政治学者白井聡（３７）しらい・さとし／１９７７年生まれ。早大卒、一橋大大学院で博士。現在、京都精華大専任講師。『永続敗戦論―戦後日本の核心』で石橋湛山賞を受賞。７月２１日には『マンガでわかる「永続敗戦論」』（朝日新聞出版）が発売予定（撮影／写真部・植田真紗美）

「知りたくないことは知らなくていい」日本人が危ない！〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150623-00000004-sasahi-soci
週刊朝日　2015年6月26日号

　国土が焦土と化した太平洋戦争の敗戦から、まもなく70年。日本は奇跡の復興を成し遂げて経済大国の仲間入りをした。だが、右肩上がりの経済成長は終わり、時代の先行きは見えない。私たちはどこに向かって歩めばいいのか。その道標となりうる「敗戦後論」について語るのは、政治学者の白井聡（37）だ。

＊　　＊　　＊
　私の世代は、バブル崩壊後の「失われた10年」の影響を受けた「ロスト・ジェネレーション」と呼ばれています。当時、「第二の敗戦処理が必要だ」ということが言われました。

　ただ、私はそこに違和感を覚えました。では、1945年に破滅的な敗北をした「第一の敗戦処理」は、ちゃんとできていたのか。日本は、敗戦を正面から認めず、戦争責任もあいまいにしてきたではないか。まさに、丸山真男の言った「無責任の体系」です。そこに、今の日本が抱えるさまざまな問題の本質がある。私は、日本が敗戦を認めることができず、今でも負け続けているという意味で「永続敗戦レジーム」と呼んでいます。

　具体的な形で表れているのが、領土問題です。竹島も尖閣諸島も北方領土も、そもそもはすべて日本の敗戦処理にかかわる問題です。である以上、日本が敗戦の事実を正しく認めなければ、問題解決に近づくことはできないのです。

　ところが、現在では「領土を侵す外国勢力は討つべし」という、国際的には通用しない主張が「愛国的」として日本国内で受け入れられている。とても悲惨な状況です。

　今までの議論の構造を変えなければなりません。戦後の日本は、米国に従属してきた。ただ、世界中の国で米国に従属していない国はほとんどないのです。そこで対米従属を「ケシカラン」と言っても始まらない。

　問題は、日本の対米従属の仕方です。安全保障政策は、あらゆる可能性を考慮して、最も正しい解を出すのが本来の姿です。それができていない。安保政策をリードする政治家や知識人は、最初から“対米従属ありき”で議論をしている。これは米国への従属ではなく、“隷属”なのです。

　今の日本は、あらゆる階層で知的劣化が進んでいます。それは、知識の量が少ないという意味ではありません。人間として生きるためのモラルが低下している。「自分の知りたくないことは、知らなくていい」という考え方が、今の日本を覆っています。

　安倍晋三首相が、ポツダム宣言について「つまびらかに読んでいない」と発言したことには私も驚きましたが、ポツダム宣言こそが戦後の敗戦処理の原点です。総理大臣がそれを知らない。ここには、「敗戦の否認」の欲求が色濃く出ています。

　哲学者のヘーゲルは、「重要なことは2度経験しないと本当には理解できない」と言いました。不謹慎な言い方かもしれませんが、日本人は、もう一度破滅的な敗北をしないと、気付かないのかもしれません。

　そのなかで、私が希望を感じているのは、沖縄の人たちです。沖縄は、戦後に米軍の軍政下に入り、日本から切り離された。本土で基地が減った分、沖縄には集中した。沖縄は永続敗戦レジームの外部なのです。

　それがいま、翁長雄志知事の誕生で本土に「NO」を言うようになった。永続敗戦のレジームから脱却しようとしている。沖縄に押し付けられてきた重荷を、拒否しはじめたのです。その怒りは、本土の人間が目を背けてきた戦後日本の矛盾に気付かせる力があると、私は感じています。

コメント
1. 日高見連邦共和国 2015年6月23日 08:50:31 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk ＞ただ、世界中の国で米国に従属していない国はほとんどないのです。 ただ、米国に従属するだけで、独自の“戦術・戦略”を一切持たない国も日本だけですよ、白井さん！（笑）
2. 2015年6月23日 08:55:55 : 62QaAmZ1Pg 『永続敗戦論』以降　白井聡さんの胸のすくような現況分析と言説 　慧眼ぶりに救われる思いです 《「自分の知りたくないことは、知らなくていい」という考え方が、今の日本を覆っています。》 　これが今の日本だけではなく　いわゆる「律令理性」の本質だとしたら　。。。 　十五年戦争からなにも学べなかったニッポン人は　何度でも愚行を繰り返すでしょ 　滅びるしかないのかもしれません
3. 2015年6月23日 10:04:03 : 2DNR4Amrxs 「知りたくないことは知らなくていい」というのが主訴であると言ったところで、これ自体が、キャリアコンサルタントから見た私たち日本人にとっての本質的な見立てそのものであり、私たち日本人が自ら解決すべき課題ではないかということを見破れば、沖縄県にしてみれば、これにより日本から切り離されたのではないかというのが、本質的な見立てではないかと見破れば、今度はこれを逆手に取って、沖縄県が、自ら自立・自律していくことで、そっと静かに日本を切り離して行く道を正々堂々と選択して貰えるならば、私たち日本国が、誇りを持って、今度は、このようなことを口に出す連中だけを、そっと静かに切り離すことで、切り離された連中に対しては、「何処か人目のつかないところで、そっと静かに幸せに暮らして頂けるのであれば、もうこれだけで構いませんから、天皇陛下と共に、そっと静かに暖かく見守って参りますので、そっと静かに涙を流しながらも、深く感謝をして応えて頂けるのであれば、これこそを、全人類に対して、良いロールモデルとして見せつけて行くことで、誇りを持って恩返しをして参りましょう」ということで応えて行けば良いだけのことではないでしょうか。 これならば、中国にとっても、韓国にとっても、ロシアにとっても、アメリカにとっても願ってもないことは言うまでもありませんが、日本全体にとっても願ってもないことは言うまでもないことは間違いないのだし、それこそ多極化する国際社会全体の環境変化により、今度は日本が、自ら名誉ある孤立化をして、ひっそりと没落し、二度と国際社会の中では目立たない存在に成り下がり、今度は誇りを持って、正々堂々と永続敗北の道を選択することで、ユーラシア大陸全体が、共に支え合い、助け合い、分かち合いながら、共に幸せに暮らすことができるのを、天皇陛下と共に、この東の片隅から、そっと静かに暖かく見守りながら、そっと静かに自立・自律して行く道を自ら選択することで、これが結果的には、全人類が共に支え合い、助け合い、分かち合いながら、共に幸せに暮らすことが出来るようになって、国際社会全体が平和と安定に繋がって行くのを、そっと静かに暖かく見守っていくことだけを誇りとして生きて行く道を自ら選択することで、これこそが、急力の自己理解と、環境的理解というものに繋がる目標と方策に置き換えて行くことにすれば、宇宙全体から見れば、日本はもう究極のハレー彗星として、地球の周りを、一定の周期に従って、そっと静かに近づいたり、離れたりを繰り返して行くことで、一部の自爆テロリストだけが、皆殺しにされることになろうとも、自ら招いたことであり自明のことでしかないのだということで、天皇陛下と共に、そっと静かに最期を見届けて行くことを誇りとしながら、強欲な一部の金と権力の亡者こそが、自ら招いたことでしたないということも真実として見破れば、こうした連中については、もう幾らでも大損することになろうとも、そっと静かに泣き寝入りして没落していくのを、今度は天皇陛下と共に、そっと静かに腹の底で嘲笑いながら、白い目で見てやりながら、通り過ぎて行くことで、こうした一部の連中だけを除く全人類が、共に幸せに暮らしているのを、そっと静かに暖かく見守りながら、通り過ぎて行くことを誇りとすることで、幾らでも涙を流しながら、深く感謝をして応えてもらえることだけを誇りとして、そっと静かに通り過ぎて行くことにすれば、此れ程喜ばしいことはございませんし、此れ程素晴らしいこともないのではないでしょうか。
4. 2015年6月23日 23:22:00 : yO3Alo8G8M 日本人の大部分は領土、国境などには関心がない、と言っていい。 それは自分の利害と無関係だから。そこから「知らなくていい」となる。 実際、自民党支持者のうちでさえ、「どの政策を重視しますか」との質問にたいし 「外交防衛を重視」は１０％ぐらい。ではどの分野を重視するか、といえば、圧倒 的に「景気」「経済」という回答になる。 こういう訳で、白井氏の解釈とは違った意味で「知りたくないことは知らなくてい い」という人が多くなる。 じっさい、喫茶店、飲み屋、電車の中、どこでも領土、国境、歴史問題などで会話 してる人間なんて見たことがない。こんなモノに関心を持つ、と見られることじた いが恥、と思う人間が多いのではないか？
5. 2015年6月24日 00:03:32 : AiChp2veWo ４様、普通にして重要な問題です。どこそこのケーキがうまい、あそこは土地があがる。株がどうだこうだ、車がどうだこうだ、等々の話題は周囲に渦巻いている。 原発や「酸化チタン」鉱石（自動車の塗装、印刷インキ、プラスチックなどの白色顔料、ごく日常的な化学物質）転載・の汚染問題など、国家の行方についてなど聞いたことがない。我々の学生時代は熱弁をふるうものは多かったが。私はつねに知人友人とそんな話をしているが、一般的には聞かない。米から韓朝による日本国民白痴化政策が効を奏したか。
6. 2015年6月25日 14:03:07 : 1It1o5Gg06 嫌なことを見ない。 これは弱い人間のすること。 その筆頭が安部だ。 その安部が強い国とか言ってるんだから、厨二なのだ。

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