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安保法制4人組に告ぐ 理屈も立場も無理筋だ
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2015/06/28/post-142.html
サンデー毎日 2015年6月28日号
倉重篤郎のサンデー時評 59
政治の流れというのは不思議なものだ。思ってもいなかったところで躓(つまず)き、それが致命傷になることもある。新安保法制をめぐる、3憲法学者「違憲表明」事件もそんな兆しが出てきた。もともと無理筋の法制である。無理筋の理屈を無理筋の人脈で通そうとしている。
私はこの無理筋人脈を、「新安保法制4人組」と命名する。高村正彦自民党副総裁、北側一雄公明党副代表、中谷元防衛相、岸田文雄外相のことである。高村、北側コンビは法制を作った人、中谷、岸田コンビは法制について国会で答弁する人。立場は違うが、いずれも安倍晋三首相を助け、新法制実現に要の役割を果たしている。
特に、高村・北側組なくしては今回の法制はありえなかった。よく米国で複数議員の名を冠した法案が出てくるが、今回の法案も「平和」「安全」といった空々しい名称を付与するよりも、ストレートに高村・北側法案と呼ぶべきだろう。それだけ2人の"貢献"は大きかった。違憲と言い続けてきたことをある日突然、合憲に切り替える。並の議員ではできない。弁護士出身であること、相当な自信家であることが必須である。
2人はその条件を満たしていた。しかも、ある意味、見事な連係プレーを行った。違憲を合憲にするための理屈を二つ見つけ出した。高村氏は、憲法について最終的な解釈権を持つ最高裁が自衛権について判断した判決が過去に一つしかなかったこと、そして、その1959年砂川判決が自衛権を「国家固有の権能」と認定していることに着目した。すなわち、「憲法に対して最大の解釈権を持つ最高裁が自衛権を認めた」+「自衛権の中には個別的自衛権と集団的自衛権がある」=「最高裁判決は集団的自衛権を排除していない」。
苦しい理屈である。排除していない、といえば、その通りだが、そもそも砂川裁判は、日米安保体制の憲法との整合性を問うたものであって、集団的自衛権の可否を積極的に審査したものではない。
北側氏は、もっとすごいことをやってのけた。結果的には集団的自衛権を否定した72年政府見解を解体して、集団的自衛権を認めるうえで必要なパーツだけを取り出した。それがいわゆる新3要件である。個別的自衛権を縛ってきた旧3要件をそのまま集団的自衛権の縛りに使うことで、法的整合性、安定性を担保しようとした。
◇防衛相のボス、山崎拓氏 外相のボス、古賀誠氏 「強行採決はならぬ!」
では、無理筋の人脈とは何か。
最初は高村氏である。氏がここまで新法制に肩入れするのは、安倍政権に貸しを作るメリットがあるからだ。その副総裁兼法律顧問として君臨することは、政権が長期化すればするほどにおいしい立場である。外相経験者として、法制の事実上のプロデューサーである外務省との二人三脚でもある。砂川判決引用も外務官僚の入れ知恵ではないかと私は疑っている。
ただし、論争で誰にも負けたことはない、との過剰な自信がこれからは仇(あだ)になってくる。実は、高村氏のこの強気によって、自民党内での新法制をめぐる議論が十分に行われてこなかった、という落とし穴がある。従来の自民党的な侃々諤々(かんかんがくがく)の論争を結果的に封じてきた。本当に法案を理解しているのは自民党議員の1割だ、と言われるほどだ。この脆(もろ)さが今表面化している。地元に丁寧に説明しろ、と言われても、自信と説得力をもって新法の合憲性と意義を訴えられないのが実態ではないか。
北側氏にとっても複雑な展開だろう。そもそも、公明党がこの集団的自衛権一部容認路線に乗ったのは、自公連立政権から離脱する選択肢がなかったこと、そして、この解釈改憲によって一部容認の道を開くことは、同党が安倍政権下で最も避けたい9条改憲日程をほぼ未来永劫(えいごう)先送りできる、という思惑があったからである。
ことほどさように、憲法についてはとても敏感な組織である。だからこそ、その整合性について丁寧に議論を積み重ねてきた。それがまた一からの蒸し返しである。九仞(きゆうじん)の功を一簣(いつき)に虧(か)く、とはこのことか。いくら執行部が抑えても、支持母体の創価学会で議論が先祖返りしていく可能性は十分ある。
さて、答弁組の2人の無理筋にも触れよう。
中谷氏は、防衛大出身の元陸上自衛官。加藤紘一、今井勇、宮澤喜一氏の秘書から政界入り、軍事力は極力抑制的であるべきだ、とする宏池会を出自にした政治家だ。国防族のボスであった山崎拓氏に加藤氏が預け、山崎氏が国内外あらゆるところに連れ回し、リベラル系の族議員として育て上げてきた。99年、周辺事態法を審議した国会では山崎氏が衆院特別委員長、中谷氏が理事で、山崎、加藤両氏が集団的自衛権の解釈改憲だけは絶対にしてはならない、などと指導してきた、という。
山崎氏とは今でも師弟関係が続く。先日も食事をした際に山崎氏は「今回の法案は絶対に強行採決だけはしてはならない。後顧に憂いを残す」と説得したという。
岸田氏は宏池会の現会長であるが、同派の実質オーナーである古賀誠氏によると、政治家としてはバランス感覚、謙虚さ、誠実さが魅力だという。それゆえに2年前、古賀氏は派閥後継者として、あえて岸田氏を選んだわけだ。
ただ、新安保法制に反対の今の古賀氏の気持ちは複雑だ。岸田氏が外相という立場で推進役に回っているからだ。古賀氏も山崎氏と同様、この安保国会の最大のヤマ場は衆院での強行採決時、と見ている。さすがにそれは許せぬ、と、岸田氏が外相辞任カードを切ることがあるのかどうか。それで秋の総裁選の景色も一変する。
かくして、この人脈の無理筋は重要だ。法案の運命のみならず、政局を直撃する可能性もある。
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■人物略歴
◇倉重篤郎(くらしげ・あつろう)
1953年7月東京生まれ。78年東京大教育学部卒、毎日新聞入社、水戸、青森支局。政治部、経済部。2004年政治部長、11年論説委員長、13年専門編集委員
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