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高まる社会閉塞の果てに…(C)日刊ゲンダイ
戦争法案と表裏一体の派遣法改悪 日本経済一歩先の真相/高橋乗宣
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2015年6月19日 日刊ゲンダイ
安倍政権が別名「正社員ゼロ法案」の“改悪”派遣法の成立をやたらと急いでいる。与党は19日にも衆院厚労委で採決を決行し、当日中に衆院本会議に緊急上程するつもりだが、なぜ強引な国会運営を冒してまで「生涯ハケン」の仕組みを押し通そうとするのか。理解に苦しむ。
今や派遣社員など非正規雇用者の数は、雇用者全体の4割近くに達している。安倍政権はさらに低賃金の派遣社員を増やし、コスト安の労働市場を創出する気でいる。「いつまでも派遣じゃマズイ」として設定されていた派遣期間の上限を事実上撤廃し、派遣社員は「3年経過すれば派遣先から直接雇用を受ける」という、わずかにあった正社員への道を完全に閉ざそうとしている。正社員の派遣社員への置き換えも歯止めがなくなり、雇用者全体の賃金低下は加速していくに違いない。
それにしても安倍政権は「日本の労働コストは高すぎる」という考えに毒され過ぎてはいないか。安倍政権の政策作成に関わる竹中平蔵・慶大教授らは「厳しい労働規制と労働コスト上昇が日本の成長を損ねている」と唱えている。その発想の延長線上に、この先に待ち受ける「残業代ゼロ法案」や「解雇自由化法案」もあるのだろう。
だが、日本の労働コストが高いというのは事実なのか。先進34カ国が加盟するOECDの調査によると、2013年の日本の就業者1人当たりのGDPは22位。デフォルト危機のギリシャ(18位)をも下回る。決して労働コストが「高い」とは言えない水準で、竹中氏らの「日本は人件費が高いから国際競争に負ける」という意見は「後進国と比べて」というただし書きが必要だ。
世界の企業が海外の安い労働力を求めるのは、グローバル時代の宿命だ。日本企業が海外で儲けたカネを国内に戻し、輸入依存で赤字続きの貿易収支を補完して、何とか経常黒字を保っているのが、日本経済の現状でもある。
そんな時代の趨勢に逆らって、後進国に奪われた仕事を国内に呼び戻そうと、日本の労働コストを後進国レベルに落としていくかのような安倍政権の試みは、あまりにも不毛だ。日本社会に閉塞感を蔓延させるだけである。もしや、それこそが、自衛隊の海外展開を可能にする安保法案の成立に邁進する安倍政権の真の狙いなのではないか。経済的にも社会的にも国の閉塞感が強まると、権力者がその打破のために戦争を求めたがるのが、歴史の教訓である。派遣法の改悪は安保法案と表裏一体で捉えなくてはいけない。
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