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東京都のど真ん中にポッカリと穴が開いている〔PHOTO〕gettyimages
準備不足で発進、沈むのは確実 ニッポン劣化の象徴・新国立競技場は「現代の戦艦大和」だ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44090
2015年07月09日(木) 伊藤 博敏「ニュースの深層」 現代ビジネス
■世論調査では「計画見直しを」が8割超え
身勝手なギリシャを笑えない――。
これが、新国立競技場の建設を承認した有識者会議を傍聴した感想である。建設主体となる文部科学省管轄の日本スポーツ振興センター(JSC)は、7日、国立競技場将来構想有識者会議を開き、総額2520億円の実施設計が了承された。
国民は、これまでの五輪メーン会場の5〜8倍となる巨額工事費と、その数字を2転3転させた文科省=JSCの不誠実に呆れている。今月に入って『読売新聞』が実施した世論調査では、81%の人が「計画を見直すべきだ」と答え、「そうは思わない」の14%を圧倒的に上回った。
ところが、メンバー12名が出席した会議では、そうした国民の声がまるで届かないような議論に終始。口火を切った森喜朗・東京五輪組織委員会会長は、「これは国家プロジェクト。これからの日本の運動競技場の聖地にしよう」と、ぶち上げた。
否定的な見解を述べていた舛添要一・東京都知事が、「国の責任でしかるべきものを、きちっとつくっていただきたい」と、述べるにとどめ、国際オリンピック委員会(IOC)が五輪改革で進めるコスト削減策に逆行していることから、竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)会長が、「必ずしも満足できない」と述べつつも、「工期が間に合わないなら現行案で」と、認めると、後は、肯定的かつ積極的な意見が主流となった。
張富士夫・日本体育協会会長は、「2020年から先の50年の日本のスポーツを支える象徴。日本武道館のように憧れる施設になって欲しい」と述べ、小倉純二・日本サッカー協会名誉会長は、「8万人収容、開閉式屋根、可動式の観客席の常設は国際公約なので、守ってほしい」と注文した。
■国際公約を守るために、国民を裏切る
東京五輪を立派な施設で迎えたいと思うのは当然である。流線型の斬新なザハ・ハディド案が、五輪招致の決め手のひとつだったのも、小倉氏のいう3要件が国際公約であるのも事実である。
しかし、今回、初めて明かされた「巨大アーチで765億円増」を含め、斬新過ぎて想像以上に工費が膨らみ、それに追い打ちをかけるように資材と工賃が高騰、1300億円は計画を2割削減しても3000億円を超えてしまった。
2520億円は、開閉式屋根を20年大会後に先送り、電動の可動式座席1万5000席を仮設の簡易着脱式にするなど工夫を凝らした数字。それでも他の大会と比較して想像を絶する巨費で、国民もマスコミも「そんなものはいらない」といい、安上がりの代替案は幾つも用意されたのに、文科省=JSCは「決めたことだから」と突っ走り、有識者会議は「歴史的モニュメントにせよ!」と、煽ったのである。
このズレは、同時進行のギリシャ危機に近い。
財政が破綻し、欧州連合(EU)からの支援を受けるには、緊縮策を受け入れるしかないのに、「これ以上、何を切り詰めるのか」と開き直り、国民投票にかけ、「オヒ(ノー)」を突きつけた。
もちろん、借金を収入と考える国民性と働かない伝統を持つギリシャと、どんなモニュメントにするかに悩む新国立競技場を同列に論じるつもりはないが、外部からどう見られているかを気にすることなく、内向きの論理で突っ走っているところは同じだろう。
■まるで戦艦大和だ
有識者会議で、都倉俊一・日本著作権協会会長は、整備完成時(開閉式屋根の設置後)の収支見通しについて、「JSCは採算を低く見積もっているんじゃないか。今、コンサート会場が圧倒的に不足している」としたうえで、「世界のアーティストが憧れるような新しいシンボルになる」と、明るい見通しを示した。年間80日ものスポーツイベントを開催したうえで、芝に悪影響を及ぼすコンサートを年に12回も開くのは非現実的という専門家の指摘は耳に入っていないらしい。
馳浩・東京五輪推進議連事務局長は、「新国立競技場を中核にして、スポーツレガシーを残していかなくてはいけない。神宮外苑一体を特区構想として一体的に整備、活用すべきだろう」と、述べた。
委員たちが、予算が決まっていないなかで見切り発車し、東京都に500億円もの出費を求め、舛添都知事の拒否を受けながらも、さらなる施設の充実を求め、「将来、赤字を垂れ流す」という批判をかわすようにJSCの甘い収支を容認するのはなぜなのか。
私は前号で、著名建築家や大物政治家、談合の仕切り屋などが、撤退や修正や調整を出来なくなってしまっている状況を、「日本の劣化」として伝えたが、一方で、流れを決めるのは「現場の空気」だという日本の悪しき伝統にも触れなくてはならない。
新国立競技場問題について情報発信している建築エコノミストの森山高至氏は、新国立競技場を戦艦大和になぞらえて、当時の軍部や政府の人間たちが、愚行と知りつつも大鑑巨砲主義に流されていったのと同じだと指摘している。
■本当に完成するのか
この空気は、作家の山本七平氏が『空気の研究』で指摘したもので、流れのなかで決まるとその流れを止めることができない日本人の気質を表している。
有識者会議で、最初に空気を醸成したのは、ハディド案を採用した建築家の安藤忠雄氏と19年10月のラグビーワールド杯開催までに競技場を完成させたいという強い意欲を持つ森喜朗氏だった。批判を恐れたのか、安藤氏は有識者会議を欠席。森氏は前述のように、冒頭に発言して、引き続き流れをリードした。
有識者会議の了承を受け、JSCは屋根部分を竹中工務店、スタンド部分を大成建設と正式契約し、10月の着工を目指す。もはや後戻りはできないし、「いかに難しい工事でも、完成が遅れることはない」と、JSCの技術顧問は断言した。
戦艦大和は、戦闘機の護衛がないまま「特攻出撃もやむなし」という空気に流されて無謀な沖縄海上特攻作戦を行い、想定通りに敵機動部隊の集中砲火を浴びて撃沈、3000人近い命が奪われた。
ありえないとは思いつつ、空気に流されて建設される新国立競技場が、そんな結末を迎えないことを祈りたい。
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