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菅官房長官は敵基地攻撃の危険性を認識して、容認を述べているか。北朝鮮日本向けノドン300配備−(孫崎享氏)
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27th May 2015 市村 悦延 · @hellotomhanks
A;事実関係
菅義偉官房長官は25日午前の記者会見で、
政府が個別的自衛権の範囲内として「法的に可能」としてきた敵基地攻撃について、
集団的自衛権の場合でも「従来と変わらない」と述べ、
安倍政権が導入した武力行使の新3要件を満たせば同様に可能との認識を示した。
敵基地攻撃が法的に可能とする見解は、1956年に鳩山一郎内閣が示し、
その後の政権も踏襲している。政府は具体的には、
北朝鮮の弾道ミサイルが同盟国の米国へ向け、
発射準備をしているケースを想定しているとみられる。(時事通信2015/05/25)
B:評価
敵基地攻撃は、鳩山一郎内閣の時代と今日の時代では意味合いが全く異なっている。
北朝鮮を想定して考えてみよう。
北朝鮮は、日本を射程にいらられるノドンを今日200−300実戦配備しているとみられる。
あるものは堅固な山の中に保管され、あるものは移動式で、
これらを攻撃で一気に破壊できない。
一気に破壊できない状況で攻撃すれば、残存ミサイルで反撃を受ける。
したがって、日本を標的とするミサイルをターゲットとする敵基地攻撃はない。
今日、論議されているのは、
米国を攻撃とするテポドンクラスのミサイルが発射される前に攻撃する敵基地攻撃である。
日本は米国向けのテポドン発射前に基地攻撃したとしよう。テポドンは破壊される。
しかし、200は¥から300配備されているノドンは手つかずだ。
当然北朝鮮はこれで日本に反撃する。差引勘定はどうなるか
1. 米国向けのテポドンは破壊された、
2. 日本はミサイルで攻撃された。
日本防衛との観点でいえば、あり得ない選択をしようというのである、
敵基地論の危険性については、『日米同盟の正体』に記述したのでそこから、主要部分を引用する。
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敵地攻撃論は有効か
最近、日本国内で敵地攻撃論が議論され始めている。
二〇〇六年七月一〇日、読売新聞は「敵地攻撃能力の保持、額賀防衛庁長官『議論すべきだ』」
との標題の下、
「額賀長官は九日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を踏まえ日本として
敵基地攻撃能力を検討すべきだとの考えを明らかにした」と報じた。
二〇〇七年二月一五日付「隊友」紙は、
「敵地攻撃論」と題する村木鴻二元空幕長の「敵地攻撃」を掲載した。
「『敵基地攻撃』は昭和三一年に始まり、
『急迫の侵害が行われ他の手段なき場合、
誘導弾などの基地を叩くことは自衛の範囲に含まれる』とされている。
しかしわが国が攻撃能力の具体化を避けてきたのは『専守防衛』政策による。
日米同盟による抑止は必要であるが、
全面的に米軍に頼っている攻撃力の行使には様々の死節時間が存在する。
先制的自衛権の行使の判断が問われる」
村木元空幕長の論理は自己完結型の防衛政策の上にたっての敵地攻撃論ではない。
米国が後を引き取ってくれるとの完全な信頼の上に立つ敵地攻撃論である。
では、現実に日本は敵地攻撃を行える能力を持つのか。答えは否である。
まず、相手のミサイル配備状況を十分に把握できない。
次いで、攻撃の際、航空、海上、上陸後の爆発などの手段が想定されるが、
これを効果的に実施しうる能力がない。
かつて安全保障に関する内輪の研究会で、
元防衛事務次官が「日本自衛隊の戦力には凄いものがある。
中国・ロシアといえども侮れない。
でも日本単独では行動できないようになっている」と語っていた。
要は日本の国防は、一本立ちできないシステムになっている。
「敵基地攻撃」は基本的に先制攻撃である。
先制攻撃をされた国は残りの総力をあげて反撃する。
したがって攻撃する国は、
先制攻撃によって相手国の九割程度の攻撃能力を破壊することが必要となる。
しかしそれは実現不可能である。
かつ敵基地攻撃は北朝鮮だけに該当する議論であって、
中国、ロシアにはまったく該当しない。
先制攻撃をした後の展開についてまったく能力を持たない国が
先制能力だけを持とうとするのは極めて危険である。
叩いて見せます、山本五十六的考えの延長線にある。
ミサイル防衛は有効か
日本ではいま、ミサイル防衛が国防の柱になりつつある。
このシステムにどこまで日本の安全保障を確保する役割を期待できるのであろうか。
ミサイル防衛はどこまで有効に機能するか。
筆者は期待できないと判断する。筆者の見解に近いものに、
クリントン政権で国防長官を務めたペリーの考え
(「次なる攻撃に備えよ」(『フォーリン・アフェアーズ』日本語版〇一年一〇月号掲載)があるので、
関連部分を引用したい。
・ (米国は)抑止だけに依存するのは賢明でないとして米本土ミサイル防衛システム開発(NMD)を表明した。
・ 実際の攻撃の場合には、おとり弾やレーダー探知妨害用金属片、レーダー攪乱、
あるいは核によるレーダーの機能不全化など、技術あるいは戦術的な対抗手段を通じて
相手はNMDシステムをかいくぐろうとするだろう。
・歴史的に見て向かってくる爆撃機を撃墜できる可能性は三〜三〇%である。
もちろん、対空防衛と弾道ミサイル防衛と比較するのは問題がある。
しかし、弾道ミサイルを撃墜する方が爆撃機よりも簡単だという議論を説得力をもって展開するのは難しい。
・ ミサイル防衛システムが巡航ミサイル、爆撃機による攻撃に対しても実質的に無力であることを
認識すべきである。この制約を認識できなければ、間違った安全保障概念に道を開き、
防御の優先順位の付け方を間違えてしまう。
一九三〇年代、ドイツの侵攻からフランスを守るために築かれた
国境防御戦マジノラインはフランスの優先順位を見誤らせた。
マジノラインが機能しなかったのは、計画や守り方が悪かったからではなく、
ドイツが迂回する戦略をとったからである。
・ 弾道ミサイル防衛に大規模な資金を投入しても似たような運命をたどる。
敵対国は対抗手段を講ずるだけでなく、大量破壊兵器を飛行機、
巡航ミサイルを積み込んで防衛システムを迂回できるのだから。」
米国は潜在的脅威国とかなり距離がある。迎撃の準備態勢を整える時間がある。
この米国ですら、ペリーはミサイル防衛の実効性に、疑問を持っている。
日本は相手がミサイルを撃って数分で反応しなければならない。
ある米国関係者は、打ち落とせるのはまだミサイルが最高速度に至っていない
最初の二分間が勝負と言う。その際は現場兵士の瞬時の判断に依存する。
ミサイルはまだ相手国領空内である。
さらに核攻撃を行おうとする際には、
ミサイル、航空機等様々な手段を使って攻撃をかけてくる。
これらの敵の核攻撃に対し防御を築くのは技術的にほぼ不可能であろう。
ミサイル防衛がマジノラインくらいの信頼性を得る可能性はない。
立派なマジノラインを築きましたといっても、迂回攻撃があれば何の意味もない。
日本がミサイル防衛に巨額の資金を投入することは、
間違った安全保障概念に道を開き、防御の優先順位の付け方を間違う可能性が高い。
敵地攻撃論にせよ、ミサイル防衛にしろ、
議論は安全保障という全体の中の部分の効用を論じている。
敵は誰なのか、如何なる兵器での攻撃が想定されるか、
それに対応するにはどうするかという全体論なきままの議論である。
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