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安倍首相との5月20日の党首討論が話題に(C)日刊ゲンダイ
共産党・志位委員長 「安倍内閣には戦争法案を扱う資格なし」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/161131
2015年6月29日 日刊ゲンダイ
党首討論では舌鋒鋭く安倍首相に迫るが、国政選挙では独自路線を歩む日本共産党。戦争法案を阻止するために野党はどこまで共闘できるのか。委員長のホンネに迫った。
■「これほど米国に無条件追従する国は日本だけ」
――5月20日の党首討論が相当、話題になりましたね。「ポツダム宣言」の認識を認めないのか、と迫り、安倍首相が「つまびらかに読んでいないので論評は差し控えたい」と答えたアレです。
どうしても過去の日本の戦争を「間違った戦争」と言いたくない。そのためにああいう苦しい答弁になったんでしょうね。
――その後、別の野党議員が「読んだことがあるのか、読んだけど記憶にないのか」と質問主意書を出して、安倍内閣は「読んでいる」という答弁書を出しました。
「読んでいる」ということを答弁書として「閣議決定」するのもおかしいのだけれど、読んでいてあの答弁だとしたら、「間違った戦争」であると認めたくない。そういう解釈しか成り立ちませんね。
――どうして、そういう質問をしたんですか?
これは戦争法案と深い関わりがあるんです。過去の戦争に対するきちんとした反省があるのかないのか。そういう認識がない人に集団的自衛権行使の権限を与えたら、大変危ういことになる。戦争法案を議論する前提となる土俵を設定するために、過去の日本の戦争に対する認識はきちんと聞いておかなければいけないと思ったんです。
――しかし、首相は「誤りだった」と認めない。
村山談話についても「全体として受け継ぐ」と言っていますが、核心部分、「植民地支配と侵略に対する痛切な反省とお詫び」については「受け継ぐ」とは言わないわけですよ。国会でも、私は、過去の戦争は「間違った戦争だったのか」「正しい戦争だったのか」とシンプルに聞きましたが、お答えがない。つまり、本心は「間違った戦争」だと思っていないのでしょう。日独伊3国の戦争は侵略戦争だった。その反省の上に戦後の国際政治があるのに、それを明言できないような政権に、そもそも戦争法案を扱う資格はありません。
――すべての戦争は侵略ではなく自衛のためだと言って始まっていますし、そうした善悪の判断ができない政権であれば、米国が始めた戦争の是非も判断できないのではないか。当然、そういう懸念が浮かびますね。安倍首相は「違法な武力行使をした国を日本が支援することはない」とか言っていますが、怪しいものです。
日本は、戦後、米国の戦争に一度も「ノー」と言ったことがないんです。ベトナム侵略戦争、グレナダ侵略、リビア爆撃、パナマ軍事侵攻、イラク侵略戦争と米国はたくさんの先制攻撃をやってきました。このうちグレナダ、リビア、パナマへの武力攻撃については、国連総会で圧倒的多数で非難決議が採択されています。しかし、日本政府は非難決議に反対したり、棄権してきた。これほど米国に無条件追随する国は、世界の主要国の中では日本だけです。
――そんな日本が米国から「協力しろ」と言われて、断れるわけがないんですよね?
そうです。米国の言いなりの国が集団的自衛権を持つことの危険性、ここが肝になります。これまでは「憲法上、集団的自衛権は行使できません」と言えたわけです。それを取っ払えば、断れなくなる。米国の無法な戦争に参戦し、日本自身が無法者国家になってしまう。
■「首相の答弁は逃げとゴマカシ」
「事実と論理で追い詰める」と語る志位氏(C)日刊ゲンダイ
――志位さんに国会で追及された岸田外相は「グレナダ派兵やパナマ軍事介入に対しては日本政府は遺憾の意を表明している」と言いましたが、この答弁にも驚かされました。「遺憾の意」は表明しているが、それを表明した文書には後段があって「他方、米国の事情は理解できる」と続く。やっぱり米国には逆らえないのに、そういうところはぬぐって、都合のいいところだけを抜き取って答弁する。
さらに安倍首相にただしたら「理解は示したが支持はしていない」という苦しい答弁をしていました。
――詭弁政権じゃないですか?
首相の答弁は全体として不誠実。真正面から答えず、逃げとゴマカシで、その場を取り繕う。だから、こちらは動かせない事実、覆せない論理で追い詰めていくのが大事だと思っています。相手が不誠実であればあるほど、こちらは冷静に事実と論理で対応する。そうしないと、国民は「何をやっているんだ」となる。
――その国民は安倍政権を倒すためになぜ、野党共闘ができないのか、と思っていますよ。共産党は他の野党との選挙協力や候補者調整はできないんですか?
まずはこの法案を潰さないといけない。そのために野党が一つの固まりになって力を合わせないといけない。延長国会への対応では野党5党首(共産、民主、維新、生活、社民)が集まり、反対で一致しました。野党が最大限まとまって行動する。そういうことがすごく大事だと思います。集団的自衛権についての立場はそれぞれの党で違うが、今の政府案は許さない。この点では一致できると思うんですね。
■「世論の反対が7、8割に達すれば」
――他の野党は水面下で再編の話までしている。共産党だけが独自路線のようにも見えますよ?
この法案でどうやって政権を追いつめていくかについては、幹事長と書記局長、国対委員長レベル、現場レベルではいろいろ話し合っています。
――目の前の法案での共闘とおっしゃったけど、沖縄での衆院選(2014年12月)では候補者調整をして、結果的に野党が全選挙区で勝った。大阪都構想では共産党が自民党と共闘して、都構想を潰した。やっぱり共闘すると強いじゃないですか。
共闘する大義がある時は柔軟に対応します。沖縄では辺野古の新基地建設反対という大義です。大阪では大阪市を解体し、暮らしと自治を壊すことへの反対です。大阪では自民党の方々と一緒に宣伝カーに乗って訴えた。大阪市民のために暮らしと自治を守るということで共闘した。沖縄の翁長さんは、かつては自民党の県連幹事長だった人だけど、共闘してみたら気持ちが通じ合って、深く信頼できる友人を得たという気持ちです。
――それじゃあ、国政レベルでも共闘すればいいじゃないですか。
国政選挙で共闘する場合には国政の基本問題での一致――大義が必要だと思います。大義がないところでくっついても有権者への責任を果たせない。今度の岩手県知事選(8月20日告示、9月6日投票)では現職の達増拓也知事を自主的に応援することを決めました。これは震災復興、被災地の皆さんのためです。宮城県は医療費や介護保険の減免制度を打ち切ったが、岩手県は継続してきた。県立病院も再建する。達増さんは被災者に寄り添って活動している。こうして大義がおのずと明確になってくる状況になれば対応しているし、今後も対応していきます。
――そういうのはどういう手続きで決めるんですか? 委員長の裁量ですか?
現地の皆さんと連絡を取り合いながら、進めてきたんですよ。沖縄は去年1年間で考えられないような変化がありました。名護市長選で稲嶺進市長が勝った。稲嶺さんももともと保守の人ですよ。翁長さんが勝った知事選では劇的な保革共闘が実現して衆議院選挙でも全て勝った。大義があったからです。
――戦争法案を潰す。これは立派な大義になるんじゃないですか?
今は法案を廃案にすること。そのために野党共闘を最大限追求する。そこに全力を挙げます。世論は劇的に変わってきています。憲法学会も日本弁護士連合会も断固反対。赤いものを身に着けた女性が国会を包囲した。若者の大規模なデモも話題になった。世論の反対が7割、8割に達すれば、いくら安倍政権がムチャクチャでも動きが取れなくなると思います。
▽しい・かずお 1954年生まれ。東大工学部卒、衆院南関東比例ブロック(8期当選)。2000年から日本共産党委員長。
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