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[今を読み解く]加速する中国の新興国援助
日本はインフラ「卒業」を
神戸大学教授 加藤弘之
アジアインフラ投資銀行(AIIB)への日本の参加の是非をめぐり、一大論争が巻き起こっている。我が国政府は、創設メンバーに加わらないという決断を下したが、今後ともAIIBとは距離を置く道を選ぶのか、それとも一般メンバーとして参加し、内側から影響力を発揮する道を選ぶのか、論争の種は尽きない。
為替相場の安定を保つため、中国は海外で外貨を使う必要がある
AIIBとは、2020年までにアジア地域に生じる巨大なインフラ投資需要(アジア開発銀行の試算で7300億ドル)を満足させる目的で、中国が設立を目指す、マルチな開発銀行である。イギリス、ドイツなど先進国を含め57カ国が創設メンバーとして加わり、1000億ドルにのぼる当初資本金の多くを中国が負担する予定だという。そもそも、なぜ中国はAIIBの設立を提唱するに至ったのか、日本はこうした中国の動きとどう向き合うべきか。本稿では、途上国支援のあり方という視点からこの問題に接近してみたい。
●「超大国化」映す
AIIB設立の背景には、高度成長を持続させ、超大国化しつつある中国自身の姿が透けて見える。丸川知雄・梶谷懐著『超大国・中国のゆくえ4 経済大国化の軋みとインパクト』(東京大学出版会・15年)は、消費不足を過剰投資で補う「過剰資本蓄積」が国内経済の先行きを不透明にする一方、対米経常収支の大幅黒字がグローバル不均衡を引き起こした点に注目している。
中国は、いまや3兆7000億ドルを超える外貨準備を持つが、米ドルと人民元の為替相場を安定的に保とうとすれば、外貨の「還流」、すなわち、政府開発援助(ODA)や対外直接投資などで外貨を海外で使うことが求められる。外貨の「還流」は、外国経済を活性化させ、低迷する国内消費が吸収できない過剰な生産能力の捌(は)け口にもなる。
中国政府は、04年ごろから自国企業の対外投資を奨励し、今日では、中国の対外投資は日本や米国など先進国と肩を並べる規模に到達し、数年内に直接投資の受け入れ額を凌駕(りょうが)する勢いである。また、14年7月には、BRICS5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)によるBRICS開発銀行と外貨準備基金の設立が決まった。AIIB設立も、こうした一連の流れの延長線上にある。
AIIBの設立は、新興国ドナーとして中国が力をつけ、独自色を打ち出そうとしている一つの証拠でもある。下村恭民・大橋英夫ほか編『中国の対外援助』(日本経済評論社・13年)は、中国の対外援助がさまざまな問題を含んでいることは否定できないとしながらも、これまで開発援助委員会(DAC)や世界銀行を中核とする国際援助社会が有効に対応できなかった開発・援助ニーズを充足する機会を提供したとして、途上国にとって中国の対外援助は貴重な資産であると評価している。
●量から質に転換
中国の対外援助の内容を子細に検討すると、かつての日本の対外援助と重なる部分が少なくない。日本は1961年からDACメンバーとして、50年以上の開発援助の歴史を持つ。日本のODAの特徴を一言でまとめるとすれば、「長期的な視点に立ち、人材育成、技術供与、インフラ投資を通じて産業を育成すること」にある。
黒崎卓・大塚啓二郎編著『これからの日本の国際協力』(日本評論社・15年)では、日本の支援がアジア各地で産業発展に大きく寄与したことを高く評価する一方、財政再建が課題の今日、限られた予算の有効活用をはかり、「ビッグ・ドナー」から「スマート・ドナー」への転換が、いま日本に求められているという。
同書は、貧困救済や人道支援に傾斜した西側諸国の後追いではなく、これまでの経験をもとに「人材育成、技術供与、インフラ投資、裾野産業の育成、金融支援、民間企業の直接投資の有機的な連携」をはかる開発戦略を提案している。
日本の経験に照らせば、途上国支援におけるインフラ投資の重要性は揺るがない。インフラ投資は、この開発戦略でも重要な環(わ)の一つとされるが、すべてではない。人材育成、技術供与、裾野産業の育成などの分野で、日本がこれまで蓄積してきた開発援助の資産を活(い)かすことは、日本独自の貢献となり得る。AIIBとの補完や連携を視野に入れつつ、日本は、インフラ投資をあえて「卒業」し、日本の強みを活かした途上国支援の道を選ぶべきだろう。
[日経新聞5月24日朝刊P.21]
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