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「『天は人の下に人を造るー「福沢諭吉神話」を超えて』杉田聡先生インタビュー:岩上安身氏」
http://sun.ap.teacup.com/souun/17437.html
2015/5/24 晴耕雨読
https://twitter.com/iwakamiyasumi
5月23日(土)「岩上安身による帯広畜産大学教授・杉田聡氏インタビュー」の模様を実況します。『天は人の下に人を造る』の著者である杉田氏に、福沢諭吉の差別的・拡張主義的言説の実態についてうかがいます。
岩上「本日は『天は人の下に人を造るー「福沢諭吉神話」を超えて』の著者である帯広畜産大学教授の杉田聡先生にお話をうかがいます。私たちは、今日の政治状況を考えるうえで、福沢諭吉を批判的に考えることが重要だと考え、2回目のインタビューをお願いしました」
岩上「まず、前回の振り返りをしたいと思います。福沢の女性差別について。福沢は娼婦制度を廃止することに反対だった。そしてそのうえで、妾や芸妓を非常に差別していました。『賤しき女輩』『汚い賤業婦』『人間以外の醜物』という言い方をしています」
杉田氏「福沢は廃娼論が存在すること自体を否定します。遊郭がなければ、性犯罪や浮気が蔓延する、という理屈です。福沢が言いたいのは、『表向きは隠せ』ということ。娼婦のことを、社会の暗部に追いやろうとします。彼女らが欧米人に見られることを嫌っています」
杉田氏「福沢が言う中等社会、富豪の社会に妾は入ってくるな、ということです」
岩上「奴隷を軽蔑しつつ、奴隷制は必要だ、と言っているようなものですね」
杉田氏「その通りですね」
岩上「『たけくらべ』『にごりえ』『大つごもり』などといった作品を残した樋口一葉は、福沢諭吉とは対照的に、『何物ぞ、はかなき階級を作りて貴賎という』という言葉を残したいます」
杉田氏「福沢のような社会的地位のある男を念頭に置いていたように思えます」
岩上「続いて、福沢による他民族差別の言説を見て行きたいと思います。清国に対して、『チャンチャン』『豚尾』『豚尾児』『豚屋』『孑孑』などと、ヘイトスピーチの限りを尽くしています」
杉田氏「当時の辮髪を差して、『豚』と呼んでいるわけですね」
杉田氏「福沢の場合、こうした言葉が、漫言だけでなく、新聞の社説や著書にも出てきます。『豚尾の兵隊』『豚尾児』『豚尾奴』『豚尾兵と名づくる一種の悪獣』といった表現が出てきます」
岩上「他にも、中国人に対するヘイトスピーチはたくさんあります。『流民乞食』『彼(=支那)の国民の骨に徹したる淫欲の余毒』『半死の病人…豚狩り』などなど」
杉田氏「福沢は他の所で『こんなこと言ってはいかん』と、なんの反省もなく自己合理化しています」
岩上「朝鮮人に対するヘイトスピーチもたくさんありますね。『儒教主義に飽満して腐敗を致したる』『上流は腐儒の巣窟、下流は奴隷の群衆』など」
杉田氏「朝鮮人に対しては、一貫して『腐儒』という言葉を使いますね。福沢の底流には儒教主義があるのですが」
岩上「こういう言説を見ていると、明治の時代精神とはこんなものなのか、と暗澹たる気持になります。そこで、福沢の他に、明治の言論人がどのような言説を残しているのか、見ていこうと思います。まずは、『東洋のルソー』こと中江兆民です」
杉田氏「中江兆民は、1882年の『外交を論ず』のなかで、福沢諭吉の『圧政もまた愉快なるかな』とは正反対のことを書いています. イギリス人やフランス人がインド人、トルコ人に対して無礼に振る舞っていることを批判し、『これが文明か』と問うています」
岩上「次に植木枝盛です。彼は私擬憲法『日本国国権案』を出しています」
杉田氏「敗戦時、米国は日本で芽生えた憲法案として、植木枝盛の『日本国国権案』を参照しています。これは、大日本帝国憲法と比べ、人権を重視した、素晴らしいものです」
岩上「自民党の憲法改正草案を本当に実現しようと、自民党はキャンペーンを始めました。この中で、天賦人権説を認めない、と」
杉田氏「これは、ホッブズ以前、17世紀に戻ってしまう内容のものです。ピューリタン革命以前のものです」
岩上「自民党の礒崎陽輔議員は、『立憲主義なんて聞いたこともない』とツイッターに書きました。これは知らないはずがないんです。オトボケをしているんですね。先進民主主義国の隊列から落伍してしまいます」
杉田氏「植木枝盛は、貧民差別に抗する文章を残しています。福沢が差別する人力車夫、百姓、馬子などを、『天下に至貴・至尊の神』と称えています。植木枝盛は大変頭がまわる人で、街頭で演説会をすると、1000人以上が集まるような人でした」
杉田氏「植木枝盛は、福沢諭吉的な人物に対して、『下等社会を無学だの文盲だのと難癖つけて政治社会の継子にせんとすることは、正しく上等社会と称する一部の輩をして天下国家の政権を私せしめんとするものなり』と言っています」
杉田氏「中江兆民は、妻が被差別民であったと言われています。『平民』や『新平民』という言葉を使わず、『新民』という言葉を使うべきだ、と言っています。『平民』というのは、貴族に対置される言葉なのです」
杉田氏「中江兆民は北海道に移住した際、『西海岸にての感覚』という文章を残しています。この中で、アイヌの人々に対して横暴に振るまい、差別をする日本人に対する怒りを表明しています」
杉田氏「福沢が朝鮮や中国、台湾に対してどのような態度を取ってきたか、見ていきたいと思います。金玉均らが起こした甲申政変に、福沢が関与しています。しかし福沢はその後、この事実を執拗に隠すんですね。しかし、福沢が援助した事実が残っています」
岩上「金玉均や朴泳孝による甲申政変に関して、『自ら進んで役者を選び、役者を教え、また道具立其他万端を差図せられた事実がある』という文言が残っているわけですね。他国の政変を工作するなんて、とんでもないことです」
杉田氏「武器まで提供しています」
杉田氏「金玉均は、日本に来て福沢に対し『誠に申し訳ありません』と謝っています。福沢の期待通りに事を運べなかったことに対し、謝罪しているわけです。このことからも、どれだけ福沢が甲申政変に深く関与していたか、分かるかと思います」
杉田氏「甲申政変の段階で、井上馨による外交交渉が行われているなか、福沢諭吉は『我政府に於ても、止むを得ず曲直を兵力に訴るの外なかる可し』と、戦争を仕掛けろ、と鼓吹しています。日本人が殺されたことの弁償をしろ、という理屈です」
杉田氏「自分で仕掛けておきながら、支那と朝鮮が加害者だ、と福沢は言います。さらに、『御親征の挙、断じて行う可きなり』と言います。天皇が自ら乗り込んで戦争しろ、ということですね」
杉田氏「有名な『脱亜論』はこの時期に書かれます。この論説で明瞭なのは、列強によるアジアの分割に加わるべきだ、ということです。アジアの土地を奪え、遠慮はいらない、といった調子ですね」
岩上「次が台湾です。台湾に対してはよりあからさまです。『一人も残さず殲滅して』などということを書いています」
杉田氏「台湾で次から次に抵抗運動が起こります。そのたびごとに、台湾人を殺戮するよう煽る文章を発表しています」
杉田氏「時事新報に『雑報』という欄があります。この中に、『自分が見切れないで、とんでもないものが出てしまった』と書いています。しかし、台湾人の殺戮を煽っているような文章は、社論として書いています。平山洋さんが言うように、弟子が書いたものではない」
視聴者からの質問「福沢諭吉は病んでいるとしか思えない」
杉田氏「福沢としては、貧知者が生まれないように、かなり自覚的に差別を行っているのだと思います。それは、アジアに対しての視線でも共通しています」
岩上「最後に、日清戦争後に日本が膠州湾を租借した後の福沢の言動を見ていきたいと思います」
杉田氏「支那人の支配には日本人が最適だ、ということを言います。日清戦争の時にいかに日本が手際よく清国を倒したか、ということを強調しています」
岩上「今日の安倍政権が、改憲の動きや戦争法案の制定に動き出しています。さらに、安倍総理は『ポツダム宣言』は読んでいない、と」
杉田氏「これは、表立って否定する段階ではまだない、ということだと思います。すぐ、次の段階がくるでしょう」
杉田氏「集団的自衛権も含めて、かつての自民党ができなかったことを次々とやれるようになってきています。『ポツダム宣言を読んだことがない』というのも、かなり意識的に言っているのだと思います」
以上で「岩上安身による帯広畜産大学教授・杉田聡氏インタビュー」の実況を終了します。
動画アーカイブは準備が整い次第、IWJのトップページに掲載いたします。
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