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戦後70年 日本の立ち位置は
(5) 国家戦略の立案力向上を
エズラ・ヴォーゲルハーバード大学名誉教授
自分の国はうまくいっているかと日本人に尋ねると大抵の人がため息をつき、高齢化、労働力人口の縮小、低い経済成長率などを挙げる。中国人留学生に同じ質問をすると、多くは肯定的だ。ところが将来どこに住みたいか聞くと、多くが自分の子供を含め外国に住むつもりだと答える。翻って日本人に聞くとほとんどが日本に住むと答える。日本は住みやすいからだという。
町は安全できれいだし、犯罪率は低い。公害は抑制され、生活は快適で安定している。現在直面する問題にもかかわらず、筆者が1979年に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で書いた日本の良さの多くは変わっていない。教育水準は総じて高く、労働者はトラブルの発生を察知して対応するよう訓練されており、日本企業の品質管理は今なお優秀だ。インフラ開発は「失われた20年」の間も続けられており、米国よりはるかに進んでいる。
欧米のエコノミストは90年以降、経営不振に陥った日本企業を批判した。人員整理によるコスト削減に乗り出すのがあまりに遅いというのだ。だが株主ばかり見ずに社員も大切にする日本企業は、たとえ減益に追い込まれても雇用を維持しようと欧米企業より真剣に努力する。社員の将来を守ろうとする日本の経営者は、会社の長期的な未来を大切にする。日本企業が社員の献身に期待できるのは、このためだ。驚くべきことに、バブル崩壊後の今日でも、79年と変わらず多くの日本企業が終身雇用を維持している。
筆者は前述の著書に「日本の会社役員が受け取る報酬とストックオプションは米国よりも少ないし、生活も質素だ(中略)忠誠心が高く評価されており、他社に引き抜かれるケースも少ない」と書いた。今日でもいわゆるスーパーリッチの比率は米国や中国よりはるかに低い。日本企業は収益の正当な分け前を社員に配分すべく多大な努力をしている。その結果、日本の社会は一体感が強く、富裕層に対する貧困層の反発は強くない。
それでも90年のバブル崩壊以後、日本が深刻な問題を抱えていることは事実だ(図参照)。日本の工業製品の一部は人件費の安い他国の製品に駆逐された。政府債務は巨額に達し、なお膨らみ続けている。近隣国との政治問題は悪化している。高校・大学卒業者はやりがいのある安定した職に就くことが次第に困難になってきた。労働者の約4割がいわゆる非正規雇用で、社会保障が十分でない。多くの世帯が生活水準を維持するために貯金を取り崩している。
日本の未来は国民的な議論を経て決めるべきだが、あえて筆者が指針を示すとすれば、以下の点を強調したい。
第1に、女性とシニア労働者を増やし、福利厚生の不平等を減らすことだ。
筆者は「人口高齢化」をそれほど心配していない。また、高齢者や女性を中心に働き手の雇用が進めば、大量の移民は不要だと考える。健康で長寿の人が増えたのだから、高齢者の介護や小売業での顧客対応といった仕事なら60歳を過ぎても働けるだろう。企業が非生産的な長時間労働を減らすなどの対策を講じれば、教育水準の高い女性が出産後も仕事を続けると期待できるし、ホワイトカラーの生産性の向上にもつながるはずだ。
確かに日本企業は、70歳までの終身雇用を保障することはできまい。だが多くの企業が「長期雇用」なら保障できるだろう。並行して、いわゆる「非正規雇用」と「長期雇用」の福利厚生面の待遇格差を減らしていけば、非正規労働者の意欲は高められる。
第2に、対中・対韓関係を改善することだ。
この問題の解決は日本製品を売るためだけでなく、国防予算の膨張につながる軍事的緊張を回避するうえでも重要だ。大気汚染、気候変動、テロ、自然災害など共通の問題に取り組むためには、日中関係の強化がぜひとも必要だ。諸外国の日本に対する好感度の維持にも寄与しよう。
必要なのは改めて謝罪することではなく、これらの国の人々が経験した苦しみに対して日本の国民が思いやりと理解を示し、日本の責任を明確に認識することだ。中国と韓国の人々は日本の若い世代に対し、自国がかつて引き起こしたことを知り、優越感を捨ててほしいと願っている。
今年は戦後70年の節目の年であり、このメッセージを国民と世界に向けて発信するのにふさわしい。「慰安婦」問題が重大な意味を持つのは、苦痛を味わった韓国女性自身もさることながら、彼女たちが、日本の占領下で抑圧に苦しんだ人々や、戦争中に日本に連行され奴隷同然の強制労働をさせられた人々の象徴となっているからだ。日本の若い世代は、こうしたことをもっと教えられるべきである。
戦時中に日本が中国で犯した行為についてもそうだ。中国や韓国で流布している「日本の残虐行為」に関する説明の多くが誇張されており、歴史的事実を正確に反映していないことは確かだ。だが日本政府がその「訂正」を試みたら、一層の反感を買うだけだ。諸外国の誤解は、学者など民間人が正すのであれば、政府が取り組むよりも外国人にとって受け入れやすいだろう。
第3に、日本の大学の質を高め、国際化を図ることだ。
世界の一流大学では広く英語を使用し、各国から有力学者を招いている。日本は義務教育と科学分野の国際化では輝かしい実績を上げたが、大学の教育・研究の質はおおむね国際標準に達していない。日本の大学が世界レベルになるには、官僚体質の抑制、教員採用基準の引き上げ、教員の事務的負担軽減が必要だ。
世界の一流教授を招き、イノベーション(革新)に乗り遅れないためには、教員と学生がもっと英語を使うこと、優秀な教授や留学生にしかるべき待遇を用意することも望ましい。日本の学生が自国の大学で英語に熟達し外国人とコミュニケーションをとれるようになれば、海外に出て外国のイノベーションを理解することも容易になる。また英語を使いこなし外国人学生と意思疎通を図れる学生は、入社時点から海外で働く準備が整っている。彼らは新しいアイデアや技術を吸収し、持ち帰ることができるだろう。
第4に、国家戦略を担う指導者の能力を高めることだ。
日本の政治指導者の多くは国家戦略を立てるうえで必要な国際情勢や複雑な国内問題の理解度が低い。若い政治家や経営者には国際環境でのコミュニケーション力を高めるためにも、もっと幅広い教育訓練、英語の習熟、外国人の発想の理解力が求められる。
一部の官僚が国益よりも省益を優先する誤りを犯してきたことは事実だ。しかし広い視野と専門的な知識の点で、国家は賢明な官僚を必要とする。日本の官僚はキャリアの早い段階で外国で学ぶ機会を与えられる。政治家や国民は官僚を尊敬し、彼らにエリート意識を与える必要がある。彼らが使命感を持って一国の総合的な政策を導く責任を担うよう育成せねばならない。
例えば、継続的に国際会議に参加させることで、分析力を高め、重要な問題について正確な情報に基づく見解を日本政府と国民に伝えられるようになるだろう。それによって、日本は将来の展望をより良く描けるようになる。
=この項おわり
<ポイント>
○79年の著書で書いた日本の良さ変わらず
○非正規雇用の待遇改善で労働意欲高めよ
○大学の質を高め国際化を図ることも重要
Ezra F Vogel 30年生まれ。専門はアジア研究
[日経新聞5月22日朝刊P.29]
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