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[創論]政府・沖縄 対立深まる基地問題
原点は市街の危険除去 官房長官 菅義偉氏
米軍普天間基地の移設を巡り政府と沖縄の対立が深刻だ。政府は名護市辺野古沿岸部への移設が「唯一の解決策」と強調。翁長雄志知事は前知事による埋め立て許可の撤回を近く表明する意向だ。歩み寄る余地はあるのか。沖縄基地負担軽減担当でもある菅義偉官房長官と、昨年の知事選で翁長氏を推した宮城篤実・前沖縄県嘉手納町長に聞いた。
――沖縄県の翁長雄志知事は名護市辺野古沖の埋め立て許可を撤回する意向です。法廷闘争になりますか。
「裁判とかはまだ考えていない。(仲井真弘多前知事から)埋め立て許可をもらい、調印式もした。日本は法治国家であり、行政には継続性がある」
――辺野古以外の選択肢を検討する考えはありますか。
「日米間で長く話し合いをして『ここだ』ということになった。日米同盟の抑止力の維持も考えたとき、辺野古への移設が唯一の解決策だ。そこが変わることはない」
「この問題はそもそも宜野湾市の市街地にある普天間基地の危険性を除去したいというのが原点だ。どうもそこが風化している気がする。翁長知事は県議のときも那覇市長のときも『県内移設』と明言していた。県議会で県内移設の決議をしたときに提案理由説明にも立っている」
――菅長官は県内移設に反対だった前知事を説得して翻意させました。翁長知事も説得できますか。
「もちろんそう思ってやるしかない。辺野古への移設が実現しないと、普天間基地がそのまま残ることになる。固定化は何としても避けたい」
――辺野古では昨年11月までの予定だった海底掘削調査がまだ終わっていません。
「具体的にいつまでとは言えない。台風が来たり、波が高いというのが一番大きい。『抗議活動にはできるだけ丁寧に警備に当たるように』と指示している」
――名護市は本体工事に必要な資材置き場の設置を認めない方針です。
「代替地を検討している。最初からそういうこともあるだろうと思っていた」
――沖縄県議会は埋め立て用の土砂の県外からの搬入を禁止する条例を制定しようとしています。
「辺野古だけでなく、那覇空港の第2滑走路の建設に支障を来すのは間違いない。県外から観光客を呼び込まないと沖縄経済の発展はない。7年かかるはずだった第2滑走路の建設を私が沖縄担当になってから5年10カ月に前倒しさせた。沖縄ではいろいろな施設がこのスケジュールに合わせて開業を準備している」
――普天間の使用は2019年までと公約しました。
「(14年2月から)5年間で運用停止すると言ったが、沖縄県が協力してくれることが前提だ」
――沖縄との信頼関係が失われている感じがします。
「いままで政府は沖縄にいろいろ約束したが、結局は米軍基地を動かすことはできなかった。安倍政権は基地負担の軽減を徹底してやる。できることはすべてやる。現にやっている。安倍晋三首相は先の訪米の際の首脳会談で基地の話をいちばん最初にした」
「普天間基地には3つの役割があった。ひとつは空中給油機の駐留場所。昨年、山口県の岩国基地に15機すべて移させた。2つ目は空母艦載機などの緊急着陸訓練。これは九州に移す。発表できる段階に来ている。3つ目はオスプレイの駐留だが、訓練は本土でさせる」
――本土の自治体との調整は大丈夫ですか。
「自信を持っている。現に空中給油機は山口県に移ったし、オスプレイの整備工場は千葉県が受け入れてもよいと言っている」
「米軍施設の返還も4月に西普天間住宅地区が返還された。宜野湾市でこれほど大規模な返還は初めてだ。実績を示していけば、真剣に取り組んでいることが沖縄の人々に理解されていくと思う」
――沖縄振興予算は基地があることへの見返りですか。
「バーターではないと明快に言っている。ただ、基地の跡地開発に絡んで連動している部分があるのは事実だ。西普天間地区は国際医療拠点にするので、予算が一挙につくとかはある」
――15年度の沖縄関連予算は前年度比マイナスでした。
「前年度は繰り越しが多かった。使い切れていない。安倍首相は閣議で3000億円の振興費を確保すると明言した。そこはしっかりと対応していく」
――沖縄に関係する閣僚は複数います。
「私が責任を持ってやる」
――沖縄の地元2紙は偏向していると思いますか。
「日本には報道の自由がある。自由がある中でそれぞれの新聞が考えてやるのではないか。編集の自由もあるわけだから。それ以上のことには踏み込まない」
すが・よしひで 法政大卒。議員秘書、横浜市議を経て衆院当選7回。総務相、自民党幹事長代行などを経て現職。66歳
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移設反対が知事の公約 前沖縄県嘉手納町長 宮城篤実氏
――普天間基地の移設を巡る国と県の対立が深刻です。
「翁長雄志知事は昨年の知事選で『県内移設に反対』と公約して当選した。そこが変わってはいけない。政治姿勢として移設反対を言い続けるのは当然だ。自民党には『国と知事が対話を重ねる中で、状況は変化する』という人がいる。そう期待したいのはわかるが、そうはならない」
――基地反対の声が以前より高まったのはなぜですか。
「沖縄で長年、基地に反対してきたのは自治体職員や教職員など革新系がほとんど。つまり生活が安定している人たちだった。それがいまではオール沖縄になりつつある。年金など社会保障が充実してきて、誰でも最低限は食べていけるようになったからだ。人間は貧乏暮らしが続くと見識まで貧しくなる。いまバスを連ねて辺野古に座り込みに行くのは年金受給者が多い。保守も革新もない。戦争体験を踏まえて素朴に基地に反対している。だから、この闘争は長く続く。そうした時代の変化を読み取れないと、いまの沖縄を理解できない」
「反対運動のための基金への全国からの寄付が3.5億円を超えた。国家というと普通は首相とか政府とかいう話になるが、庶民だって国家を形成している。その人たちが一地方の苦しみのために身銭を切ってくれる。日本はありがたい国家だ」
――仲井真弘多前知事は埋め立てを許可する見返りに振興予算を増額させました。
「わずかな増額で『よい正月を迎えることができる』と態度を変えた。この男は終わったと思ったし、事実そうなった。昨年の知事選のとき、翁長陣営の総決起大会で『ひとりだけのよい正月でなく、ウマンチュ(沖縄人)みんなのよい正月にしよう』とあいさつしたら、万雷の拍手だった。あの選挙は、基地どうのこうの以前の戦いだった」
――政府と対立し続けるのですか。
「もちろん政府ともっと話をした方がよい。にらみ合いをずっと続けるのは、県民にとってよいことではない。対話をすれば情がつながり、互いの立場を理解できるようになるはずだ。正月にあった知事就任祝賀会で『しょっちゅう東京に行くな。いずれ国の方が来るから、悠然と迎えればよい』とは助言した。沖縄に米軍基地を置くことが日米安保体制にとって本当に重要ならば、お願いするのは国の側だ。事実、4月に菅義偉官房長官が会いに来た」
――辺野古への移設に反対なのか、それ以上を求めているのかがよくわかりません。
「いまの国際情勢で『米軍基地はすぐ全部なくせ』なんて言うのは荒唐無稽だ。これだけ中国が台頭する中で、米国だって対峙するための拠点はほしいだろう。そこまで否定するのは世界を知らなすぎる。日本国民全体として判断して沖縄に『この程度は何とかしてほしい。その負担に応えて支援をしましょう』ということで、何らかの妥協点が示されるならば、基地をゼロにしろと言うつもりはない」
――移設反対を続けると振興予算を減らされませんか。
「兵糧攻めなんかできるわけがない。国民から国が非難されるだけだ」
――沖縄には酒税の軽減など本土復帰特別措置が認められています。
「なくなることを覚悟しなくてはならない。基地で『本土と同じに』と訴えるからには、ほかのことも本土と同じでいかなくてはならない」
――知事は訪米して移設反対を訴えました。
「自分で米軍にパイプを築いてから行かないと効果はない。私も訪米したことがあるが、外務省は『自治体に外交権はない』と協力してくれなかった。嘉手納基地の司令官に紹介してもらった国防総省高官は『交渉はしないが、要望は聞く』と言った。嘉手納基地の駐機場の位置をずらしてほしいと頼んだ。近く実現する。国道の拡張のための土地の返還も国土交通省は何もしてくれないので、私が米政府に言った。那覇市に米軍施設は那覇軍港しかないので、そこの市長だった翁長知事はそうした実務的な経験がまだ乏しい」
――辺野古への移設を阻止できると思いますか。
「相手は国家権力だ。辺野古での工事が完了し、日米で使用を開始するとなったときにそれを止める方法は県にはない。しかし、それで翁長知事が負けたことになるとは思わない。知事は権限の範囲内で精いっぱいやればよい」
みやぎ・とくじつ 早稲田大卒。「基地の町」である沖縄県嘉手納町の町長を5期20年務めた。翁長知事の後援会長。79歳
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〈聞き手から〉本土に置けるものは本土に
沖縄県の副知事を務めた高良倉吉琉球大名誉教授によると、いまの沖縄世論は複層的なのだそうだ。以前は保守支持・日米安保条約賛成・米軍基地容認という軸と、革新支持・安保反対・基地反対という軸に明確に区分できた。いまは保守でも「沖縄の基地負担は重すぎる」と思う人が出てきた。この層が翁長県政誕生の原動力となった。
宮城篤実氏はその理由を「県民が貧しくなくなったからだ」と説明した。観光業の発展によって沖縄経済に占める基地の寄与が小さくなったことも、基地不要論を加速している感がある。政府の沖縄振興策が成功したがゆえに、いまの対立が生じたのだとしたら、何とも皮肉だ。
この状況を打開するには沖縄にだけ負担を強いるのではないという姿勢を本土側が示すことが大事だ。いまの安保環境の中で、日本の防衛が西方重視にならざるを得ないことがわからない沖縄県民だとは思わない。本土にあって困らないものは本土に置く。それ以外に道はない。
(編集委員 大石格)
[日経新聞7月5日朝刊P.9]
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