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会談を終え、ホテルを出る安倍晋三首相(左)と維新の党最高顧問の橋下徹大阪市長。橋下氏はこの会談を経て国政に関する発信を強め、政界引退表明を吹き飛ばすほどの存在感を示すようになっていった=6月14日夜、東京都港区
【関西の議論】「死んでねえっちゅうの!!」 橋下氏死に体≠ヌころか「完全復帰」 自民ショック「官邸が仙豆を与えた」
http://www.sankei.com/west/news/150707/wst1507070008-n1.html
2015.7.7 11:00 産経新聞
政治家が「引退」を公言すれば、死に体≠ニなって影響力を失うのが政界の常。しかし、12月の任期満了で政治家を引退すると表明した橋下徹維新の党最高顧問(大阪市長)には当てはまらないようだ。「憲法改正」への思いを共有する安倍晋三首相との「6月会談」を経て瞬く間に存在感を強め、後援会による最後≠フ政治資金パーティーでは、旧日本維新の会でともに共同代表を務めたかつての盟友、石原慎太郎氏から国政進出を熱烈に求められた。橋下氏は「早く民間人に戻りたい」とかわすが、ツイッターやメディアの報道を通じ、衆院で審議中の安全保障関連法案への持論を展開し、党内議論を完全に主導。さらに国会議員が地方分権などの結党の精神を忘れているとして、地域政党「大阪維新の会」の離脱もあり得ると揺さぶりをかけている。橋下氏が政界を引退すれば、影響力の低下が懸念される大阪系議員の間では、引退後も党の最高顧問に止まるよう求める声は根強い。鳴り止まない「橋下劇場」のアンコールに、橋下氏はどんな結論を下すだろうか。
■首相からのラブコール
「死んでねえっちゅうの!!」。6月19日夜。橋下氏の関西人らしい突っ込み≠ノ、大阪市内のホテルの政治資金パーティー会場を埋めた約1500人の客がどっと沸いたという。
橋下氏が話題にしたのは、産経新聞6月17日付朝刊の社会面(大阪本社版)に掲載された自民党の大阪市議の「息を吹き返してしまった」というコメント。記事は、5月の住民投票で「大阪都構想」が頓挫して以降、鳴りを潜めていた橋下氏が、6月14日の安倍首相との面会を機に活動を活発化させたことを伝えていた。
パーティーでは、石原慎太郎氏が「橋下徹を国政の場に押し上げてほしい」と熱弁をふるったが、安倍首相もまた、橋下氏の政治家引退を惜しむ1人だ。
「(国民の)期待感はあるんじゃないの?」
6月14日に都内のホテルで行われた橋下氏との会談で、安倍首相は国政への転身を促したとされる。
安倍首相は、「憲法改正は絶対に必要」と語る橋下氏に目をかけてきた。橋下氏が提唱した都構想に理解を示し、「二重行政を解消するのは当然」と明言したこともある。露骨な肩入れに、都構想に反対してきた自民党大阪府連からは「官邸のやり方はあんまりだ。絶対に許せない」と反発の声が上がるほどだった。
■発信強化…ターゲットは維新
安倍首相のラブコールに気分が高揚したのだろうか。首相との会談直前、いったんは最高顧問を辞する意向を伝えた維新の党の松野頼久代表から「発言は自由」との確約を得て慰留されたこともあり、橋下氏は国政に関する発信を強めていく。
ターゲットは、身内のはずの維新の党。その突破力は、パーティーでの「死んでねえ」宣言の通り、全く衰えていなかった。
衆院で審議中の安全保障関連法案への維新の党の対案をめぐり、「こんなものは対案でもなんでもない。政府与党案に少し難癖を付けた程度」と激しく批判。いったんはキャンセルされた大阪での勉強会を開催させ、対案をまとめた小野次郎参院議員らを相手に疑問を次々にぶつけた。
■他国艦船防護へ論点整理
6月20日の勉強会終了後、松野氏は「微修正で済んだ」と平静を装ったが、出席者によると実態は橋下氏が終始、議論をリードしたという。
政府与党案を前提に作られた維新の対案を覆し、現行憲法の従来通りの解釈の枠内で日本の防衛に資する他国の艦船の防護が可能になる独自の視点を入れた維新案がまとまるよう論点を整理していった。
さらには維新案の国会提出に慎重な松野氏の尻をたたくかのように、6月25日の定例会見で「国会に提出しなければならない」と強く主張。「独自案を出せば、維新が答弁者として与党から質問を受ける。このときに維新の理念や思想がきちんと出れば、これだけメディアが注目しているんだから、維新が大きく伸びるチャンスだ」と党勢拡大の戦略に位置づけていることを明らかにした。
■代表選にもアイデア
秋にも行われる維新の党の代表選を見据えた党規約の改正でも執行部に不満をぶつけた。
国会議員の1票が地方議員の5票に相当するように格差を付ける不平等改正≠フ議論が進んでいたが、「リーダーを国民1人ひとりが直接選ぶ首相公選制を掲げる維新の党の理念を踏まえていない」と牽制(けんせい)。これまで通り、国会議員と地方議員が1対1で平等となるよう松野氏に再考を促した。
代表戦の進め方についても、米国の大統領予備選を念頭に、全国を5〜6ブロック程度に分けて、各地で日程をずらして公開討論会と党員投票を行う方式で選挙戦を盛り上げ、「最後は沖縄で終わる」というアイデアを披露した。
■沖縄でも存在感 どよめき、拍手が…
沖縄に対する橋下氏の思い入れは深いようだ。
70年前に住民を巻き込んだ先の大戦の地上戦が終結した6月23日、同県糸満市の平和祈念公園で開かれた沖縄全戦没者追悼式に盟友の松井一郎維新の党顧問(大阪府知事)らとそろって出席した。
戦没者への弔意を表す黒いかりゆしを着た橋下氏が姿をみせると、厳かな雰囲気に包まれていた会場にどよめきと拍手が起きた。安倍首相やキャロライン・ケネディ駐日米大使をはじめ、国内外の要人も参列していたが、橋下氏の存在感は際立っていた。
橋下氏にとって、沖縄は政治的には苦い記憶が残る地だ。維新が国政進出を果たした後の平成25年、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)を視察した際に、米軍兵士による少女暴行事件などを念頭に「もっと日本の風俗業を活用してほしい」と失言。国内外から強い批判を浴び、党勢が低迷する一因となった。
その沖縄で、なぜ拍手が起きたのか。
参列していた糸満市の学校職員の女性(47)は「地元の政治家ですら、視察したことがない人もいる普天間を実際に訪ね、基地問題の解決に関心を持ってくれているのです。ありがたいことです」と理由を明かした。
橋下氏の政治姿勢に好意的な意見もあった。同市の無職の男性(70)は「遠回しの言い方をせずにはっきりと言ってくれるところが良い。今回の引退表明も潔さを感じた」と褒めちぎった。
■「党離脱準備」発言で執行部牽制
政治家としての引退を表明したにもかかわらず、衰える気配のない橋下氏の人気と存在感。7月4日夜に大阪市内で開かれた地域政党「大阪維新の会」の全体会議では、橋下氏は地方を軽視した維新の党執行部の党運営に対する不信感を背景に、党所属の国会議員を「地方分権などの維新の精神を忘れている」と批判。出席した大阪維新所属の大阪府議や大阪・堺両市議、府内選出の国会議員ら約100人に「いつでも自立できるよう準備しておくように」と呼びかけ、執行部を強烈に牽制した。
12月18日の大阪市長退任まで半年を切る中、府内選出の国会議員の間では「たとえ政治家を引退しても、民間人の最高顧問として維新に力を与えてほしい」と熱望する声は強い。
大阪系議員は、党の創業者で「顔」でもある橋下氏の存在を背景に、党内で一定の影響力を保持してきた側面も強いだけに、その願いは切実だろう。
一方、地元・大阪で長年にわたり対立してきた自民府連には、橋下氏が復活の兆しをみせていることに落胆し、安倍首相との会談が復活のきっかけを与えたとみて、官邸への不満を募らせる向きが少なくない。
ある大阪市議は、人気漫画「ドラゴンボール」で主人公の孫悟空たちが体力を回復させるために使うアイテムに例え、忌々しそうにつぶやいた。
「官邸が橋下氏に仙豆(せんず)を与えてしまった」
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