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自民特命委最終案の全容判明、「歳出改革にひるんではならない」
2015年 06月 10日 22:01 JST
[東京 10日 ロイター] - 自民党の財政再建特命委員会(委員長:稲田朋美政調会長)の最終報告案の全容が10日、明らかになった。
政府・与党が6月末に策定する新たな財政健全化計画では、中間年度となる2018年度における歳出額の目標を設定し、16年度予算から手を緩めることなく集中的に歳出改革を行うことを求めている。
報告書案では、歳出改革の目安の設定を避け、税収弾性値の議論などを引き合いに出して歳入改善を強調する政府の経済財政諮問会議の議論をけん制。「不確実な税収増の議論や歳出抑制の先送りの議論は、政府・与党としての責任放棄として国民や市場からの信頼を失う」と指摘。
報告書の提言が「政府の『骨太の方針』に具体的かつ明確に盛り込まれることを当然の前提とする」と、強いトーンで政府の検討作業に注文を付けている。
報告書案は、5月13日に公表した総論の中間整理と、その後検討を行ってきた歳出改革の具体策を合体させた内容。内閣府試算による「楽観的な経済前提」でも、2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は9.4兆円の赤字が残り、自民党特命委では「経済成長だけではPB黒字化のメドがたたないことは明らか」とし「歳出改革を中心とした議論が重要」と訴えてきた。
これに対して、経済財政諮問会議の議論は、健全化に至る工程のあいまいさが残り、特命委員会の議員からも「緩い」との声が挙がっていた。
10日の諮問会議では、民間議員からは新たに策定する「財政健全化計画」の歳出・歳入改革について、高い成長率を前提とする「経済再生ケース」で弾き出した歳出より伸びを抑制し、歳入は企業の新陳代謝などでより税収が増加するシナリオを前提に改革を進める方針を提案した。
歳出の伸び抑制の目安となる「上限」などキャップは設定せず、計画期間の中間点である2018年度に進ちょく状況を評価することで、実効性を高める狙いを強調している。
この最終報告書案は、諮問会議の検討に再考を求める文面で締めくくられる異例の構成になっている。
さらに歳出改革の具体策を着実に実行することによって「安倍政権のこれまでの歳出改革を継続・強化していくべきだ」とし、「こうした歳出改革に政府・与党が怯む(ひるむ)ことがあってはならない」と断じた。
また、「政府は不確実な税収増の見通しの議論に終始するのではなく、これまでの実質的な増額ペースを拡大させない水準で、大くくりの歳出目標を設定することが必要だ」と指摘。
「当面は集中的に歳出改革を行うとしても、2020年度に向けた中間段階で評価を行い」、あらためてその後の歳入・歳出を通じた財政面の対応を検討する枠組みとすべきとしている。
そのうえで、「中間年度となる2018年度における歳出額の目標設定を行い」計画の実行性をあげるとともに、初年度の2016年度予算から「手を緩めることなく集中的に歳出改革を行うことが不可欠」とした。
一方で、「2017年度の消費税率引き上げ後の反動減など経済情勢への機動的対応を妨げないことも重要」とし、再増税後の経済情勢次第では追加財政出動も辞さない考えをにじませている。
報告書は「経済再生なくして財政再建はない。同時に、成長戦略による経済の好循環の実現や、持続的発展のためには財政に対する市場の信認と社会保障制度の安定が不可欠である」とし、「経済再生と財政再建の好循環を実現するためにも、問題を先送りすることなく、改革を進めていく必要がある」とも指摘し、経済再生偏重にも釘を刺している。
報告書は、「(経済再生と財政再建の)二兎を追って二兎を得ていく具体的な道筋を示すことで、責任を果たしていく」とする政治の覚悟で締めくくった。
報告書案は自民党内で最終協議し、週明け早々には最終決定される予定。政府は6月30日にも骨太の方針を閣議決定する予定で、政府方針への確実な反映を求めている。
(吉川裕子 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OQ1IA20150610
歳出改革、公的サービスの産業化等への取り組みで=骨太方針骨子案
2015年 06月 10日 18:36 JST
[東京 10日 ロイター] - 政府は10日開催された経済財政諮問会議に「経済財政運営と改革の基本方針2015」の骨子案を提示した。その中で、今後5年間を対象期間とした「経済・財政再建計画(仮称)」を策定。
歳出改革については「公的サービスの産業化」「インセンティブ改革」「公共サービスのイノベーション」に取り組むことを柱に据えた。歳入改革では、消費税率の10%への引き上げを2017年4月に実施することと、「経済構造の高度化、高付加価値化」を進めることを通じて新たな歳入増を実現することを掲げた。
こうした基本的考え方を推進し、2020年度には基礎的財政収支(PB)黒字化を実現することとし、PB赤字対国内総生産(GDP)比を縮小。債務残高のGDP比を中期的に着実に下げることを目標に挙げた。
改革のメルクマールとして、18年度までを「集中改革期間」と位置づけ、専門調査会を設置し、改革の慎重な管理や評価を行う。その際、18年度のPB赤字の対GDP比1%を目安とする。
消費税率引き上げを予定する17年度に向けては、「その円滑な実施に必要となる経済環境を整えるため、必要に応じ機動的に対応」との文言も盛り込んだ。
主要分野の改革で焦点となる社会保障分野では、経済再生と財政健全化および制度の持続可能性確保の実現を目指した改革を行うとした。そのために、医療・介護提供体制の適正化、インセンティブ改革による生活習慣病の予防・介護予防、公的サービスの産業化の促進、負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化、薬価・調剤等の診療報酬にかかる改革および後発医薬品の使用促進を含む医薬品にかかる改革に取り組むとした。
社会資本整備では、人口減少を踏まえて重点化した取り組みを進めるとともに、優先度や時間軸を明確にするとした。また公共施設運営でストック量を適正化。コンセッション方式など多様なPPP(官民パートナーシップ)・PFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)の拡大に取り組む。
計画の初年度に当たる16年度の予算編成に向けた基本的考え方として、経済好循環を確かなものとして、地方にアベノミクスを早く行き渡らせるため、早期の予算執行と賃金上昇の定着、投資促進の環境整備に取り組む。また、制度改革を大きく前進させるとした。歳出面の無駄排除、厳しい優先順位付けを行う一方、歳入面では課税ベース拡大等による税収拡大と、課税インフラ整備、税外収入確保を着実に進める。
また諮問会議では、民間議員らが財務省の予算編成プロセスを見直すよう提案した。この提案では、諮問会議の専門調査会が各府庁の予算を評価し、それと連携しつつ財務省が予算編成を進めることになる。
民間議員の提案の狙いは、概算要求基準について、従来のように分野ごとに予算枠を設定する形をやめ、社会保障関係費、義務的経費、裁量的経費にかかわらず公的サービスの産業化やインセンティブ改革に取り組み、歳出効果の高い歳出(ワイズスペンディング)に転換を促す仕組みを目指すことにある。来年度概算要求から実施し、歳出改革を最大限盛り込むとしている。
経済・財政の一体改革に向けた歳出改革では、今後5年間を対象期間とし、上記のような歳出改革の効果が発揮されることにより賃金・物価上昇率を下回る伸びが想定されるとして、名目3%・実質2%の「経済再生ケース」に比べて歳出抑制が図れるとの考え方を示した。
歳入面でも企業の新陳代謝、就業者の所得向上が進むことや、公的部門の民営化などの効果により経済活動における民間企業のシェアが高まることを念頭に、歳入の追加的効果を見込む。
2018年度の中間評価時点で、基礎的財政収支の対国内総生産(GDP)比を1%程度の赤字まで改善させることを目安とするが、国の一般歳出については、社会保障の高齢化による増加分を除き「増加を前提とせず歳出改革に取り組む」とした。
カギとなる社会保障関係費については「高齢化要因も考慮し、安倍内閣におけるこれまでの増加ペースを踏まえつつ、消費税率引き上げに伴う充実を図る」との方針を示した。
ただ、各年度の歳出については、一律でなく柔軟に対応するとした。
(中川泉)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OQ0X020150610
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