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辺野古問題で対立する翁長知事と安倍首相(YouTube「ANNnewsCH」より)
政権の言い分が翁長知事の主張の倍以上…NHKの沖縄米軍基地報道の偏向をOBが検証告発!
http://lite-ra.com/2015/06/post-1216.html
2015.06.24. リテラ
6月23日、沖縄慰霊の日。沖縄では全戦没者追悼式典が行われ、翁長雄志知事は安倍首相の眼の前で改めて「普天間基地を辺野古に移設する作業の中止の決断を強く求めます」と、基地移転反対を表明した。
しかし、一方の安倍首相は「沖縄の基地負担軽減に全力を尽くして参ります」と挨拶したものの、辺野古については一切触れず。式典の後に「普天間の固定化はあってはならない」などと繰り返すのみだった。
しかも、追悼式後に開催される首相・知事会談も今回はわずか5分。基地問題には一切触れなかった。
安倍首相の沖縄に対する軽視、冷徹な対応が今回も浮き彫りになった形だが、しかし、沖縄を軽視しているのは、何も安倍政権だけではない。
「NHKの沖縄問題や辺野古報道は偏向している」
こんな事実を明らかにしたのは、NHKのOBらが運営委員に名を連ねる市民団体の「放送を語る会」だ。この団体は1988年、放送メディアのあり方や、放送現場の状況について検討するためNHK職員有志が立ち上げた会で、これまでもNHK改革への提言を行ってきた。そんな「語る会」が沖縄や辺野古に関するNHKと民報キー局の報道をモニターした結果を公表した。
モニター期間は3月30日から翁長知事と安倍首相の会談が実現した4月17日まで。対象の番組は、『NHKニュース7』『ニュースウオッチ9』(NHK)、『NEWS ZERO』(日本テレビ)、『報道ステーション』(テレビ朝日)、『NEWS23』(TBS)、『みんなのニュース』『みんなのニュースWeekend』(ともにフジテレビ)の7つだ。
この結果、浮き彫りになったのが、NHKの露骨なまでの政権よりの姿勢だった。
典型的なのは3月30日。「翁長知事が辺野古沖での工事を中止するよう指示したことに対し、農水省がこの指示の効力を「行政不服審査法」を適用して一時停止するよう通知した」日のニュースである。
同会のモニタリングによると、『報道ステーション』は「16分30秒」の長さにわたって、このニュースを伝えたという。「行政不服審査法」の適用 についても、成蹊大学法科大学院の武田真一郎教授の「国民が、 行政との間で紛争になった場合、国民側を守るために作られた法律で、国が国民と同じ立場で、 不服申し立てすることは出来ない」とコメントを紹介する等、かなり踏み込んで報道していた。
『NEWS23』も同様で、行政不服審査法の適用について、「林農水相の「国も申立人としての適格性が認められるのが相当」だという談話を伝えたが、これに対しアンカーの岸井成格氏は、条文の目的をフリップで示して、「そう言う解釈が可能なのか」と疑問を呈した」。
ところが、NHKの『ニュース7』『ニュースウオッチ9』は、どちらも「行政不服審査法」の適用の問題点には一切触れなかった。「むしろどちらかといえば政府側の主張に時間をかけていた」という。
たとえば、『ニュース7』では、アナウンサーが、「総理は 『知事らと意思疎通を図り理解を得ることが重要』 そのうえで、『“我が国全体の安全保障上の要請により、沖縄に米軍基地が集中しているが、アメリカ軍の用地が返還されることは地域の皆さんにとって、間違いなくプラスであり、嘉手納以南の施設の返還をさらに進めていきたい』と述べ、アメリカ軍施設の返還計画を着実に進めていく考えを示した」とかなり丁寧に政府見解を紹介した。
さらに『ニュースウオッチ9』は、翁長知事のインタビューや見解などの放映時間が約1分だったのに対して、政府側の主張は菅官房長官の会見、林農水相の国会答弁などで計 2 分 10 秒もあったという。
逆だったら安倍首相が激怒するに違いない“偏向報道”だが、NHKは沖縄の意見より政府見解を重要視したということだろう。
ちなみに『ニュースウオッチ9』は「全体の時間量も5分弱で、「報道ステーション」の3分の1にも満たなかった」という。
4月5日には、沖縄県庁で翁長知事と菅官房長官が開かれたが、この会談を伝える報道でも、『ニュースウオッチ9』の偏向が明らかになっている。
今回も『報道ステーション』が12分30秒に対して、『ニュースウオッチ9』は4分50 秒と、半分に満たない放映時間だったが、もっと問題なのは内容だ。
この会談では翁長知事が菅官房長官に対して、「上から目線の“粛々”という言葉を使えば使うほど県民の心は 離れ、怒りは増幅していく」と批判した上で、こう述べた。
「今日まで沖縄県が自ら基地を提供したことはない。銃剣とブルドーザーで、普天間も含め基地に変わった。自ら奪っておいて、県民に大変な苦しみを今日まで与えておいて、今や世界一危険になったから、その危険性の除去のために『沖縄に負担しろ』『代替案を持っているのか』『日本の安全保障はどう考えているのか』と。こういった話がされること自体、日本の国の政治の堕落ではないかと思う」
この発言は会談のハイライトで、多くのメディアが伝えたが、しかし、モニタリングによると、『ニュースウオッチ9』は「この発言を全く報じなかった」という。そして、かわりに流したのが「粛々」という言葉を広辞苑で調べ、政治家の言葉を研究する学者に「解説」させる映像だった。同会の報告書はこう批判している。
「もし意図的だとすればジャーナリズムとしての姿勢が問われる。そうではなく、ニュース担当者がこの発言の重大性に気づかなかったのであれば、ニュースのセンスの衰弱との批判を免れない」
そして安倍会談が実現した4月17日もまったく同様だった。『ニュース7』は各局と同様、安倍首相と翁長知事の発言を伝えた上で、記者の解説があったが、しかし、その解説自体はまさに通り一遍のアリバイ的なものでしかなかった。報告書はこう疑問を投げかけている。
「沖縄の記者の報告では、翁長知事の『沖縄は自ら基地を提供したことは一度もない。それなのに……こんな理不尽なことはない』という沖縄の歴史を踏まえた重い言葉を、記者がどのように受け止めていたのかが伝わってこない。また政治部記者の報告は今回の 会談への安倍政権・政府の姿勢の要約以上のものでしかない。こういうことで良いのだろうか」
『ニュースウオッチ9』となると、この会談についてたった4分30秒しか流さなかった上に、解説も識者の意見もなかったという。
この比較調査ではさらに深く突っ込んだ番組内容の問題点が具体的に記されているが、他局番組と比較してもNHKの沖縄・辺野古報道の量は少なく、しかもさらに安倍政権サイドに立ったものだということは明らかだ。そして比較調査ではNHK全体の報道をこう総括している。
「NHKニュースでは政治家の動きや発言を「客観的」 に伝えるだけ、という傾向が顕著で、基地をめぐる調査報道や、識者の批判的コメントなどはほとんど見られなかった」
こうした提言を行っているのがNHKの元職員、OBであるいう点も、現在のNHKの偏向ぶりの深刻さを改めて浮きぼりにしているといえるだろう
NHKは辺野古問題だけでなく、5月26日の安保法制初日の国会中継を行わず、大きな批判に晒された。また、22日の国会中継も決算委員会だけで、平和安全特別委員会の参考人招致は中継されていない。
安倍首相の“お友だち”である籾井勝人が会長に就任して以来、NHKの迷走ぶり、いや安倍政権への忠実なポチぶりにはあきれ果てるばかりだ。政府だけでなく公共放送からも沖縄・辺野古問題は殺されつつある。それが現在進行している事態だ。
(伊勢崎馨)
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