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政治学者の山口二郎法大教授(C)日刊ゲンダイ
山口二郎法大教授「安倍首相は劣情で国民を道連れにするな」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/161575
2015年7月13日 日刊ゲンダイ
憲法学者の「違憲表明」に耳を貸さないばかりか、「学者に平和は守れない」とケンカを売った安倍政権に「このケンカは買うしかない」と立ち上がったのがこの人、政治学者の山口二郎法大教授だ。宣戦布告した戦う政治学者を突き動かしたのは何だったのか。
――改めて、「学者に平和を守れるか」とケンカを吹っかける安倍政権の姿勢をどう感じますか。
権力者にとって批判的なメディアと学者というのは目障りですからね。さまざまな形で攻撃してくるのは当然ですが、戦後史くらいはちゃんと勉強して欲しいですね。
――戦後史における学者の役割ですね。
そうです。自民党は岸信介政権まで憲法改正と再軍備を目指し、普通の軍隊を持とうとしていた。戦前回帰の野望を隠さぬ権力者に我々の大先輩にあたる学者たちが立ち上がり、批判し、その議論にメディアと国民も呼応して、60年安保という戦いが巻き起こった。自民党も高まる批判の声を聞き入れざるを得なくなり、結局、岸首相は退陣に追い込まれたのです。
――岸退陣後、続く池田内閣は「所得倍増」を掲げ、再軍備から経済重視へと路線をガラリと変えました。
1960年を境に自民党は生まれ変わった。それが戦後史の常識です。岸的な復古主義の右翼政党から、合理的かつ近代的な保守政党にモデルチェンジした。批判に耳を傾け、軌道修正を図ったのです。事実上、憲法改正を棚上げし、専守防衛や集団的自衛権の行使を禁じるという平和国家路線にシフトしたのも、60年以降です。
――もし、岸首相が辞めずに憲法改正まで突っ走っていたら、日本はどうなったでしょうか。
ウンと暗い悲惨な国になっていたはずです。ベトナム戦争時には米国に迫られて派兵せざるを得なかったでしょうからね。学者の批判を自民党が聞き入れなければ、平和は守れませんでした。
■批判に耳を傾けたから長期政権を築いてこれた
――昔の自民党政権には権力を持つ者の謙虚さというか、“たしなみ″がありました。
むしろ一党優位時代の自民党の方が謙虚でした。自分の分からないことは他人の知恵を借りながら、国を統治する。視野の広さと懐の深さを持ち合わせていました。違う意見のやつを力ずくで押さえつけたら、独裁になるという緊張感もありましたね。戦後史の節目節目で学者や野党の批判に耳を傾け、軌道修正を図ったからこそ、自民党は長期政権を築いてこれたのだし、ベトナム戦争でも日本は戦渦に巻き込まれずに済んだのです。
――安倍首相を筆頭に、今の自民党は批判に耳を傾けないどころか、批判を絶対に許さないように見えます。
3年半の野党暮らしを経て再び政権の座についてから、自民党の劣化は目に余ります。選挙に勝ったのだから、自分たちは何をやってもいいと開き直り、やりたいことは全部やらせてもらうという態度を隠そうともしない。
――劣化といえば、自民党の有力OBから批判が上がっているのは象徴的な話ですね。
小選挙区制の導入以降、自力で支持者を説得して選挙区を勝ち上がる実体験を持つ政治家が減ってしまった。逆に「風向き次第」で政党の公認さえ得れば選挙に勝てるという政治家が、圧倒的に増えていますね。
――そうなると、皆がトップの顔色を見るヒラメになる。
政党内でのバランス感覚が崩れ、トップの独裁色が強まっていきます。ましてや、今のトップは批判を許さぬ人ですからね……。
――折しも安倍政権は、国立大の人文社会系学部を廃止しようとしています。
文科系の学問の目的のひとつは、権力と正義の識別を教え、強者にも臆せず批判できる知識を磨き上げること。世の中を批判的に見る人物の一掃が狙いだとしたら、秦の始皇帝の焚書坑儒やナチスの焚書、ポルポトの知識人大虐殺に匹敵する歴史的蛮行です。
■自民党は臆病ないじめっ子ばかり
「戦うしかない」と山口二郎氏(C)日刊ゲンダイ
――東京新聞の連載コラムに「劣情の政治」というタイトルで、〈実戦の経験がないことに劣等感を持つ少年兵。安倍晋三を評するに、これ以上の言葉はないと思う〉と書かれていましたね。
本当に子どもじみているんですよね、今の政治家たちは。安倍首相だけじゃなく、取り巻きたちも皆、幼稚じゃないですか。戦争がどれだけ悲惨なのか、というリアリティーを全く感じ取ることができない。それでいて安保法制は「自衛隊にリスクはない」とか「国民の安全を高める」とか、よくも言えたものです。百田尚樹のヨタ話に同調して沖縄県民をおとしめる政治家たちも、臆病ないじめっ子です。
――そうしたリアリティーの欠落から来る劣等感が、安倍首相には感じられる?
安保法制の原動力は、外務省と安倍首相、2つの劣等感なんですよ。
――外務省の劣等感とは?
湾岸戦争のトラウマってやつです。日本は普通の軍隊を持っていないから、国際社会で軽んじられるという思い込み。日本は本来、国連安保理の常任理事国になれる大国なのに、軍隊を持たないばかりに発言権を与えられていないという偏った見方。外務省のメーンストリームほど、そうした偏向が根深い。勝手に劣等感を抱いた外務省幹部が、安保法制の筋書きを描いている。
――安倍首相の劣等感とは、やはり祖父を何としても超えたいというコンプレックスですか。
そう。グランドファザー・コンプレックスとでもいうのかな。安倍首相は一族内ではお利口サンではないから、幼い頃から周囲にバカにされてきたんじゃないですか。その積年の恨みを祖父を超えることで晴らしたいわけです。祖父がやりたくても出来なかったことを実現することでね。そんな個人的な劣等感と、武力行使を放棄した戦後日本に対する劣等感とが、安倍首相の心の内でぴったり融合しているような印象です。
■学者は今、売られたケンカを買う時
――首相もその一人ですが、日本最大の右翼組織「日本会議」に連なる人々は、武力を放棄した戦後日本に劣等感を抱いているように思えます。
アメリカにこんな憲法を押し付けられたから日本は半人前の国になってしまった、そんな劣等感が戦後の保守勢力に脈々と受け継がれてきたんでしょうね。
――確かに劣等感以外に集団的自衛権を今、行使しようとする合理的理由が分かりませんね。
実質的な必要性がないんですよ、集団的自衛権には。安倍首相と外務省のメンツというか感情的な話だけなんです。我が国を取り巻く安全保障環境が悪化したというなら、アフリカや中東に自衛隊を送るのは愚の骨頂。日本が手薄になってしまう。
――となると、安倍首相を突き動かしているのは何でしょうか?
劣情です。参加しなくてもいい戦争に進んで参加し、無駄に敵をつくっていけば、いつか必ず日本の国内でもテロが起きますよ。安倍首相が劣情を抱くのは勝手ですが、国民を道連れにするなと言いたい。
――安倍政権は95日間も会期を延長し、安保法制を最終的に数の力で押し切ろうとしています。
国会の多数を握った側が何をやっても許されるのは、民主主義とは言えない。昔の自民党ならある程度、議論して国民も反対、野党の異論にも理があるとなれば継続審議。マトモな法案に仕上げてから出直したものです。今の自民党は民主主義を健全に進める常識さえ失っています。
しかし、大幅会期延長はリスクもはらむ。広島・長崎の原爆記念日、そして8月15日の頃には平和を望む世論は高まる。70年談話などを契機に安倍首相の歴史認識を危ぶむ声が国際的に強まり、支持率と不支持率が逆転する展開になれば、政権もそう簡単に安保法制を通せません。
――ケンカを買った以上は、勝たなくてはいけませんね。
向こうは、なりふり構わず学者を潰しにかかっているのだから、戦うしかないですよ。私は論文を書くより国会前で演説する方が楽しい性格ですからね。学者は今、仲間内の議論より、社会に意見を発信し、権力と戦うべき時です。若い世代が発言し始めたことは心強いことです。
▽やまぐち・じろう 1958年、岡山県生まれ。法政大学法学部教授。東大法学部卒、同学部助手、北海道大教授などを経て2014年に現職。専門は政治過程論。現実政治への発言を続け、憲法に従った政治を取り戻そうと「立憲デモクラシーの会」を設立。近著に「徹底討論 日本の政治を変える」。
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