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対談本『日本戦後史論』が話題の、思想家・内田樹氏(右)と注目の若手論客・白井聡氏
内田樹×白井聡 ベストセラー論客が怒りの対談!「安倍外交は思考停止状態の“葛藤なき対米従属”。自ら進んで愚鈍化している」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150523-00048231-playboyz-pol
週プレNEWS 5月23日(土)6時0分配信
憲法改正、集団的自衛権の行使容認、原発再稼働など、ここ数年、日本が直面する諸問題について「戦後の歩み」という視点から分析し、警鐘を鳴らす内田樹(たつる)氏と白井聡氏の対談本『日本戦後史論』(徳間書店)が注目を集めている。
戦後70年の節目で大きな政策転換を図ろうとする日本の「今」を、世代の異なる人気論客のふたりはどう捉えているのか?
* * *
―まずは、おふたりがなぜ日本の政治や社会が置かれている今の状況に強い危機感を感じ、怒りを露(あらわ)にしているのかというあたりから伺いたいのですが?
白井 ともかく起きることすべてに腹が立つので、自分が何に怒っているのかわからなくなりそうなんですが、きっかけは、やはり4年前の3・11東日本大震災です。
で、その3・11と絡めて話すと、最近、第2次世界大戦中の本土空襲に対する政府の対応について書かれた『検証 防空法 空襲下で禁じられた避難』(法律文化社)という本を読んだんですね。戦前の政府は、対米戦が始まる前から本土空襲を想定して「防空法」という法律をつくるのですが、その基本精神は「国民は逃げてはいけない」ということなんです。
なぜかというと「初期消火が国民の義務」だからです。政府は焼夷(しょうい)弾の威力をよくわかっていながら「焼夷弾なんて怖くない。国民は逃げずに都市にとどまって、勇猛果敢に火と戦え」と。学童疎開が行なわれましたが、それは若い命を救うためではなくて、あくまで「消火の足手まといになるから」というロジックでなされたのです。
しかも、「すぐに飛び出して初期消火ができるように、防空壕(ごう)は家の床下に穴を掘って造るように」としたのです。でも、家が空襲で燃えれば、防空壕に避難した人が蒸し焼きになって死んでしまうことなどわかるはず。戦前の政府は国民の命を守るのではなく、この「防空法」で彼らに逃げることを許さず、都市に人間を閉じ込めて蒸し焼きにしたのです。
この本を読んでいると、今の福島が置かれている状況を連想せずにはいられません。本当は原発や放射線がどんなに恐ろしいものかわかっていながら、安倍政権は国民や国土ではなく「政府そのもの」や「国」を守るために現実を否認してでも前に進もうとしている。やっていることは戦前の防空法と同じです。
表向き、日本という国は1945年の敗戦によって大日本帝国とはまったく違う国に生まれ変わったことになっているけれど、3・11以降、本当はそうじゃないということが明らかになった。戦時中、国民は国家の奴隷のような状態だったわけですが、今もその状態を脱していないと思うわけです。ところが、国民は自分たちが奴隷状態であることに腹も立てず、気づきもしない。
それどころか、それに気づいて怒り始めた人に対して、「バカじゃないの」と指さして笑い合うことを娯楽にする連中が増殖している。僕はそんな国民に呆れ果てています。
内田 現状に対する認識はほとんど同じです。でも、市民的自由と民主主義という、近代市民社会の価値観が支配的だった時期もあったと思います。
例えば、高度成長の駆動力になっていたのは「今度はアメリカに勝つ」という、戦中派の戦闘的なメンタリティでした。「軍事で負けた戦いを経済の舞台でやり返す」という気持ちが確かにあった。
その一方で、戦後日本の外交戦略は一貫して「対米従属を通じて対米自立を実現する」という屈折したものでした。アメリカから自立するためには、とりあえず徹底的にアメリカに従属しなければならないという複雑な方程式を戦後日本は選ぶことを余儀なくされた。
だから、日本の戦後は「葛藤の70年間」だったと思います。ただ、この葛藤が生産的に機能したという側面もあった。人間は葛藤の中で成長するものですから。
それがこの10年で大きく変わり、葛藤を忌避して、シンプルな物語を好む人たちが社会の前面に出てきた。対米従属と対米自立の難しい案配ができなくなった。
政治的な右傾化というよりはむしろ「精神的な幼児化」ということじゃないかと思います。建前と本音を巧みに使い分けしながら、アメリカに面従腹背して国益をじりじりと確保するという複雑な芸当をする能力を日本人が失った。
日本政府が外交能力を失い、日本人の国際感覚が鈍麻して、ベタでわかりやすいストーリーにすがりつくようになったのです。その結果、外交は思考停止状態の「葛藤なき対米従属」になっている。
白井 まさに話題になっている中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)の問題なんて好例ですよね。多くの先進国が参加を決めているのに、日本は「アメリカが参加しないなら不参加」だという。
AIIBの立ち上げにアメリカの同盟国でもあるイギリスやドイツが参加を決めた意味は大きい。ヨーロッパが、ドル基軸通貨体制が遠からず終焉(しゅうえん)に向かうと踏んでいるということです。韓国や台湾も自国の判断で参加を決めているのに、日本だけがアメリカの顔色をずっと見ている。まさに思考停止の状態で、国際社会の笑いものです。
内田 AIIBに加盟するかどうかは、どの国にとっても難しい政策判断であったはずです。でも、日本の政治家も外交官もこの問題で「悩んだ」形跡がない。複数の選択肢の適否を考量的に判断する能力がないのでしょう。「アメリカについてゆく」という以外の選択肢は、初めから勘定に入っていない。
本来は厳しい葛藤の中で政治過程の成熟は果たされるわけですけれど、それがまったく感じられない。
べたべたの対米従属と、安倍政権の掲げる「東京裁判史観の否定」や改憲路線ははっきり矛盾するはずですけれど、「それはそれ、これはこれ」と切り分けて、その間に存在する根本的な矛盾について考えることを放棄している。自ら進んで愚鈍化しているとしか思えません。
■この続きは明日配信予定!
●内田樹(うちだ・たつる)
1950年生まれ、東京都出身。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院博士課程中退。神戸女学院大学名誉教授。京都精華大学客員教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。近著に『街場の戦争論』(ミシマ社)、『内田樹の大市民講座』(朝日新聞出版)、『竹と樹のマンガ文化論』(竹宮惠子氏と共著・小学館新書)、編著に『日本の反知性主義』(晶文社)などがある
●白井聡(しらい・さとし)
1977年生まれ、東京都出身。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。専門は政治学・社会思想。文化学園大学助教を経て、京都精華大学人文学部総合人文学科専任教員。著書に『永続敗戦論』(太田出版)、『日本劣化論』(笠井潔氏と共著・ちくま新書)、『偽りの戦後日本』(カレル・ヴァン・ウォルフレン氏と共著・KADOKAWA)など
(構成/川喜田 研 撮影/祐実知明)
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