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欺瞞の上に欺瞞を重ねる安倍政権の安保政策と日本の不幸
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakayoshitsugu/20150610-00046531/
2015年6月10日 22時50分 田中良紹 | ジャーナリスト
4日の衆議院憲法審査会に参考人として呼ばれた3人の憲法学者全員が安保法制を「違憲」と証言した事で、安倍政権は直ちに「反論」を開始したが、戦後日本の欺瞞的な安全保障政策にさらに欺瞞を重ねるようで、目を背けたくなる醜悪さである。
日本は1945年にポツダム宣言を受諾して敗戦した。ポツダム宣言は日本に軍の武装解除、民主主義の強化、基本的人権の確立、平和主義に基づく政府の樹立などを要求し、それを受け入れた日本は戦前の大日本帝国憲法を改正して日本国憲法を成立させた。従って日本国憲法の基本原理は「国民主権」と「基本的人権」と「平和主義」にある。
日本が再び戦争に敗れるか革命でもない限り、つまり体制の根本的な転換がない限り、日本国憲法は「国民主権」と「基本的人権」と「平和主義」の三原理を変える事を許されない。従って憲法改正は三つの原理の枠内において行われ、憲法改正によって「平和主義」が破壊されると考えるのは誤りである。
「平和主義」の根幹である憲法9条には一項と二項がある。一項は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と「戦争放棄」を謳っている。
これは第一次世界大戦後に国際社会が締結した「パリ不戦条約」の思想に基づく。しかしパリ不戦条約は自衛のための戦争を否定せず、そのため自衛を口実に第二次世界大戦が起きた。戦争放棄した国に代わって国際連盟が侵略を防止するメカニズムを機能させる事もできなかった。
9条二項には「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とあり、これは自衛のための戦争も否定しているように読める。日本は自衛も許されないほど徹底した武装解除をされた事になる。そしてここにその後の日本の安全保障政策を著しく欺瞞的なものにした原因がある。
9条二項を憲法に加えさせたのは連合国軍総司令長官ダグラス・マッカーサーである。マッカーサーは非戦闘員を大量に殺戮した原爆投下や大都市空襲に対する日本国民の恨みを怖れていたと言われ、米国に対する報復力を将来にわたり徹底して抑え込む事を考えていた。
そして日本国民の恨みが米国ではなく戦前の軍国主義者に向けられるよう、日本人向けに「戦争の罪悪感を植え付ける情報プログラム」を展開したのである。従って私は9条二項を平和を目的とした条項と受け止めることが出来ない。これは日本を永久に従属させるための日本無力化政策そのものと考えている。
1950年、朝鮮戦争が始まると米国は日本政府に三十万人という大規模な再軍備を要求してきた。米国は朝鮮戦争に米国軍人ではなく、日本人の血を流させようとしたのである。吉田茂は9条を盾に再軍備を拒否、代わりにGHQが公職追放の対象にした軍需産業を復活させ、武器弾薬を提供する事で戦争に協力した。またそれは日本経済復興の端緒になった。
日本の再軍備に失敗したGHQは国内治安を名目に警察予備隊を作らせ、それが後に自衛隊となる。平和憲法が軍隊を作らせなかった訳だが、国際法に縛られる軍隊と国内法に縛られる自衛隊とでは原理が全く異なる。その自衛隊を一から育て上げたのは米軍で、だから米国から見れば自衛隊は軍隊である。しかし自衛隊が警察的原理を持つところに戦後日本の欺瞞はある。
1957年の砂川事件で、在日米軍は9条二項に違反する「戦力」に当たるという訴訟が起きた。一審で「違憲」の判決が下り米国は慌てる。当時の駐日米国大使は日本の外務大臣や最高裁長官と面談して外交圧力をかけ、最高裁は「9条は主権国として固有の自衛権を持つことを否定していない」との判断を下す。そして在日米軍の存在も認められた。
9条二項が交戦権を否定しているにも関わらず、日本は個別的自衛権を有していると判断され、また在日米軍基地の存続も認められた。しかしその背後で日本国憲法の重要な原理の一つである「三権分立」がなし崩しにされていたのである。何のための憲法なのか、誰のための憲法なのかという気になる。
米国は日本を平和国家にするためではなく、軍事力を封じ込めて米国の脅威にさせないために9条二項を憲法に盛り込んだ。しかし冷戦が始まると9条二項がむしろ邪魔になる。アジアで繰り広げられる戦争に日本人の血を流させ米国の防波堤にすることができなかったからである。
一方、米国の戦争に巻き込まれるのを防ぐため、日本は憲法改正を一度もやらずに平和主義を貫いた。そのため自主憲法制定を掲げる自民党が実は水面下で社会党と手を組み、憲法改正を阻止できる三分の一の議席を社会党に与えてきた。吉田茂はそうした裏工作を行い、岸信介の安保改定の際も自衛隊が米国の戦争に参加させられない事を確認したうえで岸に協力した。
当然ながら日本のこうした姿勢は米国の反発を招く。経済的繁栄だけを追及して国際貢献に力を入れない「一国平和主義」は強い批判を浴びるようになる。そこで欺瞞の根源とも言える9条二項を削除し、自衛隊を軍隊にして、しかし9条一項の「戦争放棄」は守る事で「普通の国」をなろうとする動きもあった。
世界有数の「戦力」を持ちながら、欺瞞でしかない憲法を護持するのではなく、国連の平和維持活動に協力し、同時に自らの意志で「戦争をやらない国」になろうとしたのである。ところが我が国には憲法改正に感情的とも言える強い反発があり議論する事すらできなかった。その反動が安倍政権による「解釈改憲」だと私は思う。憲法改正の議論を受け付けない勢力がいるので、それならナチス的手法で目的を遂げようという訳だ。
だから安倍政権は憲法改正を堂々と主張せず、「平和主義」を声高に叫んで「平和ボケ国民」の反発を和らげ、主権国家には自衛の権利があるとしてぎりぎり認められてきた個別的自衛権を装って米国の望む集団的自衛権を憲法に落とし込もうとしている。
繰り返すが、護憲派が神聖視する憲法9条の中には日本を永続的に従属化する米国の意思が隠されていると私は考えている。そして9条に端を発する安全保障政策の欺瞞性が、遂に来るところまで来たとも感じている。解釈改憲による集団的自衛権の行使容認は、65年前に日本人兵士三十万人を朝鮮戦争に動員しようとして果たせなかった米国の念願を実現させる直前にまで来た。
しかし頑なな護憲論議がナチス的手法を招き、欺瞞の上に欺瞞を重ねる安保政策を生み出すのだとすれば、この国は不幸の連続の中にある。
田中良紹
ジャーナリスト
「1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、日米摩擦、自民党などを取材。89年 米国の政治専門テレビ局C−SPANの配給権を取得し(株)シー・ネットを設立。日本に米国議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年からCS放送で「国会TV」を放送。07年退職し現在はブログを執筆しながら政治塾を主宰」
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