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合憲性巡る議論再燃
集団的自衛権の行使容認 与野党、判決・学説挙げ激突
集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案の国会審議で、合憲性を巡る議論が再燃している。政府・与党は過去の最高裁判決や政府見解を踏まえたもので問題はないと主張、民主党などは行使できる要件が曖昧なことや立憲主義の観点から憲法違反とみる。戦後、自衛権と9条の整合性が論じられてきたのを踏まえ、論争の構図を点検した。(永井央紀、酒井恒平)
法案で認める集団的自衛権の限定行使を「合憲」とする政府・与党の主張は、1972年の政府見解を根拠とする。(1)憲法の下で自衛権を有する(2)国民の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処するため必要最小限度の範囲に限る――との内容だ。
立憲主義で反論
ただ、72年見解の結論は集団的自衛権の行使が「憲法上許されない」。政府は法案の下敷きとなる2014年7月の閣議決定で解釈を変えた。安保環境の変化を理由に、密接な関係にある他国への攻撃でも国民の権利が根底から覆される明白な危険があれば、自衛権を行使できるとの結論を導いた。見解の(1)と(2)の基本的論理も維持し、合憲と主張する。
閣議決定時から憲法学者や野党から「立憲主義」の観点で違憲論が相次ぐ。立憲主義は憲法で国家権力を制限する考え方で、時の政権が憲法の解釈を大幅に変えるのに否定的だ。4日の衆院憲法審査会で自民党推薦で発言した長谷部恭男・早大教授は「従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」と指摘。民主党も岡田克也代表が17日の党首討論で安保法案を「違憲だ」と断じた。
そもそも終戦直後は自衛権を持つかが焦点だった。1946年、吉田茂首相は国会で、自衛権は一切ないとの立場を表明した。だが50年に「自衛権は存する」と軌道修正。この年、朝鮮戦争が起こり米国の求めに応じて警察予備隊が発足した。54年には自衛隊が創設され、政府は憲法9条の禁じる「戦力」にあたらないとの論理を採用したが、その合憲性は問われ続けた。
最高裁が自衛権に関する判断を示したのが砂川事件判決だ。都内の米軍立川基地へのデモ隊乱入を契機に、米軍駐留の違憲性が争点となった。59年の最高裁判決は違憲とした第一審判決を破棄。自衛権については「自国の存立を全うするために必要な自衛の措置をとり得るのは当然」とした。
砂川判決で補強
安保関連法案の集団的自衛権行使容認で、政府・与党は砂川判決を根拠の補強材料とする。「自衛の措置」は個別的、集団的を明記せず「集団的自衛権行使が認められないと言っていない」(高村正彦自民党副総裁)とみる。
田中耕太郎最高裁長官が補足意見で「厳格な意味での自衛の観念は存在せず、自衛はすなわち『他衛』、他衛はすなわち自衛という関係がある」と述べたのを、集団的自衛権行使の容認発言とみる向きもある。
憲法学者の多くは批判する。長谷部氏は15日の記者会見で「問題とされたのは日米安保条約で、集団的自衛権の行使は争点になっていない」と強調した。これに対し、安保法案の合憲性を主張する百地章・日大教授は「(判決は)集団的自衛権を射程に入れていた」と指摘している。
冷戦後は国際協力での自衛隊活動の範囲拡大の合憲性が論じられた。イラク派遣差し止めを巡る名古屋高裁判決で、航空自衛隊の空輸活動を違憲と判断した。安保関連法案も後方支援活動で「武力行使との一体化」を巡る議論がある。
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集団的自衛権とは
▼集団的自衛権 日本が直接攻撃されなくても友好国が攻撃を受ければ共同で反撃する権利。国連憲章は国家固有の権利と認めている。日本政府はこれまで権利はあるが行使できないと解釈した。安全保障関連法案は(1)密接な関係国への武力攻撃で日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある(存立危機事態)(2)他に適当な手段がない(3)必要最小限度とする――の新3要件を満たせば行使を認める。
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違憲訴訟になったら 最高裁判断、回避目立つ
憲法学者が相次いで「憲法違反」と主張した安全保障関連法案。成立後、違憲を巡る訴訟になればどうなるかも気になるところだ。
与党は「憲法の番人は最高裁判所」とし、憲法学者の意見に左右されないと強調する。ただ最高裁で違憲判決が出れば話は別だ。憲法81条は最高裁に違憲審査権を与えている。自民党の谷垣禎一幹事長は「最高裁で判断が出れば、そういう前提で防衛政策を組み立てないといけない」と語り、法改正が必要だとの認識を示している。
過去は最高裁で判断を回避するケースが多い。高度に政治的な問題に司法が介入しない「統治行為論」と呼ばれる立場をとり、自衛隊や米軍駐留を巡る判断を避ける場合がある。砂川事件の最高裁判決は「極めて明白に違憲無効と認められない限りは司法審査権の範囲外」とした。長沼ナイキ事件も高裁判決で統治行為論をあげた。当事者として提訴する資格(原告適格)がない、と却下して判断を避ける場合もある。
[日経新聞6月21日朝刊P.14]
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