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『ニューズウィーク日本版』2015年7月7日号P.20に掲載された記事を読むと、日本では歴史の針が80年代からほとんど動いていないようだ。
90年から現在に至るまで名目GDPが増加していない歴史的現実を考えると、さもありなんと言えるのだが...
米国の調査機関が行った世論調査の「中国が米国を追い越し世界一の大国になるか?」という問いに対し、
日本では77%が追い越さない(追い越すは20%)と回答
米国の追い越さない48%(追い越す46%)と較べて、日本人が抱く“米国信仰”の強さが窺い知れる結果になっている。
(14年に行われた米調査機関ピュー・リサーチ・センターが20カ国の世論調査:全体の結果は、「中国が米国の超大国の座に取って代わる」「すでに取って代わった」との回答が「取って代わらない」との回答を20%近く上回った。両者が拮抗していた08年と比べると、米中逆転が世界の共通認識になりつつある。参照:日経新聞「米国の強さと課題(9) 2つの超大国 並び立つか 」)
「中国が米国を追い越し世界一の大国になるか?」という問いについては、大国とは何かという規定が重要だが、「経済規模とその経済活動が世界(他の国々)に及ぼす影響力」・「軍事力も考慮するなかで国際政治に及ぼす影響力」を主要な基準として考えると、21世紀の前半で中国が米国を追い越すことは間違いないだろう。
単純に経済規模だけを考えれば、あと10年ほどで購買力平価基準だけではなくドルベースでも中国が米国を追い越す。
米国は、近代欧州の価値観や人材を頼りに世界一の大国の座を維持してきた。
中国は、資質的にも、歴史的に大国として生きる“知恵”や“手法”を養ってきたし、2000年以上も前に政教分離を成し遂げた“合理主義的思考”も身に付けている。それゆえ、統治者の民族的基盤が変わっても“中国であり続けた”と言える。
中国は、近代史なかの150年ほどのあいだ“落伍者”であったに過ぎない。
(欧米のリバタリアンはこの点で中国支配層を高く評価:普通選挙に代表される民主制は大国になる主要条件ではない)
だからといって、米国や中国といった大国に媚びを売った方がいいとは思わない。また、大国が良いとか大国になるべきだとも思っていない。
支配層にとっては大国であることに心地よさを覚えるかも知れないが、一般国民にとっては、米国の戦後史を思い返せばわかるように大国の国民であることはそれほど望ましいものではない。
「中国が米国を追い越し世界一の大国になるか?」という問いに対する答えは、ロジカルな判断で出てくるものがある一方、人々が持つ願望や“信仰”に強く影響を受けて出てきたものもある。
南シナ海の領有権問題で中国と争っているフィリピン(追い越さない:65%)やベトナム(追い越さない:67%)の結果や、戦後冷戦構造の中で米国を追い抜こうとして果たせなかったソ連の後継国家ロシアの“追い越す”という答えが西欧諸国のそれより低いレベルにとどまっているのもなんとなく気持ちがわかるというものだ。
安倍政権が米国に準じる同盟国と明示したオーストラリアでの結果は、「追い抜かない:27%・追い抜く:66%」となっており、西欧諸国に近い見方をしている。
(韓国は「追い抜かない:40%・追い抜く:59%」:防衛問題もあるため戦後世界構造に依拠した意識の残滓をそれなりに強く持ちながらも、現実の経済関係のなかで中国よりの意識が強まっていることがわかる)
西欧諸国の人々は、自国の近代史や大英帝国の興亡を生々しく見てきているので、中国が米国を追い抜いて世界一の大国になることも、“それは自然な歴史の流れ”とクールに受け止めていると思われる。(欧米の政治的支配層は自国の隆盛にそれほどこだわっているわけではない)
19世紀の欧州で米国が世界一の大国になるとそれほど強く予測されていたわけではない。現在の米国と中国の関係が当時の英国と米国の関係に近いとも言えるし、ドイツが世界一の大国になる芽もあった時代である。
日本人の“米国信仰”の背景には、米国が主導した冷戦を含む「戦後世界構造」のなかで驚異的な経済成長を遂げ世界第2位の経済大国にまで躍進した“成功体験”があるのかもしれない。
また、近代史のなかで育まれた中国観(遅れた価値観や危ない政治思想で支配されている図体だけ大きな国家)と昨今の中国台頭と日中角逐が、中国には世界でのさばってもらいたくないという気持ちを醸成している可能性もある。
政府やメディアの問題が大きいと思っているが、中国の動向については冷静にかつ歴史的に見ていかなければならない。
南シナ海領有権問題が顕著だが、私に言わせれば、中国がそうしなければならない理由もわかるが、中国共産党は南シナ海領有権問題について抑制的に振る舞っている。
理非を明確にせずただ煽るような一方的な「中国悪」論は、戦前の「悪いのは中国」・「悪いのは米英」という政府やメディアの煽りが国民を戦争へと前のめりにさせていった状況を思い起こさせるものである。
[中国が米国を追い越し世界一の大国になるか?]
(単位%)No:Yes
アメリカ:48:46
中国:16:67
日本:77:20
(アジア諸国)
韓国:40:59
インド:33:37
パキスタン:19:53
マレーシア:36:45
インドネシア:40:32
フィリピン:65:25
ベトナム:67:18
(欧州諸国)
フランス:34:66
スペイン:34:60
イギリス:35:59
ドイツ:37:59
イタリア:36:57
ポーランド:34:46
ロシア:35:44
(オセアニア)
豪州:27:66
(中東諸国)
イスラエル:34:56
パレスチナ:39:50
トルコ:33:46
(中南米諸国)
アルゼンチン:32:56
メキシコ:43:48
ブラジル:56:34
(アフリカ諸国)
タンザニア:32:48
ケニア:44:48
エチオピア:28:46
南アフリカ:33:40
ウガンダ:46:34
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『ニューズウィーク日本版』2015−7・7
P.20
「アジアのお騒がせ大国が世界で求心力を増す理由
人権蹂躙国家としての一面もありつつ、政治経済面で好意的な印象が強くなっている中国。世界一の超大国として君臨するのも時間の問題か
世界中の多くの人々が将来、中国がアメリカにとって代わり世界一の超大国になると考えている―そんな現状が、米大手世論調査機関ビュー・リサーチセンターの調査で明らかになった。調査対象の40カ国27カ国で、中国が世界一の国になるという意見が大勢を占めた。
サイバー攻撃の増加や南シナ海地域での周辺諸国との衝突が国際的な関心を集める中国だが、その求心力は今やアメリカに迫る勢いだという。
全世界で中国に封ずる好意的な見方も強まっている。昨年から今年にかけ、35カ国で中国に好意的な人の比率が増え、否定的な人は減っている。
習近平国家主席の下、中国は世界をリードする国の1つたなるべく努力を続けている。アメリカにはかなわないものの、中国は貿易、援助、投資、そしてソフトパワーを大規模に展開し世界への影響力を増してきた。IMF(国際通貨基金)や世界銀行に対抗する金融機関としてAIIB(アジアインフラ投資銀行)を提案したのも中国だ。
この4月、イエメン紛争で中国軍が外国人を救助した件を中国の国営メディアは大々的に報じた。その目的は2つ。人道面での責任を果たすこと、そして拡大する中国軍の能力を示すことだ。それと同様に、中国は自ら推進する南シナ海の係争地域での埋め立て作業が、人道的かつ地域の安定保持を目的にすると主張している。フィリピンやベトナムなど周辺国は強く反論しているが。
今回の調査を見る限り、中国の国際的な印象を改善しようとする習政権の計画は一定の効果を生んでいる。調査対象となった国々では、平均すると国民の約55%が中国に好意的だ。特に顕著なのはアフリカと中南米。中国が経済協力に乗り出し、交通インフラや石油のような一次産品の生産に多額の投資をしている地域だ。
だが、人権となると話は違う。39カ国で平均45%の人々が、中国政府は個人の自由を尊重していないと考えている。名実共に世界一の国になるには、人権蹂躙国家という印象の改善も欠かせないだろう。
ミシェル・フロルクルス」
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