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「首相官邸HP」より
残業代カット、派遣社員入れ替え横行…政府、“札付き”労働法案成立へ異常な執念
http://biz-journal.jp/2015/07/post_10561.html
2015.07.01 文=町田徹/経済ジャーナリスト Business Journal
安倍晋三首相が執念を燃やす安全保障関連法案可決のために今国会会期の大幅延長に踏み切った結果、時間切れで廃案になるとみられていた労働関係法案が続々と本格的な審議に付される可能性が高まってきた。
その第一は、当初の会期では参議院での審議が不可能とされていた「労働者派遣法」改正案だ。同改正案は事実上、派遣社員の受け入れ期間の上限をなくすもので、派遣社員の固定化につながるとの指摘が多い。第二が、審議が塩漬けになっていた「労働基準法」改正案だ。こちらは、労働した時間ではなく、成果に見合う賃金を支払うものと報じられている。企業側が人件費を節約できると期待される半面、社員にとっては“残業代カット法案”だと揶揄されている代物だ。
一昨年、民主党政権の「何も決められない政治」を批判して政権を奪回した自公連立政権・与党は国会延長を好機ととらえて、なるべく多くの法案を可決する構えだ。しかし、安全保障関連法案だけでなく、副作用の大きさが指摘されている法案をまとめて強引に成立させようとする姿勢は、政権への批判を強める結果を招くことになるかもしれない。
■困難だった各種法案、一気に成立の動き
6月22日、政府・与党は衆議院本会議で、24日までだった今国会会期を95日間延ばして9月27日までとすることを賛成多数で決めた。この延長幅は通常国会の延長としては過去最大だ。背景にあるのは、集団的自衛権の行使容認などを盛り込んだ安全保障関連法案である。安倍首相自身は答弁で「十分な審議時間をとった。国民の理解を深めていきたい」と述べている。
しかし、最後は衆議院の議席という数にモノを言わせる案もあるらしい。自民党内では、衆議院を通過させて参議院に送付、参議院が60日以内に議決しなければ否決したものとみなす憲法の規定を盾にとって、圧倒的な議席数を持つ衆議院で3分の2以上の賛成による再可決を行い法案を成立させるプランが検討されている。
異例の会期大幅延長を受けて与党内で浮上してきたのが、時間切れで困難とみられていた一連の法案成立を改めて目指す動きだ。前述した2本の労働関連法改正案のほか、JA全中(全国農業協同組合中央会)の監査・指導権を廃止する「農協法」改正案や、カジノを中心とする総合型リゾートの開発を推進するための「カジノ法案」が、候補として名を連ねている。
このうち農協法改正案は、本来ならば国会が閉じていたはずの6月25日、衆議院農林水産委員会で自民、公明、維新の3党の賛成で可決した。6月30日には衆議院本会議で可決され、今後は参議院での可決を経て会期末までに成立の見通しとなっている。同法案は、JA全中の一般社団法人化と全国各地の農協に対する監査権の廃止を盛り込んだものだ。安倍政権は岩盤規制改革の目玉だと主張している。だが、株式会社による農地保有など農業全体の改革に目を瞑り、改革を農協組織の中、それもJA全中本体のみに絞り込んだ内容だ。安倍政権の常套手段である“やったふり改革”の典型例といってもよいだろう。
カジノ法案は、外国人観光客の増加や雇用機会の創出といった経済効果が期待できる一方、犯罪の増加や教育への悪影響を懸念する声が根強く残っている。場所や規模次第で弊害は防止できるとみられるが、政府・与党自身の腰がふらついており、数年越しで本格的な審議の先送りが繰り返されてきた法案だ。
■“札付き”法案
そして、本稿の本題である労働者派遣法改正案である。同改正案は、過去2回廃案になった経緯のある“札付き”法案だ。それにもかかわらず政府があえてこの時期の改正にこだわっていることから、立法意図への強い不信を呼んでいる。
というのは、現状ならば今年10月に現行の改正派遣法成立から3年が経過し、3年という派遣期間の上限を経過した一般派遣社員を派遣先が直接雇用する義務が生じることになっているからだ。政府は、3年の期限がない専門26業務の派遣社員も現場における一般派遣社員との区別が曖昧なために、直接雇用を迫られるリスクがあると考えている企業が多く、こうした企業が派遣切りに動くのを防ぐために改正が必要だ、と説明していた。今回の改正で、専門26業務の人も派遣期間が3年に限定されるが、職場を変えれば同じ派遣先にとどまることが可能なため派遣切りを防げるだけでなく、派遣社員がさまざまな部署を経験できるようになりキャリアアップにつながるというのである。
しかし、野党や派遣社員の支援団体は、政府の主張を詭弁だとしている。なぜなら、企業にとって、人さえ入れ替えればその職に派遣社員を使い続けられるからだ。結果として専門26業務でも派遣社員の入れ替えが横行するだけで、多くの職が派遣社員職として固定化する懸念があるという。
同じ職場で働いた人を派遣先が直接雇用するよう派遣元が要請する義務や、断られた場合に別の派遣先を紹介する義務、あるいは派遣元で雇用する義務など、改正案に盛り込まれた新設規定の履行状況を監視するという理由で派遣業を届け出制から許可制にするという点も問題含みだ。厚生労働省の規制権限の強化にほかならず、お役所の焼け太りに終わる可能性があるからだ。
もうひとつが労働基準法改正案だ。フレックスタイム制の見直しや裁量労働制の適用職種の拡充など、いくつかのポイントがある。中でも最も注目されるのは「脱時間給」制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)の導入だろう。厚生労働省の法律案概要では、「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設」と記されている。
その内容をみると、「職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1000万円以上)を有する労働者」が、高度の専門知識を必要とする業務に従事する場合に、健康を確保する措置を講じたうえで、本人の同意や社内の委員会の決議などの手続きをとれば、労働時間、休日、深夜の割り増し賃金等の(労働者保護の)規定を適用除外にする」としている。条件付きとはいえ、まさに休日や夜間の勤務手当などの切り捨て法案といわざるを得ない内容なのだ。
同法案は、高度プロフェッショナル制度について、年収が平均の「3倍の額を相当程度上回る水準」としており、当面の適用対象者は1万人程度にとどまるとされる。このため、一般の労働者には無縁の話であり、一部のエリート労働者のみが対象の取るに足らない問題とみなされがちだ。
しかし、同法案が閣議決定された翌週にあたる4月6日の記者会見で、日本経団連の榊原定征会長が高度プロフェッショナル制度に言及し、「最終的には年収要件の緩和や職種を広げる方向で考えていかなければいけない」と述べていることは見逃せない。経団連は、年収400万円以上の労働者を対象にしたいとしているからだ。ひとたび同法案が可決されれば、安倍政権は同法の改正を繰り返し、経団連の要望実現に動く可能性がある。
わが国を主導する政府の国会における立法活動を評するのに、「調子に乗って」とか「欲張って」といった言葉を使うのは、失礼であり不遜なことかもしれない。
しかし、今回の会期大幅延長を受けて、政府・与党が成立を視野に仕切り直しを始めた法案の名称をみていると、悪乗りし過ぎの感が拭えないのも事実である。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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