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住民投票で否決されたが、橋下氏の元々の「大阪都」構想は、大阪市に加え堺市までも含む周辺市部を東京都で言う特別区範囲とするものだったはず。
しかし、東京都区部が他を圧倒する“都市力”を育んだ理由として、“東京都&特別区23区”という東京都区制に求めるのは誤りである。
まず、戦時中に東京都になり、戦後めざましい勢いで大都市になっていった東京都の23区は、地方自治体としての機能を有しない状態のほうが長かった。
東京の区部は、戦後ポツダム改革でいったん「基礎的地方公共団体」となったが、1952年(昭和27年)に東京都の内部組織となり(東京都が「基礎的地方公共団体」)、1974年(昭和49年)に“試み”として特別区に「市なみ」の自治権が付与されたが、1998年(平成10年)を迎えるまで法的には「基礎的地方公共団体」の性格を与えられなかった。
今でも、東京都は、固定資産税や市町村民税法人分など一部の市町村税を徴収し、消防や上下水道の事務などを実施し続けている。
小中学校は区立なので児童・生徒やその親は帰属意識が少しはあるかもしれないが、他の市町村に較べると区に対する帰属意識が希薄で、東京都民という意識のほうが強い。
東京区部は、戦後高度成長期のほとんどにおいて、東京都の行政を円滑にすすめるための地理的区分けでしかなかったのである。大阪市で言うなら、24ある区と同等のものと考えるとわかりやすいだろう。
東京都の区部は、強力な基礎的地方公共団体として存在することが大都市としての一体的行政を阻害してしまうという理由で、自治体としての権能を奪われ続けたのである。
このような意味で、東京都は、「東京都&特別区」という行政構造により発展してきたとは言えず、戦後も統制経済的色彩を色濃く残す日本の首都であったがゆえに日本の経済的発展とともに世界に冠たる大都市になったと言うべき存在なのである。
橋下氏の元々の構想にも、大阪都区部を大阪市の範囲からより拡大するとともに、「大阪都」を“バックアップ首都”として中央政府が整備していくという内容が含まれていた。その是非とは別として、これは、大阪の経済的発展の支えになる政策とは言える。
橋下氏が提起した「大阪都」構想は否決されたが、目立つ反対票が高齢者のものであったことから、高齢者の“判断”が政治や行政に強い影響力を持つ現状を憂う声も聞かれる。
転載する池田信夫氏の論考も、タイトルが「大阪都構想を拒否した高齢者は大阪の「安楽死」を選んだ」というものであることからわかるように、“シルバーデモクラシー”批判の要素を持っている。
池田氏の場合さらに始末が悪いことに、社会福祉の受益者が“既得権益”を守るために「大阪都」構想に反対したという見解まで付加している。
しかし、池田信夫氏の論考は、“シルバーデモクラシー”批判をする“ため”に、こじつけた不合理で非論理的なものである。
池田氏の内容はほとんどが同じことの繰り返しだが、いくつの論点を抽出する。
【池田氏】
「いずれにせよ現役世代は賛成多数だったので、高齢者が大阪都構想を拒否したことになる。これは、ある意味では当然だ。今回の住民投票は実質的には橋下氏の信任投票であり、彼は「小さな政府」への改革を進めようとしていた。24区を5区に合併する都構想の目的は、行政のスリム化と住民サービスの効率化である。」
「 橋下氏の説明が無駄の批判ばかりで、都構想のメリットがわからないといわれたが、本当のメリットは職員や住民サービスの削減だ。そういう政策を出すと議会が反対するので、具体的にいえなかったのだろう。それに対して反対派は何も対案を出さず、ただ既得権を守れと主張するだけだった。」
【コメント】
大阪市の場合、基礎的地方公共団体として法的性格を有するのは大阪市だけで、24区はその内部組織である。
大阪市のまま「24区を5区に合併」すれば、行政の窓口が遠く離れてしまう人が増大することで住民サービスは大きく劣化するが、財政面での「行政のスリム化と住民サービスの効率化」は達成される。
しかし、大阪都の特別区というのは、大阪市の代わりに、権能一部限定のミニ大阪市が新しく五つ生まれることを意味するので、区長・区議会・行政スタッフなどの新設及び増設が必要となるため、財政面でも行政サービスの費用が増加するという不効率な状態が生まれる。
そして、区の面積が広くなることで行政の窓口から遠く離れてしまう人が増大するため、“池田氏が望む”ように住民サービスは劣化する。
住民サービスは劣化する一方で職員や部局の数など行政機構は肥大化する可能性が高かったのが否決された「大阪都」構想なのである。
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【池田氏】
「住民投票で大阪都構想に反対したのは、ミナミの高齢者だった。それは、ある意味では当然だ。大阪市を廃止して住民サービスを効率化し、中枢機能を大阪府に一元化して地域開発投資を行なう「大阪都」案は、1948年に大阪府が提案したもので、橋下氏が思いついたわけではない。
高齢化は貧困化とパラレルで、西成区では23.6%が生活保護受給世帯である。介護や医療などの公的サービスも高齢化したミナミに集中しており、その費用をキタの企業が負担する構造になっている。この不公平を解決するため、行政を効率化するのが橋下市長のねらいだった。」
【コメント】
まず、「住民投票で大阪都構想に反対したのは、ミナミの高齢者だった。それは、ある意味では当然だ」と、その後に続く「大阪市を廃止して住民サービスを効率化し、中枢機能を大阪府に一元化して地域開発投資を行なう「大阪都」案は、1948年に大阪府が提案したもので、橋下氏が思いついたわけではない」の脈絡が定かでない(論理構成として何にを言いたいのか不明であり、“ある意味では当然”である説明がなされていない)。
ざっくり言えば、年金受給者や生活扶助受給者など非現役生活者にとって、大阪都でも大阪市でも、貰えるものと貰い方が悪化しない限りどちらでもかまわないことは自明であろう。
高齢者や仕事がない貧乏人より現役世代のほうが、「大阪都」構想は働く機会と賃金条件を良くするものかどうかを判断しなければならない重要な問題なのである。
池田氏は、「介護や医療などの公的サービスも高齢化したミナミに集中しており、その費用をキタの企業が負担する構造になっている。この不公平を解決するため、行政を効率化するのが橋下市長のねらいだった」と説明しているが、大阪都のなかの特別区によって、国民健康保険の負担や生活扶助の支給額を変更すれば、それこそ、キタとミナミで人口移動が起きかねない。
いやな言い方になるが、貧乏人と稼ぎのいい人がミナミとキタで棲み分けしている現状が崩してしまうきっかけになるかもしれない。
お金に余裕がある人がお金のない人を支援する、それを行政機関が徴税と行政サービスで行うというのが社会保障制度の本旨であり、金持ちのキタを貧乏なミナミを切り分けるような施策を行えば、“スラム”を作り出すか混乱を生み出すことになる。
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【池田氏】
「 今回の住民投票では、行政コストを負担するキタのビジネスマンが改革に賛成し、その受益者であるミナミの高齢者が反対する構図が、鮮明に示された。これは日本の縮図であり、今後は団塊の世代の引退でもっと急速に高齢化と貧困化が進む。
これで大阪から若者は脱出し、東京への本社移転は加速するだろう。大阪の高齢者は死ぬまで既得権を守り、財政赤字を増やし続ける「安楽死」を選んだのだ。それは彼らにとっては合理的な選択だが、残された都市は空洞化し、スラム化する。よくも悪くも、大阪は日本の未来を示している。」
【コメント】
この部分が池田氏のもっとも強く言いたかったものであろう。
高齢者や貧乏人の面倒を見るのはほどほどレベルにとどめ、ビジネス(企業)を優先した政策を採るべきという考えである。
池田氏は、「それは彼ら(高齢者)にとっては合理的な選択だが、残された都市は空洞化し、スラム化する」と説明しているが、高齢者や低所得者を切り捨てる政策こそが、都市の空洞化とスラム化を推進すると断言する。
悪政インフレならそういうことも理解できないわけではないが、デフレの基調が消えない状況では、都市の空洞化とスラム化を推進するのみならず、経済の悪化を招き、悪性インフレに転換する道を用意する政策である。
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大阪都構想を拒否した高齢者は大阪の「安楽死」を選んだ - 池田信夫 エコノMIX異論正論
ニューズウィーク日本版 5月21日(木)17時59分配信
大阪都構想をめぐる住民投票は、市の提案が0.8%の僅差で否決され、橋下徹市長は政界引退を表明した。今回の住民投票で印象的なのは、各メディアの出口調査で反対多数だったのは70歳以上だけなのに、全体として反対が賛成を上回ったことだ。これは36万人の期日前投票で、反対の組織票が多かったためといわれる。
いずれにせよ現役世代は賛成多数だったので、高齢者が大阪都構想を拒否したことになる。これは、ある意味では当然だ。今回の住民投票は実質的には橋下氏の信任投票であり、彼は「小さな政府」への改革を進めようとしていた。24区を5区に合併する都構想の目的は、行政のスリム化と住民サービスの効率化である。
特に大きな問題は、高齢者サービスだ。次の図は大阪市のホームページにある高齢化率(25年間の65歳以上の人口増加率)だが、最高の西成区では25年で4倍以上になった。おもしろいことに、この図で高齢化率が16ポイント以上になっている赤い区が、今回の住民投票ですべて反対多数だった。
大阪の高齢化率(出所:総務省)
これは大阪の「南北問題」として昔からよく知られている。梅田を中心とするキタはビジネス街で、大阪駅の北側の再開発で堂々たる近代都市になったが、ミナミには昔ながらの町並みが残り、貧困層が多い。全国の人が思い描く天守閣とかあいりん地区などの大阪のイメージは、ほとんどこのミナミの風景だ。
住民投票で大阪都構想に反対したのは、ミナミの高齢者だった。それは、ある意味では当然だ。大阪市を廃止して住民サービスを効率化し、中枢機能を大阪府に一元化して地域開発投資を行なう「大阪都」案は、1948年に大阪府が提案したもので、橋下氏が思いついたわけではない。
高齢化は貧困化とパラレルで、西成区では23.6%が生活保護受給世帯である。介護や医療などの公的サービスも高齢化したミナミに集中しており、その費用をキタの企業が負担する構造になっている。この不公平を解決するため、行政を効率化するのが橋下市長のねらいだった。
しかしキタの企業に勤務している高所得者の多くは、市内には住んでいない(私も中央区のNHK大阪放送局に勤務していたときは奈良市に住んでいた)。いま市内に住んでいる人の多数派は、住民サービスの受益者なのだ。彼らが住民投票したら、サービスを削減する橋下市長に反対するのは当然である。
橋下氏の説明が無駄の批判ばかりで、都構想のメリットがわからないといわれたが、本当のメリットは職員や住民サービスの削減だ。そういう政策を出すと議会が反対するので、具体的にいえなかったのだろう。それに対して反対派は何も対案を出さず、ただ既得権を守れと主張するだけだった。
今回の住民投票では、行政コストを負担するキタのビジネスマンが改革に賛成し、その受益者であるミナミの高齢者が反対する構図が、鮮明に示された。これは日本の縮図であり、今後は団塊の世代の引退でもっと急速に高齢化と貧困化が進む。
これで大阪から若者は脱出し、東京への本社移転は加速するだろう。大阪の高齢者は死ぬまで既得権を守り、財政赤字を増やし続ける「安楽死」を選んだのだ。それは彼らにとっては合理的な選択だが、残された都市は空洞化し、スラム化する。よくも悪くも、大阪は日本の未来を示している。
池田信夫
最終更新:5月21日(木)17時59分
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150521-00149627-newsweek-bus_all
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