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6月23日の沖縄戦70年「慰霊の日」 の追悼式に参列した安倍晋三首相(写真:アフロ)
自民党若手が開く「報道圧力」勉強会の真相 企業と法制局にも圧力
http://toyokeizai.net/articles/-/75916
2015年07月07日 AERA編集部 東洋経済
安倍総裁再選へ向けた旗揚げの「勉強会」が、ふたを開けると「大放談会」に。メディアも企業も内閣法制局も、安倍政権の統制圧力にさらされている。
「つぶす」
沖縄の新聞社に勤める中堅のA記者は、この言葉を再び耳にしようとは思いもよらなかった。6月25日午後に自民党本部で開かれた私的勉強会の「文化芸術懇話会」。講師に招かれた作家、百田尚樹氏が、こう言い放ったのだ。
「あの二つの新聞社に、本当にもう私、目の敵にされて。本当に沖縄の二つの新聞社は絶対つぶさなあかんのですけど、沖縄県人がどう目を覚ますか」
A記者は、10年ほど前の東京・高輪での夜を思い出した。深夜11時ごろだった。防衛庁長官を議員宿舎で夜回り取材していた。普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、計画で想定されている海域での海草などの「被度」の想定が、実態よりも小さく見積もられているのではないか、と質問した。すると、この長官はすごんだ。
「そんなことを書けば、おたくをつぶすぞ」
大臣の言葉とは思えなかった。そして、A記者が言うように被度は実際より小さく見積もられていて、後日、修正された。
「政権に都合の悪いことを書くと、つぶしてやるという発想がショックでした」(A記者)
この長官は引退しており、安倍氏とは近い関係ではなかったが、自民党の体質がそこからかえって浮かび上がる。
今回、つぶす発言以上に失望したのは、会合後、百田氏がツイッターに書いた「ほとんど読んでいない」という言葉。A記者は言う。
「私たちは意見の異なる産経新聞も一生懸命読んでいます。でも、百田さんや政治家は沖縄の新聞を読まずに批判する。沖縄はこんなものだと、決めつけているからなんですね」
■私的勉強会でも記者に案内状
勉強会での沖縄メディア批判や言論統制を期待するような主張が、安保法制法案の衆院採決を今月中旬にも控えた自民党を揺さぶっている。
勉強会に出席した国会議員37人に取材を依頼した。取材拒否を命じる党の指示はなかったようだが、ほとんどから「日程が合わない」「途中で帰ったので分からない」などを理由に断られるか、返答がなかった。
唯一、40代のB衆院議員が、匿名を条件に取材に応じ、こう明かした。
「会の本来の目的は(秋の総裁選での)安倍再選の雰囲気づくりだった」
発起人は党青年局長の木原稔衆院議員だが、背後の「プランナー」は会合にも出席していた安倍首相の側近である萩生田光一・党総裁特別補佐と加藤勝信官房副長官だったという。
同じ日に予定されていた「反安倍」議員の勉強会を中止させ、同じ週に放送される討論番組「朝まで生テレビ!」への議員の出演も、党本部の要請で出席を見送らせたとも伝えられている。万全の準備で臨んだ安倍応援の会合のはずだった。
私的勉強会といいながら、自民党を担当する記者でつくる「平河クラブ」に開催の案内が届いた。しかも、「終了後に、代表の木原稔より記者ブリーフィングをさせていただきます」とある。ひっそり勉強する会ではないことは、誰の目にも明らか。期待通り、大勢のメディアが集まり、会合の最中には「壁耳」と呼ばれる取材が行われた。
「盗み聞き」という批判もあるが、政党と記者の暗黙の合意のもと長年行われてきた取材方法で、今回だけを問題視するのは筋違いというものだ。
「若手を煽って再選の雰囲気を盛り上げたかった。メディア批判や沖縄批判は会の趣旨じゃなかったが、百田さんに引きずられた」(B議員)
だが、いささか煽りすぎてしまったようだ。勉強会では、実際に報道されている以上に激しい言葉が飛び交った。
「(沖縄)タイムス、(琉球)新報の牙城の中で、沖縄の世論、ゆがみをどう正しい方向に持っていくか。(中略)沖縄はもう左翼勢力に乗っ取られちゃってる」
「朝日、毎日、東京新聞を読むと、もう血圧が上がって、どうしようもない。あれに騙されているんですよ、国民は」
「青年会議所も経団連も商工会議所も、子どもたちに悪影響を与えている番組ワースト10とか発表して、これに広告を出している企業を列挙すべきだ」
集団的自衛権の行使容認を柱とした安保法案を「憲法違反だ」と指摘する歴代の内閣法制局長官に絡めて、内閣法制局をこきおろす発言も飛び出した。
「法制局は法の番人とか言われているが、内閣法制局で法律家の資格を持っているのは6人だけ。言ったら、80人の医者のなかで免許を持っているのが6人だけの病院なんですよ。そういう人たちの解釈をずっと持ち続けないといけないのか」
よく分からない例えだ。最後に百田氏がこう締めくくった。
「政治家は言葉が大事。戦争と愛については何をしても許されるという部分はあるんです。その目的のためには、負の部分はネグったらええんです、はい。学術論文ではないのだから、いかに心に届くかです」
会場は割れんばかりの大拍手に包まれた。しかし、会合での発言が「報道への威圧だ」との批判にさらされたのは、ご存じの通り。問題を沈静化させるため、自民党は素早く発起人の木原氏を1年間の役職停止処分にし、問題発言を行った3人の議員も厳重注意にした。
■執行部に批判も 支持下落の危機
もっとも、この処分に対し、党内では不満が広がっている。「青年局主催ではなく、私的な勉強会なんだから、どうして青年局長を党として処分できるの? 国会に迷惑をかけたというなら現職の村上誠一郎や憲法調査会を開いた船田元、いろいろ文句を言っているOBの山崎拓、古賀誠たちはどうして処分しないのか。執行部はダブルスタンダードですよ」(勉強会に出ていない自民党若手議員)
党内政治に精通する自民党のベテラン議員秘書は、こんな見通しを示す。
「いまの安倍政権の支持率は平均すると40%台。安保法案を衆参で2度強行採決して5%ずつ落ちても3割台を維持できる計算だったが、この騒動でもし5%を失えば危険水域の支持率2割台。そうなると秋の総裁選も無風ではすまなくなる。石破茂さん、野田聖子さんの動きをウォッチしないといけない」
安倍政権はメディアとの関係において、硬軟取り混ぜた巧妙な対策を取っている。
今年4月、「週刊ポスト」が、高市早苗総務相の実弟である秘書官が関わる疑惑を特報した。三重県の農業法人が政府系金融機関から受けた融資のうち、1億円が使途不明になっており、高市氏の秘書官が金策に奔走した、という内容だ。
事情を知る関係者によると、記事を仕上げる校了日の2、3日前に同誌記者の携帯電話が鳴るようになった。相手は内閣情報調査室(内調)だった。
「(報道する内容は)あの話ですか」「いつ出るんですか」
掲載内容に関する探りが入った。政府側の「援軍」は、意外なところからも現れた。
「本当に書くんですか」「根も葉もない話じゃないですか」
官邸詰めの全国紙政治部記者からだった。政府中枢の情報を握る官邸が、記者をコントロールして、自らは手を汚すことなく、都合の悪い報道に「圧力」をかける。そんな巧妙な仕掛けが垣間見えるのだ。
高市氏の秘書官は疑惑が報じられた後、発行元の小学館を相手取り、損害賠償などを求める訴えを東京地裁に起こした。
「気に入らない報道を訴えるのが安倍政権の特徴。裁判で勝つことが目的ではない。報道はウソだと世の中にアピールしたいんです」(同関係者)
■巧みな報道管理 策士、策に溺れる
報道をコントロールしたい──そんなメディア観が透けて見える安倍政権。原体験は、1年間の短命に終わった第1次政権の失敗にあるようだ。第1次安倍政権は、閣僚の失態などを大きく報じられ、世論の支持をみるみる失った。
TBSの元キャスターで、民主党政権時代に内閣広報室審議官を務めた下村健一氏は、13年に行った安倍首相インタビューを振り返って、こう話す。
「安倍氏はかつて、祖父の岸信介元首相から『もう一度総理をやれたら、こうやったのに』と聞かされたそうです。その言葉があったから、一度辞めてジ・エンドではなく、『次やるときはどうするか』とイメージトレーニングしていたと話していました」
雌伏のときに研ぎ澄まされたのは、経済政策だけでなく、メディア管理術も含まれていたのだろう。現在、内閣では菅義偉官房長官や加藤、世耕弘成の両官房副長官、党では萩生田氏や棚橋泰文幹事長代理らの安倍側近が、メディア対策を担う。
「安倍政権のメディア対策は、支配や操縦といったそしりさえも受けない、洗練された部分が巧み。メディア同士が牽制し、自主規制するように仕向ける。権力は使わず、ちらつかせるだけでいいんです」(下村氏)
だが、安倍首相や側近たちは「洗練」されたかもしれないが、末端の安倍応援団までは教育が及ばなかったようである。
勉強会の設立趣意書には、こんな文言がある。
「政治家に教養と創造力が求められるならば、すなわちそれは、芸術家と共通する素養」
政治家と芸術家を同一視したのは、ナチスのアドルフ・ヒトラーだった。よもやこの文章がヒトラーの思想をもとに書かれたとは思いたくないが、今回の勉強会が芸術とはほど遠い内容だったことは、ヒトラーもうなずくのではないだろうか。
(編集部:野嶋剛、宮下直之)
※AERA 2015年7月13日号
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