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米国を守れば「抑止力」が高まるなんてあり得ない! 米中のはざまで生きる日本のあるべき防衛戦略とは?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43969
2015年07月05日 柳澤協二 現代ビジネス
「抑止力」の壁を越えて「専守防衛」を再考する
(文・柳澤協二)
■「抑止力」というマジック・ワード
5月14日、安保法制関連法案の閣議決定後の記者会見で安倍首相は、「日本が米国の戦争に巻き込まれることは『絶対に』ない」と述べた。
その理由は、「日米同盟は完全に機能すると世界に発信することによって抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていくと考える」からだという。今回の法制に賛同する専門家といわれる人たちも、同様の理由で、安保法制を歓迎している。
この論理は、一言でいえば、「日本がアメリカの軍艦を守ることによって抑止力が高まり、日本が攻撃されることがなくなる」というものだ。
だが、アメリカの軍艦を守れば、当該アメリカの軍艦への攻撃は抑止されるかもしれないが、それ以上のことは何ら論理的に証明されない。
むしろ、アメリカの軍艦を守ることによって日本が戦争に参加することになり、かえって日本への攻撃を誘発するかもしれない。まして、遠く南シナ海でアメリカの軍艦を守れば、その分、日本の防衛は手薄になる。
安倍政権発足以来これまでの集団的自衛権の議論を聞いていると、すべてはこの「抑止力」というマジック・ワードで正当化されてしまっているように見える。
国民の中にも、中国や北朝鮮への不安から、抑止力が高まるなら仕方がない、と考える人が少なくないようだ。
■米中の「新たな大国関係」
抑止力には2つのタイプがある。
典型的には、「相手が攻めてきたら倍返しにしてやる」という、報復あるいは懲罰の論理によるものだ。冷戦期には、米ソの間で、最後は核の応酬となって相互に滅んでしまうという恐怖が、戦争を抑止していると考えられていた。
もう1つのタイプは、相手がたとえ島を取りに来たとしても、成果に見合わない相当な損害を与えることによって容易には目的を達成させない抵抗力を持つことだ。これを、拒否力または拒否的抑止力という。
冷戦期の日本は、米ソの間で核の応酬に至る全面戦争が抑止される環境の中で、核を使うに至らない小規模の侵略に対して持ちこたえるに足りる「基盤的防衛力」を持ち、個別的自衛権による抵抗を行う「拒否力」としての防衛力を維持してきた。
それは、米軍の軍事拠点である日本列島を守ることによって、ソ連の太平洋への進出を阻むアメリカの世界戦略を補完するものでもあった。
今日、国際情勢は大きく変わった。ソ連が崩壊して世界は「自由主義経済」という共通のシステムに組み込まれることになった。米中は、相互に経済的に深く依存しながら、アジアにおける軍事的覇権を争っている。
米国にとって、中国の台頭は経済的チャンスであるとともに、米国主導の国際秩序に対する挑戦でもある。
中国にとっても、米国と米国主導の国際秩序の存在は、自国の経済発展の前提であるとともに、軍事的な封じ込めによって自らの価値観を危うくする強権的覇権国でもある。
いかに政治的価値観が異なっていても、相手を破壊すれば世界経済が破壊される状況の下で、核の使用による相手の殲滅は、もはや合理的選択肢ではない。そこで、価値観の相違を管理するという問題意識が生まれてくる。これが、我々の直面するパワー・シフトであり、「新たな大国関係」の実相である。
■米国に見捨てられるのでは?という恐怖
そこでは、どこまで行けば相手に懲罰を与えるのか、言い換えれば、軍事力によって何を抑止するのか、あいまいにならざるを得ない。
そこで、「米国のために血を流さなければ米国が助けてくれないのではないか」という「見捨てられの恐怖」が出てくる。
だが、日本を守るかどうかの判断は、すぐれて米国の国益に由来するものであって、「お互い様」の同情に発する判断ではない。したがって、「米国を守れば抑止力が高まる」という論理は、前提が間違っている。少なくとも、「戦争に巻き込まれることは『絶対に』ない」という命題は、絶対に誤りだ。
同時に、「自衛隊も日米安保も憲法違反だ」という論理も、日本の平和に対する回答になっていないばかりか、現実の脅威感に対する反論の意味をなしていない。我々は、世界の現実に立脚し、日本の国益を再定義して、あるべき防衛戦略を合意すべき時期を迎えている。
米中という二つの大国のはざまで生きるミドル・パワーである日本を考えたとき、中国に一方的な現状変更をされないよう拒否する力を持つと同時に、米国の余分な戦争に加担して力を浪費することがないようにしなければならない。
それこそ、21世紀に生きる「専守防衛」の戦略である。私が代表を務める「自衛隊を活かす会」(略称)が、今回、『新・自衛隊論』(講談社現代新書)を刊行した意味はそこにある。
読書人の雑誌『本』2015年7月号より
自衛隊を活かす会
自衛隊を否定するのでもなく、かといって集団的自衛権や国防軍に走るのでもなく、現行憲法の下で誕生した自衛隊の可能性を探り、2014年6月7日に発足した任意団体。正式名称は「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」。代表は柳澤協二(元内閣官房副長官補・防衛庁運用局長)、呼びかけ人を伊勢崎賢治(東京外国語大学教授)と加藤朗(桜美林大学教授)が務めている。本書にはその他、冨澤暉(元陸上幕僚長)、植木千可子(早稲田大学大学院教授)、小原凡司(東京財団研究員)、宮坂直史(防衛大学校教授)、酒井啓子(千葉大学教授)、渡邊隆(元陸将)、林吉永(元空将補)、山本洋(元陸将)の各氏がそれぞれの専門分野から論考を寄稿している。
自衛隊を活かす会・編/著
『新・自衛隊論』
講談社現代新書 税別価格:900円
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062883201/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4062883201&linkCode=as2&tag=gendai_asyuracom-22
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