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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 維新が日本を壊す
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週刊実話 2015年7月9日 特大号
安倍総理と政界引退を表明した橋下徹維新の党最高顧問が、6月14日夜に都内のホテルで3時間にわたって会談した。内容は明らかにされていないが、安全保障関連法案の今国会での成立に向けて、総理が維新の協力を要請したものとみられる。維新は、既に労働者派遣法改正案で与党に協力姿勢を示しており、安全保障関連法案についても同様の態度を採ることになれば、今国会での成立が確実なものになる。
労働者派遣法改正案審議での維新の迷走ぶりは、驚くべきものだった。改正案は、3年ごとに人を入れ替えれば、企業が無期限に派遣労働者を利用できるようにする。一方、働く側からみると、これまで無期限の派遣が可能だった専門26業務についても、派遣の上限期間が3年に限定される。つまり、派遣労働者は、いつまで経っても「新入り」として、3年ごとに企業を転々としなければならなくなるのだ。
そうした状況に対して、維新、民主、生活の3党は、議員立法で「同一労働同一賃金推進法案」を提出。同じ仕事をする場合には、正社員と派遣労働者などの非正社員の賃金を同一にすることを目指した。同一労働同一賃金は、世界の常識なので、極めてまっとうなことを求める法案だった。
ところが、維新は抜け駆けして単独で与党との法案修正協議を行い、当初案の「待遇の均等を図る」を「待遇の均等および均衡の実現」に修正することで、与党の法案への賛成の確約を得た。だが、この文言修正によって、正社員と派遣社員は、同じ仕事をしていても職位が違うのという理由で、同一賃金を保障する必要がなくなってしまった。
共同提案をした民主と生活は、維新の裏切りに激高したが、維新の党は、与党から同一労働同一賃金推進法案への賛成を得ることと引き替えに派遣法改正案の採決に応じることを約束しており、これで派遣労働者の身分が固定化される派遣法改正案の成立が、ほぼ確実になった。与党単独での強行採決が避けられるからだ。
同じことが、安全保障関連法案でも起きる可能性が高い。安全保障関連法案に関しては、憲法審査会に呼ばれた憲法学者3人が揃って「法案は憲法違反」と発言し、「合憲とする学者はたくさんいる」としていた菅官房長官も、合憲とする学者の名前を3人しか示せないなど、与党への逆風が吹き荒れている。そうした中で、内閣支持率も急降下しており、このまま衆参両院で与党単独強行採決をすると政権維持が危うい状況にまでなっていた。そこに維新が本会議での採決に応じることになれば、単独強行採決は避けられる。
もともと、派遣法改正案で野党を裏切ったのは、維新の大阪組の議員だった。彼らは安全保障面でもタカ派の考えだから、橋下最高顧問からの指令があれば、喜んで与党にすり寄るだろう。ここで与党に貸しを作れば将来自民党から出馬することも可能になるという算段かもしれない。
かつて、橋下氏の支持者が「橋下市長の仕事は破壊だ。まず大阪市を壊さないと何も始まらない」という話を聞いた。大阪都構想の住民投票で敗れ、政界引退を表明した橋下氏が最後に残すものは、日本の平和と平等を破壊していくということになるのかもしれないのだ。
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