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NHK公式HP「NHKについて 会長あいさつ」より
安保法制でNHKの偏向ぶりが改めてヒドい! 首相の言い分だけ強調しヤジ問題はスルー
http://lite-ra.com/2015/06/post-1206.html
2015.06.21. リテラ
先月5月26日からスタートした安全保障関連法案の国会審議。自民党は今国会での成立をめざしているが、一方で国民の理解は進んでいるとは言い難い。その最たる原因は質問をはぐらかして説明になっていない説明を繰り返す安倍首相とその仲間たちにあるが、もうひとつの問題はメディアにあるだろう。なかでも目に余るのが、“みなさまのNHK”の報道姿勢だ。
そもそも、国会審議の初日である26日に国会中継を行わず非難が殺到したが、その理由をNHK広報は「必ず中継するのは施政方針演説などの政府演説とそれに関する代表質問というのが原則」「原則外のものはケース・バイ・ケースで対応」(朝日新聞より)と説明。この日は安倍首相が自衛官のリスクについて「あくまで国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、自衛隊員に負ってもらうもの」などと語ったが、このような重要な話題になることは誰もが最初からわかっていたのに、NHKとしては「原則外」だったらしい。
だが、これがたんなる言い訳に過ぎないことは、すでに明らかになっている。その一例が、5月28日と29日に放送されたNHKの朝のニュース番組『おはよう日本』の不可思議な報道だ。
この疑惑を取り上げた「週刊ポスト」(小学館)6月19日号によると、5月28日・29日の『おはよう日本』は、〈国会では連日論戦が行われているのに、最新の映像を使わず2日間とも同じ映像を使って安保法制の“ニュース”を流した〉という。
『おはよう日本』が2日間にわたって使用したというのは、27日の民主党・岡田克也代表と安倍首相のやりとり。岡田代表から後方支援の地理的制約をなくそうとしていることについて質問が行われ、安倍首相は「現実の安全保障環境に即した合理的かつ柔軟な仕組みに整理し直した。活動に参加する自衛隊員のリスクを高めることは考えていない」と答えた。これを28日の『おはよう日本』で放送するのはわかるが、問題は翌日の29日。普通ならば前日の28日に行われた国会の様子を伝えるものだが、なぜか28日の国会の模様は流さず、またしても27日の映像を流したというのだ。
では、問題の28日に国会では何が起こっていたか。お気づきの方も多いと思うが、辻元清美議員に「早く質問しろよ!」と安倍首相がヤジを飛ばした日なのだ。もちろん、28日当日の夜のニュース番組『NHKニュース7』『ニュースウオッチ9』でもヤジ問題はスルーしている。
これだけではない。今月14日に国会前に約2万5000人が集まった「安保法案反対」のデモについても、TBS『Nスタ』はトップで報道したほか、テレビ朝日『報道ステーションSUNDAY』もデモの模様を伝えたが、『NHKニュース7』と翌朝の『おはよう日本』は無視。香港で行われたデモはきちんと取り上げていたのに、である。
さらに、先日17日に行われた党首討論でも、当日の『ニュースウオッチ9』は見事な“偏向”ぶりを見せつけた。
この日の『ニュースウオッチ9』は、国会で行われた民主党・岡田代表と安倍首相の質疑応答を主に放送。「ホルムズ海峡においてどのような安全保障環境の根本的変容があったかお答え下さい」と質問する岡田代表に対し、安倍首相がこう説明する模様を流した。
「ホルムズ海峡は、海外でいわば派兵をすることについての、この例外としての例として私は述べている」
「外国の領土、領海、領空での武力行使ということであれば、それは何が可能性としてあるか、ということでありましたから、一般に海外派兵は禁じられているという原則を述べたあとですね、(ホルムズ海峡に敷設された)機雷を排除する場合においてはですね、受動的、限定的であるから、(武力行使の新)3要件にあてはまることもあり得る」
その機雷除去が「受動的」ではなく「能動的」ではないのかと何度も批判されてきたのに、まだ言うか……と呆れてしまうが、この後も安倍首相は存立危機事態をごにょごにょと説明し、「しかし、どういうことでなければ武力行使しないとの政策的中身をさらすことにもなりますから、そんなことをいちいちすべて述べている海外のリーダーはほとんどいないということは申し上げておきたい」と開き直った。
質問には答えず、挙げ句、開き直ってみせる。いわばこの日も安倍首相が詭弁を弄した“通常運行”の国会だったのだが、驚かされたのはNHKの担当記者の解説。政治部官邸キャップの原聖樹記者は、「きょうの討論では、(安倍首相は)政府の立場を平易に国民に伝えることに力点を置いていたように感じました」と言い出したのだ。
どこをどんなふうに聞いたら、この説明が「平易に国民に伝え」ていたと言うのか。しかし、こうしたあからさまな“政権擁護”はNHKにおいては決してめずらしくない。たとえば、5月30日に中谷元防衛相がアジア安全保障会議で中国批判を行った際、NHKは〈「政府の進める安保法制を実現させることが重要」と印象づけた〉(前出・週刊ポスト)。
また、6月18日の国会で安倍首相は「国際情勢にも目をつぶり、従来の解釈に固執するのは、まさに政治家としての責任の放棄だ」と言い、集団的自衛権は違憲だとする多くの批判をお得意の論理のすり替えでシャットアウトしたが、これを伝えたNHKの正午のニュースは、テロップで「衆院予算委 集団的自衛権の行使“従来解釈への固執は政治家の責任放棄”」と打ち、安倍首相の言い分を正当化するかのように前面に押し出した。政権寄りの報道を行うフジテレビや日本テレビでさえ、同じ時間帯のニュースでは「「安保」「年金」で集中審議」(フジ『FNNスピーク』)、「安保関連法案など集中審議」(日テレ『NNN ストレイトニュース』)と打ち出していたことを考えると、NHKがいかに露骨であるかがよくわかるはずだ。
だが、このようなNHKの態度はいまにはじまった話ではない。2013年の特定秘密保護法案採決のときも、強行採決を行う寸前でNHKは国会中継を打ち切った。また、元NHKディレクターの戸崎賢二氏が昨年7月に集団的自衛権の行使容認を閣議決定するまでの『ニュースウオッチ9』を分析した結果によると、〈首相や政府側の言動が放送時間(167分)の約7割を占め、反対派の市民や識者の言動はわずか77秒しか報じられなかった〉(前出・週刊ポスト)という。
しかも、その集団的自衛権の行使容認に絡んで安保法制懇の報告書が出たその日、『ニュースウオッチ9』には礒崎陽輔首相補佐官が、行使容認が閣議決定した後には『クローズアップ現代』に菅義偉官房長官が出演。まるで政権の広報と化しているかのようだったが、この『クロ現』では国谷裕子キャスターが「他国の戦争に巻き込まれるのでは」「憲法の解釈を簡単に変えていいのか」と質問。これに菅官房長官が激怒し、番組終了後、籾井会長をはじめ上層部が直々に謝罪したというが、国谷キャスターのごく当然の質問にさえ怒り出したことを考えると、やはり菅官房長官はNHKを“身内”“飼い犬”と捉えていたのだろう。
もちろん、この「不偏不党」の原則を捨てたNHKの報道の元凶は、安倍首相を後ろ盾とする籾井勝人会長の存在が大きい。だが、根本的な問題は、政権が公共放送を“下僕化”させてしまうという異常な状態を“許している”点にある。
奇しくも先月、NHKは『マイケル・サンデルの白熱教室』で世界各国の放送人を集め、「公共放送の未来を考えよう」と題して番組を放送した。そのなかで、サンデル教授は“政権に都合の悪い報道を行うか?”“政権が介入してきたら自主規制するか?”と問いかけた。そのとき、イギリス・BBCのスタッフは「BBCは事実を尊重し、権力に立ち向かい圧力に屈しないということが原則」「政府の糾弾や圧力には屈しない」と答えた。一方、サンデル教授に“政権に都合の悪い報道を行って呼び出しをくらい、そのあとまた物議を醸しそうな話題を取り上げることになった場合、自主規制するか?”と振られたNHK制作局部長は、「エグゼクティブたちの覚悟次第だと思います」と気弱に述べた。
エグゼクティブの覚悟に左右されてしまう公共放送。……情けなくて悲しくなるが、こんな具合だからNHKだけ受信しない商品まで出回ってしまうのだ。いや、もう多くの国民はこの商品名と同じように「イラネッチケー」と、NHKにそっぽを向きはじめているかもしれないが。
(水井多賀子)
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