自民党案は「論理矛盾」、財政再建で甘利再生相がけん制
2015年 06月 12日 10:24 JST
［東京　１２日　ロイター］ - 甘利明経済再生相は１２日の閣議後会見で、財政再建に関する自民党の特命委員会で取りまとめられる最終案は論理的に矛盾していると指摘した。最終案では２０１８年度における歳出額の目標設定が盛り込まれる見通しだが、それでは経済成長が縛られかねないと反発した。

政府の経済財政諮問会議（議長、安倍晋三首相）は、２０年度の基礎的財政収支（プライマリーバランス、ＰＢ）黒字化に向けた財政健全化計画について、１８年度にＰＢ赤字を国内総生産（ＧＤＰ）比で１％程度まで縮小する中間目標を定めた。

「経済成長なくして財政健全化なし」の基本方針の下、歳出そのものには触れず、成長と絡めた指標を目標にした格好だ。

しかし、自民党特命委の最終案では歳出額の目標設定を明記する方向で、諮問会議の議論とは一線を画す内容になっている。

これに対し甘利再生相は、経済成長なくして財政健全化なしという考え方は政府も与党も共有しており、「歳出を固定するという答案は出てこない」と反論。「経済成長と無関係に歳出を縛るのは論理矛盾だ」といら立ちを隠さなかった。

財政健全化計画は、６月末の閣議決定を目指す経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に盛り込まれる。すでに諮問会議では骨子案が示され、計画の策定に向けて終盤戦に入っている。

一方、環太平洋連携協定（ＴＰＰ）をめぐって、米国の大統領貿易促進権限（ＴＰＡ）法案が下院で採決される見通しとなったことを受け、「可決となればＴＰＰ妥結にとって朗報だ」と評価。「スケジュールがタイトになってきているが、ギリギリ間に合うのではないか」と見通した。

(梅川崇)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OS03Z20150612

消費税率10％、すんなり上げられる雰囲気にする必要＝麻生財務相
2015年 06月 12日 10:53 JST
［東京　１２日　ロイター］ - 麻生太郎財務相は１２日の閣議後会見で、２０１７年４月に予定する消費税率１０％への引き上げについて、すんなり上げられる経済環境にする必要があるとの認識を示した。

財務相は １７年度の消費税率引き上げの環境整備に振れ、「デフレに逆戻りさせないことが一番だ」と指摘。「仮に極端な経済状況になった場合、予定通り２％上げた場合の揺り戻しは、３％上げた後の揺り戻しの騒ぎではなくなる。そういうことにはならないように、２０１７年に、すんなり上げられるような雰囲気、環境にしておくことが必要だ」と述べ、消費税引き上げに耐え得る経済環境作りに努める考えを示した。

＜為替の水準についてはコメントしない＞

日銀の黒田東彦総裁の為替発言を受けて急速に円高が進んだことについては、「為替の水準にはコメントしない」と述べるにとどめた。

黒田総裁は１０日午後の衆院財務金融委員会で「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」と語った。発言を受けて、ドル／円は１２４円台から１２２円台に急落した。

＜１８年度の歳出水準の具体的目安必要、政府内で引き続き調整へ＞

政府・与党が６月末に策定する新たな「財政健全化計画」では、計画期間の中間点である２０１８年度の歳出額の目標を設定するかがあらたな争点として浮上している。

経済財政諮問会議では２０１８年度に基礎的財政収支（ＰＢ）赤字の対ＧＤＰ比を１％程度とすることを目安にする方針は固まったが、麻生財務相はより具体的な示し方が必要と語った。

財務相は「財政健全化計画を国民にも、マーケットにも、国際社会にも具体的説明ができるようにしておかなければならない」と述べ、「２０１８年度の国・地方の歳出の水準について、具体的目安を設ける必要がある」と語った。

さらに「骨太方針の骨子案でも、２０１８年度のＰＢ赤字対ＧＤＰ比以外の目安も使って、歳出改革の進ちょく状況を評価することとされている」とも語り、「計画には、歳出水準についてできるだけ具体的目安が盛り込まれる必要があると考える。引き続き、政府部内で調整を行っていく」と述べた。

＊内容を追加しました。

(吉川裕子　編集：内田慎一)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OS03A20150612

コメント

1. 2015年6月12日 23:05:04 : jXbiWWJBCA 焦点：自民が財政健全化で政府に揺さぶり、政調会長がリード 2015年 06月 12日 20:00 JST ［東京　１２日　ロイター］ - 自民党の財政再建特命委員会（委員長：稲田朋美政調会長）は２０２０年度の基礎的財政収支（ＰＢ）黒字化に向けて、中間点の１８年度の歳出額の目標設定を盛り込むべきとする提言をまとめた。より具体的な目標設定で計画の実効性を高めるのが狙い。 歳出改革に及び腰になりがちな党をまとめた稲田氏の「突破力」が、財政再建計画の中味を大きく変えようとしている。 特命委員会の決定は近く自民党の総務会で了承され、１６日午後には安倍晋三首相に提出される見通し。歳出削減などで数値目標の設定に否定的な経済財政諮問会議に再考を求める内容で、対決色が鮮明になっている。 ＜歳出額の目標設定盛り込みを明記、歳出改革中心の姿勢貫く＞ 特命委員会は１２日午後の会合で、最終報告書案を大筋了承した。報告書は、より具体的な計画の策定を求め、「１８年度の歳出額の目標設定」を設けることを盛り込んだ。政府・与党は、同年度の基礎的財政収支赤字を対国内総生産（ＧＤＰ）比１％程度に引き下げる中間目標を設けることで合意しているが、これに加えて国・地方の歳出の目安を設け、財政規律の緩みを防ぐことを狙う。 歳出の目安として、安倍晋三政権の３年間の実績を踏まえ、「これまでの実質的な増加ペースを拡大させない水準」とすることも明記。分野別では、定性的に歳出の枠を想起させる文言を盛り込み、社会保障費は高齢化の伸び程度に、非社会保障費はほぼ横ばいとする方向性を堅持した。 諮問会議が経済成長を重視し、将来の歳出・歳入を固定的にとらえることに慎重な立場とは一線を画し、特命委員会は、経済成長だけではＰＢ黒字化のメドが立たないとし、歳出改革を中心とした議論が重要との姿勢を貫いている。 その中で、特命委員会が重点的に指摘したのは、高い成長率と税収弾性値を前提に税収増を見込んだ諮問会議のスタンスだ。「不確実な税収増の議論や、歳出抑制の先送りの議論は政府・与党の責任放棄として国民や市場からの信頼を失う」と明確に批判した。 もっとも、歳出改革の各論では、党内をまとめることを優先した。今後検討すべき課題を網羅的に列挙するにとどめ、具体的な削減効果などを明記することを見送った結果、計画の具体化の不透明感は残った。 ＜「雨乞いをしてＰＢ黒字を達成させる」話ではない＞ 稲田氏が重視したのは「実効性と堅実性」。１２日の会合でも「当てにならない成長を当てにして、雨乞いをしてＰＢ黒字を達成させるという話ではなく、きちんと道筋を立てていくのが私たちの責任だ」と諮問会議をけん制。 決めるのは「選挙で選ばれたここにいる政治家の責任だ。選挙で選ばれていない民間議員や役所ではない」と、政治の責任を繰り返した。 内閣府は稲田氏に「１８年度の歳出額の目標設定」を提言から落とすよう働きかけたが、稲田氏はこれを突っぱね、 経済再生と財政再建の「二兎を追って二兎を得る」政策について、具体的な道筋を示すことに徹した。 ＜党の機関決定に格上げで、内閣府との対立鮮明に＞ 特命委員会の提言は、１６日の政調審議会・総務会に諮り、自民党の機関決定に格上げされる見通し。 この結果、総務会の事前了承が必要となる政府の「経済財政運営の基本方針（骨太の方針）」に、特命委の提言の内容が盛り込まれる可能性がより現実味を帯びてきた。 ただ、首相官邸や内閣府では、こうした方針では経済の腰折れを招く恐れがあると反対する声が根強い。甘利明経済再生相は１２日の会見で「歳出を固定するという答案は出てこない」、「経済成長と無関係に歳出を縛るのは論理矛盾だ」と反発した。 だが、特命委の報告書が総務会の了承を得る道筋が付いたことで、財政健全化をめぐる政府・与党内の「勢力図」が、土壇場で大きく変わろうとしている。 「成算があるとみると、ギアが入って、これまでより踏み込んで成し遂げる突破力がある」と特命委メンバーが語るように、稲田政調会長の政治力が骨太の方針の中味を大きく変えようとしている。 (吉川裕子　編集：田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OS13E20150612?sp=true

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