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「孫崎氏の新刊『日米開戦の正体』の内容を中心に、お話をうかがいます。:岩上安身氏」
http://sun.ap.teacup.com/souun/17565.html
2015/6/9 晴耕雨読
https://twitter.com/iwakamiyasumi
6月8日(月)「岩上安身による孫崎享氏インタビュー」の模様を実況します。孫崎氏の新刊『日米開戦の正体』の内容を中心に、お話をうかがいます。
岩上「本日は、『日米開戦の正体』を上梓された孫崎享さんにお話をうかがいます。この本は、みなさん、絶対に読んでください! 本日は、『日米開戦の正体』だけでなく、様々な時事問題についてもお聞きします」
孫崎氏「この本は、歴史書ではないと思っています。現在の状況を考えるために書いた本なんですね。天皇陛下が新年にあたり、『満州事変に始まる戦争の歴史に学ぶことが大切だ』と語りました。戦争への流れと、現在の安倍政権の流れが似てきているということです」
岩上「しかし、この天皇陛下の発言について、報じないメディアがあります。天皇陛下は国民の一人で、かつ有識者であると私は思っています。天皇の言葉から、議論が生まれればよい。そう思っています」
岩上「この『日米開戦の正体』を読んで勉強になったのは、軍部が邪魔な人間を消していったこと。その中に、昭和天皇が含まれていた、ということですね」
孫崎氏「真珠湾攻撃を止めるタイミングがいくつかありました。天皇は、クーデターを恐れていました」
岩上「荒木貞夫のように、マキャベリスティックで、尊王の気持ちを持っていない人物がいました」
孫崎氏「それは、現在の安倍政権に通じます。現実の天皇が理想の天皇と乖離している場合、現実の天皇を退けていい、という考えが右翼思想にはあるそうです」
岩上「昨日、『ネトウヨは本当にアホだ』ということをtwitterに書きました。集団的自衛権で日本周辺を空っぽにしてどうするんだ、ということを書いたんですね。するとネトウヨから大変絡まれました。彼らは、初戦の空戦で戦争が終わる、と考えているようです」
孫崎氏「昨日、講演をした際、育鵬社の教科書の話になりました。他の教科書もあわせて、満州事変は日本の生命線だった、と書き方をしているんですね。しかし、ポーツマス条約で何が決まったか、ということが分かっていないといけません」
孫崎氏「ポーツマス条約で、遼東半島と南満州鉄道が日本のものになりました。しかし、満州からは日本は退け、ということになりました。だから、『満州が日本の生命線だ』というのは、国際条約を破っていることになります」
孫崎氏「私が、この人が生きていたら日本が変わっただろう、と思うのは、伊藤博文なんです。伊藤博文は、日本の軍が満州に居残ったことを危惧し、参謀総長を怒って、ポーツマス条約を守るように、と言うんです。伊藤博文が生きていれば、満州に出ることはなかった」
岩上「伊藤博文を殺した安重根を手引きしたのは、日本の軍部と外務省だった、という驚きの仮設を立てていますね」
孫崎氏「玄洋社の内田良平などが関わったのではないか、と思います」
岩上「これは、この本の第10章に書かれていることですね」
孫崎氏「日本の軍は、戦場では勝ちまし。しかし、それは、大きな流れの中での戦略で勝つ、ということではありません。山本五十六も、戦場では勝つのですが、戦略の面では全然だめでした」
岩上「ネトウヨも、開戦のイメージしかありません」
孫崎氏「山本七平が、戦艦大和のことを議論しています。撃沈されることが確実なのに、なぜ出撃したのか。それが『空気』のせいだ、ということでした。以前であれば、そういう議論が存在しました」
岩上「かつては、日本軍は馬鹿な軍隊だねということが常識だった」
岩上「太平洋戦争と欧州戦争をつなげたのは、チャーチルですね」
孫崎氏「チャーチルは、ヒトラーの攻撃を打破する方法を2つ考えた。一つは、ドイツがソ連を攻撃すること。もう一つは、日本が米国を攻撃し、米国が参戦することでした」
孫崎氏「真珠湾攻撃の日の日記に、チャーチルは、『これで我が国は救われた。日本人は木っ端微塵にやられるだろう』と書いています。チャーチルは南北戦争を研究し、先に攻撃した方が負ける、ということを理解していました」
孫崎氏「今、敵基地攻撃、という論が出てきています。これは、日本を守るためのものではないですね。何を考えているかというと、米国に向かうテポドンが発射しようとしている際に、攻撃する、というものですね。しかし、日本はそのことでノドンにより攻撃されます」
孫崎氏「今、G7が行われています。ドイツはウクライナ危機などを通じて、自主路線を出しています。ドイツは、米国の戦略の中にいたら怖い、ということで、独自にロシアと交渉しました。しかし日本は、それと真逆の状態にいます」
岩上「孫崎さんの本を読むと、吉田茂が稀代の悪党であることが分かります」
孫崎氏「吉田茂は、中国のことをやっていて、傍流なんですね。田中義一内閣の時、満州への侵略がありますが、吉田は田中に取り入っています」
岩上「安倍総理は、満州はドイツから受け取った権益だ、と言っています。これは、笑ってすませられる話ではありません。ポツダム宣言にしても、『つまびらかに承知していない』、つまり同意していない、ということです」
岩上「今、弾圧が始まっています。経産省前で3人が逮捕され、京都でも似たようなことがありました」
孫崎「マルチン・ニーメラーが『共産主義者が襲われたとき、私は共産主義者ではなかったから声をあげなかった〜』と言っています。大きな流れがあります」
岩上「育鵬社の『公民』の教科書、フジテレビのマークがついています。ここは扶桑社の子会社で、新しい歴史を作る会が分裂しました。この中に安倍総理の顔が15枚も出てくるんです」
孫崎「へぇ…(驚)今、日本のあちこちで教育委員会に物凄い圧力があります」
孫崎「この教科書は、『学徒出陣をこの戦争は、我国の初めて経験する総力戦でした(略)大学生も入隊することになりました』などと書いていますね」
岩上「誰も入りたくて入ったわけではないのに、まるで当時の生々しい状況が書かれていません」
孫崎「物事を見ないようにしていますね。先日、京都の四条通りを500人くらいでデモしたんです。でも誰一人目を向けない。『事実を見たくない』という層が増えています。伊丹万作『日本人全体がお互いに騙したり騙されたりしていた〜』の言葉を思い出します」
岩上「安倍総理の『ポツダム宣言不承知』発言がありました。事実上の否認ではないか。誤った戦争だったという認識かと問われたのですが、答えず、『不承知』ということです」
孫崎「普通の首相がポツダム宣言を読んでいないのはありえます」
孫崎「戦後レジームの脱却を掲げている安倍さんですが、戦後の出発点がポツダム宣言です。テレ朝以外どこも放送しなかったようですね」
岩上「HKはポツダム宣言の部分を丁寧にカットしました。籾井HKはどこまでも腐っていて、戦前と変わらない」
岩上「しかし安倍総理はポツダム宣言を読んでいるんです。原爆投下のあとに『どうだ』とばかりに叩きつけられた、と言っています。ポツダム宣言は原爆投下前のものですから認識が間違っている」
孫崎「ポツダム宣言は、これをのまなかったら日本を破壊するぞ、という意志が強い。しかし東条英機は『断固拒否』だった。彼らは日本が破壊されても構わないというのだろうか。ダレスがサンフランシスコ講和条約を作った時、ポツダム宣言の定着を目的にしていた」
孫崎「自衛隊は空と海、陸とで一体運用ができていないので、米国は個別に連携し、強い武器を与えている。昔と違うのは、米国が日本に警戒感がなくなったこと。陸上自衛隊と初めて連携したのは3.11」
孫崎「だから何の抑止力にもならないオスプレイを持たせる。今はイエメンですら反乱軍がF15、F16を落とせる時代になった」
岩上「日本に対する敵国条項が外されていない件について」
孫崎「親日国である台湾ですら今、慰安婦記念館を作る動きがある」
岩上「2005年に安倍さんはテレビ番組の志位委員長との討論で『満州に攻め入ったわけではない』『ドイツから譲り受けたもの』と嘘を垂れ流しました」
孫崎「彼は『嘘と分かっていて嘘を言える人』です。これは政治家にも滅多にいない」
岩上「安倍総理のポツダム発言の時、磯崎総理補佐官が『ポツダム宣言が一言一句正しいとは限らない』と総理の不承知をフォローした」
孫崎「彼は国民と共に仕事をしようという気持ちがない人。自治省から天下りで地方に行き、常に上から目線で仕事をしてきた人」
孫崎「後藤さんがイスラム国に殺された時に、安倍政権が『交渉しない』と言った。この時にYタイムズのマーティン・ファクラーが面白い事を言っていた。彼は『安倍総理は、後藤さんを人質に出したことで、これほど貢献したんだと(米国に)言いたいのだろう』と」
岩上「安倍総理のウクライナ訪問で、ロシアへの制裁と対話と圧力、ウクライナへの2300億円の支援を約束しました」
孫崎「しかし別の場所で安倍総理はロシアと仲良くしない、と言っている。最近ロシアの議長が来日した際に、外務省がブロックしました」
孫崎「その後、自民党の偉い人に会いに行ったのですが、そこで議長が『ブロックしている人がいる』という言葉を外務省の通訳は訳さなかった。たまたまロシア語の分かる人間がそれを指摘して分かった。今の外務省は通訳が通訳しなくて良いという所まで狂っている」
孫崎「G7で音楽会が開かれたのですが、そこに安倍さんだけ写っていないのです。普通だったらウクライナではなくドイツに早くに入り、色んな人と会う。しかしそれをしていない影響でこの音楽会にいないのか、この写真を掲載した媒体が安倍は必要ないと思ったのか」
岩上「ウクライナのクーデターを煽動したマケイン上院議員について」
孫崎「彼は本当に危険な人物。イラク攻撃にEU諸国が渋った時に『米国にとって一番重要な事態に参加しないということは、米国もあなたがたの一番重要な旧ユーゴに参加しない』と」
孫崎「その翌日、EU諸国はイラク攻撃に理解を示した。これは日本に対して集団的自衛権の行使で使われる戦法。2016年の大統領選挙は必ずオバマより右になる。ブッシュの弟は、今後の米国の最重要課題は、いかに同盟国に米国の作戦に参加させるか、と言った」
岩上「マケイン上院議員は、エルサレムで安倍総理と会談しています。マケイン氏が、ホルムズ海峡に自衛隊を出すよう、要求しているのです。また、安倍総理は、米議会での演説をイスラエル・ロビーに頼ったと言われています」
岩上「サウジアラビアによるイエメン空爆について、お聞きしたいと思います。今回の攻撃は、国連安保理の承認を経ていません」
孫崎氏「なぜ米国は、中東でこのような政策をやっているのか、ということを考えます。まず、武器が売れるかどうか」
孫崎氏「もう一つは、イスラエルの安全保障に資するかどうか、です。米国とイスラエルにとっては、それぞれの国が仲違いして弱体化すればいいんです。つまり、両者は平和を望む勢力ではない、ということです」
孫崎氏「アフガニスタンからアルカイダが逃げたとき、行き先がパキスタンとイエメンでした。ですから、イエメンはずっと標的だったのです。こうした混乱の中から、さらにアルカイダ的なものが出現する可能性もあります」
岩上「次は、イラン情勢です。ローザンヌ合意で、欧米諸国とイランが、核問題の包括的解決に向けた枠組みで合意しました」
孫崎氏「実は、米国とイスラエルの中では、イランをやっつけてやろう、という動きが強まっています」
孫崎氏「米国の大統領選挙の後、米国の対イラン政策はかなり強硬になると思います。第一次世界大戦は、ローカルな争いが世界大に拡大しました。これは、抑止のシステムがオセロゲームのように裏返っていった、ということです。結果、戦争を仕掛けた帝国が負けた」
岩上「米国は、イランがヨーロッパにミサイルを打つという理由で、ATO防衛のためにMD配備する、と言っていました。それが今度は、ウクライナ危機に際してMDを配備し、ロシアを本格的に攻略する、というかたちになっています」
岩上「イランが、中国とロシアの結びつきに加わろうとしている、と言われます」
孫崎氏「今だったら、イスラエルはイランを空爆できると思っています。しかし、イランが地対空ミサイルを装備すると、それが出来なくなってしまいます」
岩上「現在報じられているFIFA汚職事件は、米国からロシアへの嫌がらせではないか、と言われています。プーチン大統領は、これに対して激怒しています」
孫崎氏「2018年のロシア大会で、トーナメント戦ではなく勝ち抜き戦にしよう、という話に」
岩上「さて、AIIBについてお話をうかがおうと思います。宋文洲氏、柯隆氏という中国の知識人にお話をうかがいました。米国と日本は、AIIB参加を見送りました。しかし、イギリス、ドイツ、フランスなど欧州諸国、さらにBRICs諸国も参加を表明しました」
孫崎氏「日本は、AIIBに入らないことによって、米国に忠誠を誓ったのです。外務省の人たちは、米国追随以外に、考えることをやめてしまいました。日本は、合理的な判断ができない国にさせられてしまったわけです」
孫崎氏「東大の加藤陽子さんが、戦前のシステムの中で、社会民主主義的な改革が実現できず、その代わり、軍部に期待が集まることになった、と指摘しています。今の日本も、中国や韓国を敵視することで、自らの正当化を図ろうとしています」
岩上「TPPで日本語が『公共調達』の分野で『非関税障壁だ』という話になれば、公的な文書が英語になり、英語が出来る人が一級市民、英語が出来ない人が二級市民、ということになりかねません。植民地というのは、政治的にも文化的にも支配されるのです」
岩上「しかし、文科省は、十年後に5割超の学部授業を英語で実施する、という通達を出しています。これに対して、東大以外の大学が受け入れる方針である、としています。人文系の学問、文学や歴史、社会学は、大学で扱わなくなる可能性があります」
孫崎「戦略の一つは『差別化』。どう違ったものを作り出せるか。いかに日本のものを作れるかです。オリジナリティもなく、完全に潰されるでしょう」
岩上「第二の開国、明治維新のときだって日本語で通しました。これ、もう元に戻れないですよ? 日本破壊です」
岩上「東大で行われた立憲フォーラムの集会には1000人を越える人が集まりました。国会前では安保法制に異を唱える『SEALDs』という若者たちが大勢の市民を集めました。我々は若い人と対話していかなければなりません」
岩上「『SEALDs』は中年も年配も集まってほしいと呼びかけています。マルチイシューで話してほしい。戦争、原発、TPP…人を排除せず、色々な考えを発信できる場を作れれば、まだまだどこまでもいけると思います」
孫崎「自民党の改憲漫画は見ました?」
孫崎「あの漫画は酷い。読んで『そうだ』と思ってしまう人も大勢出てくるでしょう」
岩上「自民青年部が週末に全国100ヶ所街宣をしました。国民に対するヘイトスピーチですよ。『戦争反対!』と叫ぶ人に、ごくわずかな聴衆が『反日反対!』と応じていました」
岩上「ちなみに、中国の戦闘機SU35。日本が導入するF35を上回るらしいです。これどうです?」
孫崎「中国と戦争して勝てるということはないです。かと言って占領されるわけではない。軍事がないと占領されるというのは、刷り込みです」
孫崎「カザフスタンの石油を中国が取りに行かないのは、取りに行かないほうが利益になるからです。自民党の改憲漫画には、『明日、侵略されたらどうする?』ということを書いています」
岩上「そんなの戦いますよ。ベトコンに学び、追い出すまで戦いますよ」
岩上「先生、『日米開戦の正体』に入りたいんですが、こんなに時間が経ってしまいました。先生、前、中、後編にさせていただくということで、また近いうちにお時間いただければと思います。ご視聴ありがとうございました」
以上で実況を終えます。アーカイブは後ほどWebにアップします。
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