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衆院平和安全法制特別委で安保関連法案の採決を前に、野党議員(左)が抗議する中を引き揚げる安倍首相(右端)=15日午後
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150716-00010003-nishinp-pol
西日本新聞 7月16日(木)10時38分配信 7月16日(木)10時38分配信
15日の衆院特別委員会で与党が安全保障関連法案の採決を強行したのは、安倍晋三首相の強い意向だった。首相自ら「国民の理解が進んでいない」と認めながら、米議会で今夏までの成立を公約したことや来年の参院選への影響などを考慮し、今国会での成立を優先。国民の理解は置き去りにされた。
政権内には、新国立競技場問題が新たな懸念材料として急浮上している。採決強行で支持率が急落すれば、ダブルパンチで政権基盤を揺るがしかねない。
岸信介氏を見て育った。『俺だって』
「『自ら省みてなおくんば』という信念と確信があれば、しっかりその政策を前に進めていく必要がある」。首相は採決直前の特別委審議で、孟子の一節を引いて心境を語った。
いくら反対が強くても、正しいと信じるなら私は進む−。その胸中に、激しい抗議行動の中で1960年に日米安保条約改定を実現した祖父、岸信介元首相の姿があったことは間違いない。今は批判を浴びても、いずれ歴史が正当性を証明してくれるという自信。
「首相は岸氏を見て育った。『俺だって』という気持ちが支えになっている」。自民党三役経験者は、世論の反発を押して安保法案成立に突き進む首相の姿をこう読む。
米との公約、3連休のデモ…15日採決を急いだ理由
個人的な思い入れに加え、首相には「後退」が許されない政治環境がある。
首相は4月末の米議会演説で、安保法案を「この夏までに必ず成就させる」と宣言しており、今国会成立を断念すれば日米同盟が揺らぐ。反対論が強い安保法案を来年に先送りすれば、夏の参院選を直撃する懸念もある。
成立を確実にするため、国会会期も9月27日まで大幅延長し、戦後最長とした。参院で議決されなくても衆院で再可決できる「60日ルール」が適用できる事実上の衆院通過期限も27日に迫っていた。
反対世論が広がり続ける中、18日からは3連休となる。15日採決を急いだ理由を、公明幹部は「連休中に抗議デモが発生し『きょうは2万人、明日は3万人』と報道されれば、どんどん採決しにくい環境になっていただろう」と明かす。
「来年夏までには国民も忘れる」
ただ、採決強行が支持率にどの程度影響するかは読み切れない。官邸内では「たとえ10ポイント程度下げても、(参院選がある)来年夏までには国民も忘れる。経済が良ければ回復する」(高官)と強気の声が支配的だが、一部世論調査では支持率と不支持率が逆転しており、弱含みだ。
ここにきて新国立競技場問題
さらに、ここに来て新国立競技場の建設費問題が政権に飛び火。「競技場問題は安保法案より分かりやすい。こっちの方が深刻かもしれない」(首相周辺)との声も漏れる。
民主党の枝野幸男幹事長は13日の会見で「2千億円を超えるような話を放置してきたのは安倍内閣だ」と批判。自民党の二階俊博総務会長は「節約する方法はないのか。国民の負託を受けた国会として、考えなければならないことは大いにある」と計画修正を求めた。巨額費用に対する世論の反発を警戒する声は政府、与党からも相次ぐ。
さらに70年談話、川内原発再稼働も
参院で安保法案審議が本格化する8月は、首相の戦後70年談話発表や九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働などの重要課題とも重なる。政権への「逆風」がさらに強まるのは間違いない。
政府、与党は法案成立時期を9月上旬と想定するが、参院国対幹部は口が重い。「参院は衆院みたいなやり方はできない。四方八方に気を使わないとどこで審議が崩れるかわからない」
=2015/07/16付 西日本新聞朝刊=
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