http://www.asyura2.com/15/senkyo186/msg/739.html
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山崎拓(右)やまさき・たく/元自民党副総裁。1972年の衆院選で初当選。防衛庁長官、建設相、党幹事長など歴任。98年に近未来政治研究会結成。現在は同最高顧問。78歳岡田克也(左)おかだ・かつや/民主党代表。1990年の衆院選で初当選。98年、民主党結党に参加。2004年に代表。政権交代後、党幹事長、外相、副総理などを歴任。61歳(撮影/高井正彦)
山崎拓×岡田克也、安保法制に物申す 国会論戦を阻む「ごった煮法案」〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150615-00000014-sasahi-pol
AERA 2015年6月15日号
安全保障関連法案の国会審議が始まったが、議論はかみ合わない。かつて安保論議をたたかわせた2人が、安倍政権の姿勢を批判する。(聞き手/朝日新聞社・林尚行、構成/編集部・宮下直之)
――安倍晋三首相は、自衛隊が海外で米軍などに後方支援できるようになることで、抑止力が高まる一方、自衛隊が戦闘に巻き込まれるリスクは「変わらない」としています。
山崎:リスクの面で特に強調したいのは、国際平和支援法案に基づく自衛隊の後方支援活動です。後方というのは戦闘の前線と一体で、つまり兵へい站たんです。ですから、敵軍は必ず兵站基地である後方をも襲う。
そのとき、自衛隊は武器を使用して防戦する。そうなると、憲法が言うところの武力行使になる。武力行使になれば、それは戦闘行為になるわけで、そこで死傷者が出ないなんて考えにくい。ですから、リスクが高まることは間違いありません。だから私は、自衛隊を後方支援に出すこと自体に反対です。
岡田:同盟関係があることで、抑止力は高まるでしょう。そのことは否定しません。一方、自衛隊の活動範囲を広げることで高まるリスクもある。重要なのは、同盟強化で高まる抑止力とリスクを比較しながら議論をすることです。
それを「戦闘への巻き込まれ論は的外れだ」と、一言で片づけようとする安倍さんには非常に苦労します。法案上は、戦闘が行われている現場ぎりぎりまで自衛隊は武器や弾薬、武装した兵士の輸送もできるようになるわけですから、襲われるリスクが高まらないはずがない。そうした当たり前のことすら認めないから、議論が深まらない。
●滑稽な議論をまことしやかに
――集団的自衛権が行使できる事例に関して、いくつかの例外も明らかになりました。
岡田:中東・ホルムズ海峡の機雷掃海や、敵の誘導弾の基地を攻撃する事例などですね。ただ、この議論には危うさがあります。政府に、なぜそれが例外なのかと質問すると、こうしたロジックだから例外になるといった説明の仕方ではなく、単に例外にしますと言うだけなんです。これでは、政府の都合で次々に例外が出てくる可能性がある。
山崎:機雷掃海に関しては、日本は湾岸戦争で実施したことがあるんです。戦争終結後、現行法制で行ったんですよ。新しい法律を作ったんじゃなくて。だから今でも活動できるんです。ただし、戦争中には行けません。機雷掃海というのは、国際法で武力行使にあたるからです。
では、その戦争が、我が国の国民生活に壊滅的な打撃を与えるほど長く続くかというと、これまでそんな例はない。中東での紛争も、比較的早く終結している。したがって、我が国の石油備蓄量から考えて、機雷がまかれることで壊滅的な打撃を受けることはあり得ません。非常に滑稽な議論をまことしやかにやっている感じがします。
岡田:安倍さんは、ホルムズ海峡が機雷で封鎖されると、日本で「経済的なパニックが起こる」と言った。それを聞いて私は、日本国の首相が言う言葉なのかと、我が耳を疑いました。石油の供給体制に関しては、いろいろな法制度も整備されていますし、必要があれば配給制を敷く準備も政府にはあります。ですから簡単に凍死者、餓死者が出ることもない。首相が言うべきは「絶対にパニックにさせない」という決意のはずです。
●抜け道だらけ 重要影響事態法
山崎:ところで私は、アメリカが日本に集団的自衛権の行使を強く要望していたとは考えていないんです。本当に求めているのは、米軍が有志連合の先頭に立って世界の警察官的役割を果たしているときに、日本もそれに加わることだと思う。イラク戦争(2003年)のときは、「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」という表現で伝えられました。その意味で、今回の安全保障法制のなかで、海外で他国軍を後方支援できるようになる国際平和支援法案が恒久法で出てきたことを、アメリカは一番喜んでいると思います。
岡田:国際平和支援法案は、自衛隊を派遣する前に、国会の事前承認を求めたり国連の決議が必要だったりして、かなり“使いにくい”法律です。だから私はむしろ、周辺事態法を改正する重要影響事態法案に注目しています。これは、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」というあいまいな基準で自衛隊を派遣でき、国会の承認は事後でもよく、国連決議も要らないことになっている。集団的自衛権の行使も問題だけれども、それ以上に問題がある法案だと考えています。
山崎:それは非常に的確な指摘だと思います。二つの法案とも、自衛隊の活動内容はほぼ重なっていますしね。
岡田:国際平和支援法案に基づく自衛隊派遣の“入り口”が公明党との協議で狭くなったので、重要影響事態法案を使い勝手のいい法律として準備したということだと思うんですね。「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」というのは、改正前の周辺事態法とほぼ同じ定義ですが、地理的な縛りがなくなりましたし、日米安保条約との関係も希薄になったので、私はどんな場合でも自衛隊を派遣できる法律になりかねないと思っています。
●自衛隊は外交のツールになる
――安全保障をめぐる国会審議の舞台で、2人は常にキーパーソンでした。01年のテロ対策特措法のときは山崎さんが自民党の幹事長で、岡田さんが民主党の政調会長。03年のイラク特措法のときは2人とも両党の幹事長でした。その頃と比べて、今回の国会審議をどのようにご覧になっていますか。
岡田:一つは急ぎ過ぎ、詰め込み過ぎなんですね。テロ特措法にしたって、土曜日も使って丁寧に議論をしました。それを今回は、テロ特措法の10倍くらいボリュームがある法案を一つに束ねてボーンと出してきて、それを夏までに成立させると言っている。国会審議としては粗くならざるを得ない。
そして、議論不十分のままに自衛隊が海外に出て行くことになる。そこで場合によっては自衛隊員が亡くなったり、相手を殺傷したりする可能性がある。その結果、どういう国民感情が生まれるのか、非常に心配しています。
山崎:今回、十把一絡げに提出された法案のなかには、PKO法の改正案も含まれています。この法案だけでも大きな改正ですから、これだけで一国会を費やすべき筋の話なんです。
これまで自衛隊は、自分や周囲の仲間が危険な場面で身を守る「自己保存」のための最小限の装備で平和維持活動に参加してきた。そのなかで死者は出していないんです。でも今回の改正案では、「任務遂行」時や「駆けつけ警護」でも武器が使えるようになる。かつては、自衛官に機関銃を1丁持たせるか、2丁かといった細かな議論を延々とやりました。それが今回は、任務遂行のためなら、一気にどんな武器でも持って行けるという話になりかねない。
岡田:まったく同感です。今までPKOの武器使用については、苦労して論理を積み重ねながら、その範囲を広げてきた。それがいきなり、次元の違う話になっているんですね。夏までに成立させるとしたら、国会で議論する機会はほとんどない。ただでさえ難解な安全保障の議論なのに、政府は法案を一気に11も出してきて、押し通そうとしている。非常に乱暴な話なんです。
山崎:これは恐らくね、この法案を準備した官僚のやり口だと思うんです。法案を一本一本審議したら大変だから、この際、長年抱えてきた課題を一気に片づけようとしている。あれもこれも入れた、ごった煮のメニューを作って「こんなおいしい料理ができましたよ」と言ってポンと出してきた。で、国会議員は一つひとつの素材を吟味せずにまとめて食べちゃう。この素材に毒が入っているかもしれない、なんてことは考えない。
官僚たちも国会運営に精通していますから、自民一強の今やっちゃおうと。法案の事実上の提出者は、外務、防衛官僚でしょう。なかでも外務官僚は、外交のツールとして自衛隊を使いたがっている。そして対米追随外交が染みついている。外務大臣もおやりになったんですよね。
岡田:はい(笑)。
●国民投票に問うほどの大転換
山崎:私の経験からすると、アフガニスタン戦争のときも、イラク戦争のときも、アメリカの要請は、なんでもいいから自衛隊を出してくれと、日の丸が欲しいと。そういう言い方をしてきました。アメリカの期待がどこにあるかというのを、外務官僚が一番よく知っているんですね。それと、自衛隊は日米共同訓練をやっているんで、米軍と一体になって行動することに抵抗がない。防衛官僚にもそれは言えると思います。
岡田:今回、議論していて思うのは、集団的自衛権の行使を認めたことで、憲法の平和主義の根幹をなす考え方と辻褄
(つじつま)が合わなくなってきているということです。たとえば専守防衛。日本が攻撃を受けてはじめて反撃できるのが専守防衛なのに、いつの間にか、第三国が攻撃を受けたときも反撃できることになっている。しかし、安倍首相は「専守防衛は変わりません」と答弁する。海外派兵についても同様です。他国の領土などでも武力行使するにもかかわらず、「海外派兵はしない」と言っている。
山崎:安倍首相は、俺が言っているんだから正しいんだと、そういう傲慢(ごうまん)な国会答弁をやっているわけです。
岡田:論理がまったく整っていない議論が平気でまかり通っている。戦後、ずっと積み上げてきた平和憲法とその憲法解釈の一つの体系というものが、今、根底から覆されようとしている。
山崎:いや本当にね、安全保障の議論というのは、匍匐(ほふく)前進のように一歩一歩進めてきたんです。それが一気に、自衛隊が地球の裏側まで行くことになった。本来ならば、国民の皆さんに、国民投票によって賛否を問うくらいの大転換なんです。
岡田:国会ではしっかりとした議論ができるように頑張ります。国民の皆さんにも、もっと声を上げてもらいたいですね。
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