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戦争絶対反対を叫び続け、叫び通しておくれ!
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2015年6月22日 植草一秀の『知られざる真実』
安倍政権与党と次世代の党が賛成して通常国会の会期が9月27日まで95日間延長された。
安保関連法案が衆議院で可決された場合、参議院が60日以内に議決しないときには、参議院が否決したものとみなし、衆議院で3分の2以上の賛成で再可決すると法律案は法律となる。
安倍政権は大多数の憲法学者が違憲であると断じ、主権者の多数が法律制定に反対している安保法制を強引に成立させようとしている。
次世代の党は安保法制に賛成しており、維新の党は安保法制の成立に協力する気配を濃厚に漂わせている。
安倍政権与党が衆議院多数議席を占有してしまっているために、このような暴挙がまかり通る事態が生まれている。
安倍政権は憲法違反であるとする憲法学者の批判を無視して、強引に違憲立法に突き進む。
この国はいま、本当の意味での危機に直面している。
これが「アベノリスク」そのものである。
「壊れた民主主義」である。
国会の会期延長を決めたのも「数の力」。
憲法違反の戦争法制を制定しようとするのも「数の力」に依拠する。
そして、その「数の力」は主権者多数という「数の力」に支えられたものではない。
安倍政権与党はたしかに国会の多数議席を占有しているが、その議席は主権者の多数支持によってもたらされたものではないからだ。
衆議院の総選挙で安倍政権与党に投票した主権者は全体の4分の1に過ぎない。
4分の1の民意にしか支えられていない安倍政権が、主権者多数の意思を無視して、国会の議席数という「数の力」だけを振り回して暴走することは許されるべきではない。
しかし、安倍政権は国会の多数議席という「数の力」を活用して、暴走を加速させる構えを示している。
安保法制で焦点となっている
「集団的自衛権の行使」
は、これまで政府が公式の憲法解釈として、
「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」
と明記してきたものである。
誰がどう判断しても、憲法を改定せずに、集団的自衛権の行使を容認することはできないことは明白である。
それでも、国会多数議席を占有すれば、暴走を続けることはできる。
これを止める確実な手立ては存在しない。
日本の主権者が声を上げ、積極的な行動を展開すれば事態は変わるかも知れない。
しかし、民衆の行動に大きな影響を与えるマスメディアの大半が権力の御用機関に堕してしまっている現状では、多くの主権者が問題の深刻さに気がつかないでいるのだ。
この事態を明確に予言した人物がいる。
長崎に投下された原爆で被爆し、その後、白血病で命を失った永井隆博士がその子らに贈った詩に切実な訴えが記されている。
『いとし子よ』
から、いまの私たちが噛みしめるべき言葉を再掲する。
「戦争が長びくうちには、はじめ戦争をやり出したときの名分なんかどこかに消えてしまい、戦争がすんだころには、勝ったほうも負けたほうも、なんの目的でこんな大騒ぎをしたのかわからぬことさえある。
そうして、生き残った人びとはむごたらしい戦場の跡を眺め、口をそろえて、――戦争はもうこりごりだ。これっきり戦争を永久にやめることにしよう!
そう叫んでおきながら、何年かたつうちに、いつしか心が変わり、なんとなくもやもやと戦争がしたくなってくるのである。
どうして人間は、こうも愚かなものであろうか?
私たち日本国民は憲法において戦争をしないことに決めた。…
わが子よ!
憲法で決めるだけなら、どんなことでも決められる。
憲法はその条文どおり実行しなければならぬから、日本人としてなかなか難しいところがあるのだ。
どんなに難しくても、これは善い憲法だから、実行せねばならぬ。
自分が実行するだけでなく、これを破ろうとする力を防がねばならぬ。
これこそ、戦争の惨禍に目覚めたほんとうの日本人の声なのだよ。
しかし理屈はなんとでもつき、世論はどちらへでもなびくものである。
日本をめぐる国際情勢次第では、日本人の中から憲法を改めて、戦争放棄の条項を削れ、と叫ぶ声が出ないとも限らない。
そしてその叫びがいかにも、もっともらしい理屈をつけて、世論を日本再武装に引きつけるかもしれない。
もしも日本が再武装するような事態になったら、そのときこそ…誠一(まこと)よ、カヤノよ、たとい最後の二人となっても、どんな罵りや暴力を受けても、きっぱりと戦争絶対反対≠叫び続け、叫び通しておくれ!
たとい卑怯者とさげすまされ、裏切り者とたたかれても戦争絶対反対≠フ叫びを守っておくれ!」
永井隆博士のこの言葉を、いまほど読み返さねばならないときはない。
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