければならない。
中島 僕は、創価学会のみなさんは本当にこれでいいのかと訴えたい。創価学会は牧口常三郎という初代のトップが獄中死して、そこから「平和」の理念を掲げてきた。このままでは、平和運動を進めてきた創価学会および公明党の多くの人の人生が否定されてしまう。末端メンバーの悲痛な声をたくさん聞いてきましたが、公明党幹部が米国追随の集団的自衛権に邁進すれば、人生と信仰をかけて抗議してほしい。いっしょに立ち上がってほしい。それが「人間革命」の王道なのではないでしょうか。
(注4)「憲法第9条は日本が主権国として持つ固有の自衛権を否定しておらず、同条が禁止する戦力とは日本国が指揮・管理できる戦力のことであるから、外国の軍隊は戦力にあたらない。したがって、アメリカ軍の駐留は憲法及び前文の趣旨に反しない」との判決が59年に最高裁でくだされた。
(注5)武力の行使の「新三要件」。昨年7月に閣議決定した日本が武力行使をする際に満たすべき要件。「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」「これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと」「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」。
まとめ、写真/渡部睦美・編集部
(2015年4月17日号、一部敬称略、おわり)
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