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「アジアの皇帝」を目指す習近平主席〔PHOTO〕gettyimages
チャイナ・リスクに備えよ!中国共産党の大物が語った「8月、安倍は習近平にひれ伏す」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43699
2015年06月11日(木) 週刊現代 :現代ビジネス
中国14億人のトップその頭の中を裸にする
本誌編集次長 近藤大介
二階訪中団の熱烈歓迎、南シナ海の埋め立て、AIIB創設、日本の有事法制非難……安倍首相が最大のライバルと意識する習近平主席のホンネに迫った核心インタビュー。日中の未来やいかに?
■中国の夢は強国、強軍
隣国の14億の民を率いる習近平という指導者は、いったい何を考えているのか?
習近平外交を熟知する中国共産党の幹部に、匿名を条件に緊急インタビューを行った。以下はその一問一答である。
*
—中国は5月26日、2年ぶりに国防白書を発布した。『中国の軍事戦略』と書かれているが、A4判で、わずか25ページ。こんな取って付けたような『国防白書』を出した意図は何か?
「アメリカ国防総省が5月8日に、『中国を含む軍事安全の発展2015』と題した年次報告書を、連邦議会に提出した。今年の報告書では、わざわざ南シナ海の項目を立てて、中国が5ヵ所の前哨基地を建設中で、危険が迫っているなどと書いてある。
アメリカ軍は毎年、この時期に多額の軍事予算を確保するため、中国の脅威を煽り立てる。今年も5月15日に、6120億ドル(約73兆円)という膨大な軍事予算を、議会に承認してもらった。
こうしたアメリカの一方的な『煽動行為』に対して、わが国も対抗措置を取ったのだ」
—今回の「軍事戦略」を読むと、次のような気になる記述がある。
〈中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現する。中国の夢は強国の夢であり、軍隊で言えば強軍の夢だ。強軍になって初めて国を防衛できる。強国には強軍が必要なのだ〉
まさに中国は、アジアの覇権を狙っているのではないか?
「今回の『軍事戦略』は、習近平主席が自ら赤鉛筆で細かく修正を入れたと聞いている。習主席が言いたいのは、次のようなことだ。
わが国は1840年までは、世界最大の文明国家だった。それが1840年のアヘン戦争でイギリスに敗れ、1894年の日清戦争で日本に敗れた。
こうした『屈辱の100年』を経て、1949年に中国共産党が新中国を建国した。
そして21世紀に入ったいま、世界第二の経済大国となり、『二つの100年』という国家目標を定めた。2021年の中国共産党創建100年までに、アジアの強国になる。2049年の新中国建国100年までに、世界の強国になるというものだ」
■安倍は「大型の金正恩」
—中国の平和的発展は、日本としても望むところだ。
だが最近の中国は、アジアを不安がらせる行為に出ている。3月16日にCSIS(米戦略国際問題研究所)が写真を公表したように、中国は南シナ海の岩礁で、次々に埋め立て工事を行っている。護岸工事を行い、滑走路を築き、軍事基地を建設するつもりではないかと、日本や周辺諸国は懸念している。
「わが国固有の領土で、わが国がどんな建造物を造ろうが自由ではないか。それを他国が非難するのは、内政干渉というものだ。
日本こそ安保法制という名の『戦争法案』を制定し、再びアジアを侵略するのではないかと、アジア各国は警戒している。わが国が提唱しているAIIB(アジアインフラ投資銀行)に、アジアで日本だけが参加を拒否しているのも、再び侵略する意図があるからではないかとの疑念も出ている」
—安保法制とAIIBへの不参加は、何の関係もないでしょう。
習近平主席は、安倍晋三という政治家を、どう見ているのか。
「順を追って話そう。
習近平主席は、いやこれは多くの中国の政治家が同様だが、個々の日本の政治家を、『中国の味方』か『中国の敵』かで二分して考える。
ごく単純化して言えば、靖国神社に参拝する政治家は敵で、参拝を忌み嫌う政治家は味方だ。つまり、小泉純一郎、安倍晋三らは『敵』で、福田康夫、鳩山由紀夫らは『味方』だ。
'12年末に安倍政権が誕生して半年くらいは、安倍首相は、国会答弁などで右翼的発言を繰り返していた。
この頃、金正恩第一書記率いる北朝鮮も、長距離弾道ミサイルの発射実験や核実験を強行した。
そのため習近平主席から見れば、東のほうに、金正恩という物騒な『敵』がいる。そのまた向こうに、もう一人の『大型の金正恩』とも言うべき物騒な政治家がいる。そんなイメージだった」
—ということは、安倍首相と金正恩第一書記を「同列」に見ていたということか?
「その通りだ。その見方は、'13年12月26日に、安倍首相が突如、靖国神社を参拝したことで、ピークに達した。
実はあの日は、習近平主席が誰よりも尊敬する故・毛沢東主席の生誕120周年記念日で、習主席も部下たちを引き連れて、天安門広場の毛沢東廟を『参拝』していたのだ。
参拝を終えて毛沢東廟から出てきたら、秘書が血相を変えて現れ、『安倍首相がいまから靖国神社を参拝します』と告げた。習主席としては、安倍首相はまさに自分に当てつけて、この日この時刻に参拝したかと思い、敵意を剥き出しにしたことだろう。
昨年11月に、苦虫を噛み潰したような表情で安倍首相と握手したのは、その時の恨みを忘れていなかったからだ」
■いまは大人しくしてるだけ
—習主席が「味方」と考える二階俊博自民党総務会長が、5月下旬に3000人を率いて訪中した。5月23日には北京の人民大会堂で、習近平主席が会見に応じた(右写真)。二階氏らが出発する1週間くらい前になって突然、習主席が会見に応じると言ってきたそうだが、どういう意図だったのか。
「あくまでも個人的な意見だが、習主席の意図は、主に3つあったように思う。
第一に、アメリカの一部が、南シナ海の岩礁の埋め立て問題をことさらに騒いで、中米関係にさざ波が立った。そのため日本との関係を、一時的にでも修復させたほうがベターだと判断したのだろう。
第二に、中国経済が悪化していることだ。特に日本向け輸出は、4月の最新データで、前年同期比マイナス12・9%と、他の地域に較べて最も落ち込みが激しかった。早く中日関係を改善して、国内の景気回復に役立てたいのだ。
3番目は、オリンピックの問題だ」
—オリンピック問題?'20年の東京オリンピックのことか。
「そうではなくて、その2年後の'22年の冬季オリンピックだ。
周知のようにわが国は、'08年に北京オリンピックを開催した。当時、国家副主席になったばかりだった習主席は、胡錦濤主席を補佐しながら、オリンピックがいかに国威発揚になるかを思い知った。
そこでどうしても、故郷の北京で、もう一度オリンピックを開きたいのだ。
習主席は'12年11月に中国共産党トップの総書記に就き、翌'13年3月に国家主席に就いたので、それぞれ10年後に、次世代の政治家にバトンタッチせねばならない。その意味で'22年は、習近平時代の集大成の年であり、最後に錦を飾りたいのだ。
北京が'08年にオリンピックを開催したばかりであること、'18年の冬季オリンピックが、隣国・韓国の平昌で開かれることなどから、当初は北京が『無謀な立候補』と思われていた。
ところが、世界の6都市が名乗りを挙げた後、スウェーデンのストックホルム、ポーランドのクラクフ、ウクライナのリヴィウ、ノルウェーのオスロの4都市が、財政難や政情不安などを理由に撤退してしまった。
残るは北京と、やはり隣国カザフスタンのアルマトイだけとなった。習近平主席はこの5月7日、カザフスタンを訪問したばかりだが、『敵状視察だ』『いや、盟友のナザルバエフ大統領を(断念するよう)説得に行ったのだ』などと、北京で噂が立ったほどだ。
開催地は、7月31日にマレーシアで開かれるIOC総会で決まる。中国が勝利するには、平和の祭典にふさわしいイメージ作りと、すでに'20年の夏期オリンピックを決めている日本の協力が大事なのだ」
■アジアは中国に任せろ
—4月22日にインドネシアのジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議60周年記念式典でも、日本側が求めていた安倍首相と習主席の日中首脳会談に、中国側は直前になって応じた。その時も、オリンピック招致が目的だったのか?
「もちろん、それは理由の一つだ。だがあの時は、それ以外に二つの目的があった。
一つは、日本にAIIBに入ってほしいと、習主席から安倍首相に、直接誘ってみようとしたのだ。4月15日に、57ヵ国の創設時の参加が確定したからだ。
中日首脳会談を行った4月22日の時点で、アジアでAIIBに不参加なのは、日本と北朝鮮の2ヵ国くらいだった。
北朝鮮に関しては、申請してきたが、こちらから断った。『アジアのギリシャになっては困る』というのが各国に説明した理由だが、実際のところは習主席が金正恩第一書記を、毛嫌いしているからだ。
中国人は金正恩第一書記を、『金三胖』という蔑称で呼んでいる。『金一族の3代目のデブ』という意味だ。本当に、困った若造だ」
—AIIBに関して言えば、安倍首相は、日本が主導しているADB(アジア開発銀行)と同レベルのガバナンス(統治)や透明性が確保できないとして、参加を見送った経緯がある。
「たしかに安倍首相はそう主張し、習主席のジャカルタでの説得は、不調に終わった。だが結局、アジアで孤立して損をするのは日本の側だ。
もう一つの習主席から安倍首相への誘いは、9月3日に北京で挙行する抗日戦争勝利70周年記念の軍事パレードへの招待だった。だがこちらも安倍首相は、首を縦に振らなかった」
—それは当然だろう。中国政府は、人民解放軍が民主化運動を弾圧した1989年の天安門事件の総括も行っていない。そんな中で、天安門事件が起こった場所で軍事パレードを見物するというのは、西側の民主国家には酷な注文ではないか。
「それなら、前日の2日に、天安門広場西側の人民大会堂で開くレセプションにだけでも来てくれればよいのに」
—南シナ海の話をもう少し聞かせてほしい。中国がこのまま岩礁の埋め立てを続ければ、アメリカ軍が出動する可能性があるのではないか。
「それはあり得ない。第一、あんなちっぽけなアジアの無人島のために、アメリカが年間5000億ドルを超えるアジア最大の中国市場を棒に振ると思うか?
中国は日本とともに、世界最大のアメリカ国債の保有国でもある。
アメリカとは、6月下旬の中米戦略・経済対話で、きっちりと話し合う。外交安保の責任者であるライス大統領補佐官も、まもなく訪中する。
習主席は、アメリカと『新たな大国関係』を構築すると、2年前から言い続けている。これは、太平洋は広大だから、西太平洋(東アジア地域)は、中国に任せてほしいというメッセージだ」
■米中が組む日が来る
—だが日本を始め、西太平洋を中国には任せられない、あるいは任せたくないという国が多いから、騒動が起こっているのではないか。
「本当にそうだろうか?アジアの国々は、中国が主導してインフラ整備をしてほしいから、AIIBを熱烈歓迎したのだ。
習主席は、『一帯一路』という周辺外交政策を打ち出している。これは、中国から陸路で中央アジア、ロシアを経てヨーロッパへ抜ける『シルクロード経済ベルト』(一帯)及び、中国から海路で南シナ海、インド洋に抜けてヨーロッパを目指す『21世紀海上シルクロード』(一路)から成っている。
中国が主導するAIIBを通じて、この『一帯一路』に、巨大インフラを構築するのだ」
—その「一帯一路」構想に、日本が抜け落ちているのはなぜか?
「日本はどのみち、AIIBに参加する気がないではないか」
—アジア太平洋地域の最重要国とも言えるアメリカも、抜け落ちている。
「つまりアジアのことは中国に任せてほしいということだ。
習主席は9月下旬に、ニューヨークの国連本部で、国連創設70周年記念演説を行った後、そのままワシントンを訪問する。アメリカ訪問には、たっぷりと『お土産』を用意していく。
その時、アメリカもAIIBに参加すると表明するかもしれない。そうしたら、日本はどうするつもりなのか?」
—アメリカは、AIIBより、日米が中心となるアジア太平洋地域の自由貿易の枠組みであるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)を優先させると表明している。5月22日には米議会上院で、TPA(大統領貿易促進権限)法案が可決され、交渉妥結に向けた大きな峠を越した。
「TPPは、日本とアメリカが2年も、真剣に交渉しているが、まだ締結できないではないか。日米の妥結を待っている他の10ヵ国は、呆れている。
わが国はアメリカと現在、年末のIMF(国際通貨基金)総務会で、人民元にSDR(特別引き出し権)を与えることを話し合っている。すでにラガルドIMF専務理事の承諾を得ており、年末に人民元が、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドに続いてSDRを獲得するだろう。人民元は晴れて国際通貨となり、アジアを代表する通貨が、日本円から中国人民元に取って代わる通過点となるのだ」
—だがアメリカは、反対しているのではないか。'10年末にIMFが決めた議決権の改正(中国を6位から、米日に続く3位とする改正)も、アメリカ議会が批准しないため、4年半経った現在でも発効されていないほどだ。
「3月下旬にルー財務長官が訪中した時、そのことも話し合った。
6月下旬に57ヵ国代表が北京に集まり、AIIBの設立協定を締結する。同時期に中米戦略・経済対話を行い、8月には翌月の習近平主席訪米の概要が固まる。
習主席は、7月末日にオリンピック招致さえ決めれば、アメリカとの直接交渉によって、どんどんアジアの物事を両大国で決めて行く気でいる。中米両大国の急接近によって、8月15日の『安倍談話』など吹っ飛んでしまうに違いない。
戦後70周年の8月は、安倍が習近平にひれ伏す月となるのだ」
「週刊現代」2015年6月13日号より
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