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2015年6月 9日
沖縄県の翁長雄志知事が普天間基地の辺野古移設反対を訴えるために訪米したが、目立った成果を上げられずに帰国した。
メディアの多くは翁長氏の訪米失敗と伝えている。
報道自体はバイアスがかかったもので、一種のネガティブ・キャンペーンが張られているのは事実だが、現実に、具体的な成果を得られなかったことも事実である。
翁長氏サイドは米国政府の局長級ポストの人物との面会を求めたが、米国政府は格下の部長や次官補代理代行を面談者に起用した。
米国政府としては、日本政府と「辺野古が唯一の選択肢」であるとしていることから、知事が訪米しても、基本的には有効性がないとの立場を貫いたかたちである。
しかし、この事態は、訪米前からすでに明らかだった。
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主宰者の乗松聡子氏は5月16日付の琉球新報に
「翁長知事への提言」
と題して、訪米に際しての翁長氏の行動について、建設的で説得力のある主張を提示していた。
乗松氏は4月下旬に沖縄県選出の生活の党衆議院議員である玉城デニー氏のワシントンでのロビーイングに同行している。
2016米会計年度国防権限法案を審議中の上院軍事委員会のメンバー議員と面会して、辺野古新基地を中止するよう法案に影響を与えることが目的であったという。
しかし、厳しい現実に直面した。
議員本人との面談が実現したのはグアムの下院議員のみで、上院軍事委では委員長のマケイン上院議員を含む議員との面談は実現しなかったという。
面会できた議員補佐官や軍事委員会の調査官などとの接触から得られた共通の認識は、2013年末に仲井真前知事が埋め立て承認したから、計画は進んでいるというものだった。
米国上院軍事委員会の超党派議員は、2011年に沖縄米軍の再編計画を「非現実的、実行不可能、財政的に負担困難」として、国防総省に再検討を申し入れたが、仲井真知事の埋め立て承認を受けて立場を変更していた。
グアム移転費用も凍結されていたが、仲井真氏の埋め立て承認以後に解除されたという。
つまり、米国の判断は、沖縄県知事が埋め立て申請を承認したことで、問題が決着したというものである。
このことは、安倍政権の菅義偉官房長官のこれまでの発言と符合するものである。
菅義偉官房長官は昨年9月10日の記者会見で次のように発言した。
「最大の関心は沖縄県が(辺野古沿岸部の)埋め立てを承認するかどうかだった。知事が承認し粛々と工事しており、もう過去の問題だ。争点にはならない」
「過去18年間で、県知事も市長も移設賛成の方がいた。そうした経緯の中で、仲井真知事が埋め立て承認を決定した。そのことで一つの区切りがついている」
辺野古米軍基地建設に対して、何よりも強い影響力を発揮しているのが、沖縄県知事による埋め立て申請承認なのである。
しかし、この埋め立て申請承認は、正統性を欠くものである。
2010年の沖縄県知事選で、仲井真弘多氏は、県外移設を公約にして選挙を戦った。
仲井真氏は沖縄県民に対して「辺野古に基地を造らない」ことを約束して知事に就任しているのであり、仲井真氏の埋め立て申請承認自体が、背徳の、正統性を持たない行動だったのである。
この状況を背景に、昨年11月の沖縄県知事選では、仲井真知事の埋め立て申請承認の是非が問われることになった。
そして、結果は「辺野古基地NO」というものになったのである。
翁長雄志氏は
「辺野古に基地を造らせない」
ことを明言して知事に選出された。
したがって、翁長氏は「辺野古に基地を造らせない」という現実に対して責任を負っている。
最終的に翁長氏は、「辺野古に基地を造らせない」という公約を実現できるかどうかによって評価されることになる。
この公約を実現するには、実効性のある行動、知事権限の行使が必要不可欠である。
鍵を握るのは「埋め立て申請の承認」である。
だからこそ、私は知事選の段階から、
「埋め立て承認の撤回および取消の確約」
が必要不可欠であることを訴え続けてきた。
乗松氏は上記寄稿記事において、翁長氏の訪米の成果を高めるには、訪米前に埋め立て承認をまず撤回することが必要であることを訴えた。
世界の識者15名も、本年1月23日に、翁長知事に対して、訪米前に埋め立て申請承認を撤回するべきであることを手紙に記して送付した。
しかし、翁長氏は、依然として埋め立て申請承認を「撤回」していない。
訪米前に翁長氏は、埋め立て承認について、有識者委員会から取り消しが提言されれば「取り消すことになる」と明言したが、
「辺野古に基地を造らせない」
が本気であるなら、まずは知事選結果を踏まえて埋め立て承認を「撤回」し、その上で訪米して沖縄の意思を明確に伝え、有識者委員会の提言を受けて「取消」に進むのが、もっとも実効性の高いプロセスになる。
「辺野古に基地を造らせない」という公約が確実に守られるのかどうか、沖縄県民は監視の目を強化する必要に迫られている。
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