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左・安倍晋三公式サイトより/右・森喜朗公式サイトより
「民主党のせい」は嘘、新国立競技場は最初から安倍首相の親分・森喜朗の仕掛けだった
http://lite-ra.com/2015/07/post-1271.html
2015.07.11. リテラ
「自民党のせいじゃなくて民主党が悪い」──昨日、安倍晋三首相と下村博文文科相が、ついにこんな責任転嫁を。
とんでもないことになっている新国立競技場問題の話である。あらためていうと、現行案では2020年の五輪開幕までに完成しないのが濃厚。しかも、総工費は先日承認された2520億円でも足りず、一説には4000億円にまでのぼるという話も噴出してきた。このままでは「国家の威信をかけたプロジェクト」と呼ばれるこのハコモノがゴミバコ以下になってしまうことは確実だ。
たしかに新国立のデザインが決定したのは2012年の民主党政権下ではあったが、しかし、この問題を民主党のせいにするのはどう考えたってお門違いだろう。なぜならば、現在の事態は、民主党どころか、安倍首相の“ボス”、森喜朗がつくりだしたものだからである。
順を追って説明する前に、まず10日の下村文科相による記者会見での釈明を引用しよう。
「(当初の総工費の)1300億円がデザインする人(ザハ・ハディド氏)に伝わっていたか。値段は値段、デザインはデザインということならば、ずさんだったことになる」
ようするに「ザハ氏のデザインが諸悪の根元!」というのだ。いやいや、この人は総工費がつり上がっていくなかで、東京都に500億以上もの負担を要求したことをお忘れなのだろうか。舛添要一都知事からは説明不足を理由にむべなく断られたわけだが、これをたよりにしていた文科相の責任はどうなる。それこそ「ずさんだった」としか言いようがない。
次に、同日の安倍首相による国会答弁の内容だ。民主党・辻元清美議員から新国立計画の見直しを問われ、こう答えた。
「国際コンペをやると約束し、監修権等をザハさんに与えると決まったのが2012年11月、我々が政権につく前のことだ。事実として述べると、民主党政権時代に、ザハ案でいくということが決まり、オリンピックを誘致することが決まった」
つまり「ザハ案に決めたのは民主党政権下だったんだから自民党は知らん!」と。この安倍首相の答弁にすぐさまネットの安倍親衛隊が反応。「ブーメラン投げすぎも大概にしろや糞民主」などと騒いでいるわけだが、おいおい、ネトウヨたちは安倍首相が五輪招致の最終プレゼンでなんと言ったかすら覚えていないのか?
安倍首相は、この演説で例の福島原発「アンダーコントロール」発言をした後に、こう続けているのだ。
「他のどんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから、確かな財政措置に至るまで、2020年東京大会は、その確実な実行が確証されたものとなります」
独創的な競技場のデザインをアピールしたうえに、財源も含めて問題なし!──こんな大見得を切っておいて結果はコレである。今になって俺は知らんと、どの口が言うのだろうか。
そもそも、安倍首相らの民主党批判は、明らかにピントがずれている。今回の新国立デザインにおいて、ザハ氏の立場はデザイン監修にすぎず、実施までもっていく責任を持つのは最終的に政府。にもかかわらず、デザイン決定から今にいたる3年弱、政府はこんな事態になるまで自らの役割を放置してきたのだ。呆れるほかない。憲法は無茶苦茶な解釈改憲をするくせに、新国立の事業計画を「柔軟に」変更できなかったのはなぜなのか?
その原因は、やはり自民党と深く通じている。本サイトでも既報のとおり、現行案継続の背後には、森喜朗・元首相の影がある。
周知のように新国立競技場のプランは国民からの強い批判を受けて、2014年5月の段階で1625億円まで圧縮することになっていた。ところが、森首相が中心となって、ザハ案のまま進めることをゴリ押し。「価格についてはここまで圧縮され、私は妥当だと思う」などとでたらめな論理を駆使して、総工費を2520億円に増額してしまった。
いや、それどころではない。安倍首相や下村文科相が民主党に責任転嫁する根拠としてあげている2012年のザハ氏設計案の選定だが、これも民主党はほとんど関係がなく、事実上の責任者は森氏なのだ。
国立競技場の事業主は文科省所轄の独立行政法人・日本スポーツ振興センター(JSC)で、基本設計案にお墨付きを与えたのは、そのJSCが2012年に設置した「国立競技場将来構想有識者会議」。その有識者会議に、森氏は、JOC会長の竹田恆和氏、建築家の安藤忠雄氏、当時、都知事の石原慎太郎氏、さらには今回、五輪担当大臣になった遠藤利明議員などとともに、メンバーに名を連ねている。
有識者会議の初会合が行われたのは2012年3月6日。今の巨額予算の原因になっている「8万人収容」「開閉式の屋根」「可動式観客席の導入」等々の方針もこの有識者会議で決められた。
同年7月には国際コンペの実施を決定しており、ザハ案を採用したのが11月だ。森氏は、この間、ずっと有識者会議のメンバーとして決定にお墨付きを与えていた。
しかも、森氏は単にずっとメンバーとして名前を連ねていただけではない。国立競技場は、当初、東京が2016年の五輪に立候補したときには建て直す計画はなかった。ところが、日本ラグビー協会会長で、2019年ラグビーW杯誘致に動いた森元首相が、新しい国立競技場をW杯のメイン会場にしようと、2010年頃から新国立建設を画策し始めたのだ。
しかし、国民的人気のないラグビー単体ではそんな巨大プロジェクトは動かせない。そこで、森氏は2020年東京五輪招致とセットにすることを思いつく。
そのために、森氏は石原慎太郎都知事と「都が500億円を拠出する」という密約をかわす一方、プロジェクトを具体化するために国立競技場の事業主・JSCの人事に介入し始める。
2011年10月、河野一郎氏が突然、JSC理事長に就任するのだが、河野氏はラグビー協会の理事で、森氏の右腕といわれていた人物。さらに、JSCの施設建築ワーキンググループの事務責任者に文科省・山崎雅男参事官(当時)が抜擢されるが、これまた森氏の子飼い官僚だった。
そして、2012年3月、森氏も名前を連ねたJSCの「国立競技場将来構想有識者会議」は、ラグビーW杯メイン会場の条件を満たす「8万人収容」の基本計画をぶち上げた。ちなみに、五輪のメイン会場には収容人数の条件はない。
さらに安倍政権が誕生後、五輪招致に成功すると、安倍首相は森元首相は東京五輪組織委員会会長にゴリ押し、森氏の右腕である河野氏も同委員会の副会長に就いた。
現在、森氏は“五輪利権”の窓口となっているとも言われており、公式スポンサーの立場が喉から手が出るほど欲しい企業は、盛んに“森詣で”を行っているという。また、森氏の肝いりであるラグビーW杯は赤字確実とも言われており、その赤字分を五輪関係で集まった資金で補填する計画まで水面下で動きがあるらしい。
まさに、いつのまにか老害政治家の利権と化してしまった国立競技場と東京五輪だが、この森氏のやりたい放題を支えているのはもちろん、安倍首相だ。周知のように、安倍氏はかつての森派、清和会出身で、第二次森内閣で官房副長官に引き上げられた、いわば直系の子分だ。当然、“元ボス”である森氏の頼みに逆らえず、新国立計画においても、最大限にサポートしてきた。
安倍首相が民主党のせいにしているのは、明らかに責任逃れのごまかしである。自らの利権のために新国立競技場建設を立ち上げ、ザハ案を一貫してゴリ押ししてきた森元首相、そしてその私物化を支え、五輪の最終プレゼンで、この新国立を「他のどこにもないスタジアム」「確かな財政」と断言した安倍首相──。メディアはこの2人の責任を徹底追及する必要がある。
(宮島みつや)
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