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『ニューズウィーク日本版』2015−6・30
P.18
※ 河東哲夫氏は元外務省官僚でウズベキスタン・タジキスタン駐在大使の経歴
「国交正常化から半世紀 「反日」韓国との付き合い方
ポピュリズムと権威主義ばかりの隣国に対して見切りをつけてはならないこれだけの理由
河東哲夫(本誌コラムニスト)
日韓基本条約調印から50年。この間、韓国は躍進して自信を付けるにつれ、戦前35年間にわたる併合のしこりを克服し、日本との交流を拡大してきた。
しかし日本と同様、韓国も首脳の一存で政治は動かない。市民運動の盛んな韓国では反日機運に火が付くと、反日でない識者も発言を控えるなど、日韓関係は前進と後退の波を繰り返す。02年ワールドカップ(W杯)共催で盛り上がった日韓関係は、その後盧武鉉、李明博政権それぞれの末期に反日の波が起き、朴槿恵政権もその渦中にある。
近年の日韓関係冷却の発端は、11年に韓国の憲法裁判所が、元慰安婦の鹿償請求権問題で韓国政府が具体的な措置を講じてこなかったのは違憲、との判断を示したことにある。日韓は基本条約と同時に締結した「財産及び請求権に関する協定」で相互に請求権を放棄したが、これが違憲と判断されたに等しい。社会の中枢を担うようになっていた「486世代」(80年代に民主化運動をして弾圧された者が多い)の、戦後の外交見直しを求める声に影響されたものであろう。
韓国は市民運動が強く、世論は大きな力を有する。そこで李明博政権は慰安婦補償問題について「解決」を野田政権に求め、拒否されると大統領自身が竹島を訪問して世論の圧力をかわす挙に出た。これを受け継いだ朴槿恵大統領は世論に極度に敏感な上、民主化運動を徹底的に弾圧しつつ日本からの支援を引き出して経済を建設した朴正煕大統領の娘でもあるだけ、余計に日本に甘くするわけにいかない。
「永世犯罪国」のレッテル
95年に発足した「女性のためのアジア平和国民基金」で集めた「償い金」を元慰安婦に渡そうとした日本としては、この間題の再検討を求められても釈然としない(日本の政府予算を用いると、「財産及び請求権に関する協定」を自ら骨抜きにしてしまうので、民問募金という形を取った)。
無理して譲ってみたところで、韓国は新しい要求を掲げてくる。今様のポピュリズム政治と並行して昔ながらの権威主義、つまり「格」で人間の上下関係を固定する思考がいまだ強い。社会から指弾される罪を犯した者の家系は、長年にわたり差別される。それは国際関係にも及んでいて、日本をいわば「永世犯罪国」に仕立てて低位に位置付けようとしている。
しかし、韓国人も日本人も四六時中相手のことを考え、憎しみ合っているわけでもない。毎年、両国間の往来者数は500万人を超える。日韓市民は双方のポップカルチャーを楽しみ、両国企業間の協力関係(競合もあるが)には緊密なものがある。韓国への直接投資では、日本が近年30億ドル前後に達し、首位、またはアメリカに次ぐ2位を続けている。朝鮮半島有事の際の米軍司令部は在日米軍基地に置かれているし、自衛隊と韓国軍には長年の交流実漬がある。双方は、米軍を媒介して機密情報を共有する伸でもある。首脳会談は3年半も開かれていないが、「日中韓協力事務局」が11年以来ソウルで活動し、3国はここに外務省の幹部を常駐させて、首脳会議、外相会議の準備など3国間協力の問題を常に話し合っている。
日韓関係はそれだけで独立して考えるのではなく、北朝鮮等との関連において考えていくことも必要だ。北朝鮮で指導者の不意の交代があった場合には、日韓間の緊密な意思疎通が必要になるし、朝鮮半島再統一となれば、それは人口7400万強の強国が隣に出現することを意味し、日本外交は大きな再編を迫られる。
そのときは北朝鮮の開発した核兵器の扱いが国際的な問題となろうし、統一された国とまったく新たな条約を結ぶのか、それとも韓国との条約類をそのまま適用するのかという問題も生ずる。統一国家が米中の問でいずれに傾くかによって、日本をめぐる安全保障環境も激変するだろう。韓国との関係は過大評価も過小評価もせず、キレずにじっくり進めるしかない。」
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