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「正しい政策」で大失敗が二人の共通点!? photo Getty Images
政治家・橋下徹はいずれ復活する。維新よりも民主党が党分裂にふさわしい
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43438
2015年05月22日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
大阪都構想が住民投票で否決された。橋下徹大阪市長は政界引退を表明し、維新の党は分裂の危機がささやかれている。橋下氏は本当に政界を引退するのか。維新は分裂し野党が再編されるのか。私の見立てはいずれも「ノー」だ。
■「橋下都構想」の敗因は政策ではなく政治判断のミス
まず維新分裂・野党再編シナリオはどうか。一般に政党が分裂するのは、基本政策をめぐる激しい対立が引き金になる。今回の大阪都構想をめぐって、維新の党に対立があったかといえば、それはない。
負けたのは「大阪都構想」という、党が一致団結して推進してきた看板政策だ。それで負けたからといって、だれかが「肝心の政策がまずかったのだ」と言い出せるか。言えるわけがない。そんなことを言えば「あなただって推進してきたんじゃないか、いまさら何を言うんだ」という話になる。都構想を否定するのは、自分のもっとも大事な政治信条を否定するようなものなのだ。
しかも、住民投票で負けたといっても、勝負はきわめて僅差だった。私が都構想を支持しているから、身びいきに聞こえるかもしれないが「どちらに転んでもおかしくない」結果だったと言っていい。
それでも負けは負けだから、何が間違ったのかを検証するのは、政治家として大事な作業だ。
はっきり言うが、住民投票で負けたのは「主張が正しくなかった」からではない。正しい政策を受け入れるだけ、大阪市民の理解と決意が十分に熟していなかった。市民の揺れ動く気持ちを見極め損なって「5月17日に民意を問う」と決めた、橋下市長以下の「政治判断が間違っていた」のである。
■ 急ぎ過ぎて失敗した橋下市長と第1次安倍政権
大阪都構想は市と府を廃止して、新しい都と特別区に編成し直す。その過程で市と府が握っていた権限の一部を特別区に移す、という大胆な統治機構の見直し案である。市にも府にも職員と議会議員、それに補助金その他で利権にぶらさがっている企業や団体がある。
そんな既得権益勢力は市民の目に見えにくい。都構想実現のような大改革を成し遂げるには、既得権益をあぶりだして議員や政党はもちろん関係業界、マスコミを含めて幅広い支持を集める必要がある。その先に初めて、肝心の主役である市民の支持が期待できる。
そういう広い意味の政治運営で、橋下氏がどうだったかといえば、きわめて強い発信力があった半面、慰安婦問題に関する発言などで無用な反発を招いていたのはたしかだ。そこは本人も認めているとおりだ。自分に対する反発を自覚するなら、もっと慎重、ていねいであっても良かった。
つまり政策は正しかった。だが、肝心の大阪市民が正しく理解して受け入れるほど機は熟していなかった。そこを見誤った。失敗の原因はここである。政治の世界に「イフ」はないが、もしも勝負の時をもう少し遅らせて市民の理解が進むのを待っていたら、成功したかもしれない。
「正しい政策だったにもかかわらず、うまくいかなかった」という点では、第1次安倍晋三政権もそうだった。公務員制度改革など一連の政策は正しかったのだが、急ぎすぎて霞が関とガチンコ対決に持ち込んだ。それで官僚を敵に回し猛烈な抵抗に遭って、最終的にはあえなく自己崩壊した。
具体的に言えば、政権崩壊の引き金になった「消えた年金5000万件」問題だ。お取り潰しになる社会保険庁(現在の日本年金機構)の官僚、労働組合は水面下で「自分たちがいかにデタラメな仕事をしてきたか」という情報を当時の民主党に横流しした。
政権もろとも、社会保険庁解体案を葬り去ろうとしたのだ。当時の中川秀直自民党幹事長は、こうした動きを「官僚の自爆テロ」と評している。当時の渡辺喜美行革相が公務員制度改革の構想をぶちあげると、官僚出身の内閣官房副長官が「そんなことをしたら霞が関で倒閣運動が起きますよ」と脅した1件もある。
■ 民主党の方が分裂するにふさわしい
大胆な改革を進めるには、正しい政策を示すだけでは十分ではない。官僚や他政党、労組、業界団体、マスコミなど改革に抵抗する勢力を上手にコントロールしなければならない。そのあたりが大阪都構想についても、上手くいかなかったのではないか。
ちなみに、こういう事態は政治の世界に限らず企業経営でもありうる。
たとえば先の大塚家具騒動だ。社長が唱えたのは正しい路線だったかもしれないが、会長や幹部社員の強い反発を浴びた。結果的に株主総会で社長の路線が支持されたが、会社にダメージを与えた点で経営改革を目指すトップの判断としてはまずかった、と言わざるをえない。
全体状況が大胆な改革を受け入れるだけ熟しているかどうかを判断するのは、政治でも会社経営でもトップの仕事である。もっと言えば、正しい改革路線は書店に行けば、いくらでも売っている。それを実行して成功するかどうかを判断するのは、現場を知っているトップにしかできないのだ。
今回の失敗は路線の誤りではなく、情勢判断の誤りである。そうであれば、政治責任は橋下氏と維新の党の江田憲司代表が辞任したことで十分、説明がつく。もともと都構想実現のためにできた大阪維新の会であり、維新の党も同じ路線を受け継いで掲げた政策なのだから、いまさら深刻な路線対立は起きようがない。そうであれば党の分裂もないし、それを契機にした野党再編もない、とみるのが自然である。
それでも維新の党を見限って出ていこうという議員がいるとしたら、それはそもそも大阪都構想とか経済、外交安全保障とか政策は2の次、3の次という議員だろう。当選が目的で政策は関係ない「エセ政治家」だ。それは勝手にすればいい。そういう政治家が力をつけるわけがない。マスコミが党分裂とか野党再編とかはやしたてるのは、そうなったほうが面白いからだ。
民主党と比べても、維新の党は都構想のような統治機構改革、市場機能重視の経済政策、日本を脅かす脅威(中国と北朝鮮)の存在を前提とした外交安保といった基本政策で、かなりの程度、認識を共有している。成長重視か格差是正重視か、集団的自衛権の容認か否認かをめぐって意見が割れている民主党のほうが、よほど分裂するにふさわしい。
■ 失敗を経験した政治家は貴重である
橋下氏の政界引退はどうか。けじめをつけるために、当分は表舞台から身を引くだろう。だが、絶対に再び政治に戻らないかといえば、そうとは言えない。橋下氏自身が記者会見で「江田代表に党の法律顧問で雇ってくれないかと言った」と語った。これは冗談混じりだろうが、政界から完全引退する気はない証拠ではないか。
なにより経済、外交安保と日本を取り巻く情勢が厳しい。官僚が情勢を分析して政策を決めるような政治では、とても立ち行かない。自分自身が情勢判断し、政策を構想するような政治家は、これまで以上に必要になるのだ。
橋下氏は会見で「負けるんだったら仕掛けるべきじゃなかった」と判断の誤りを認めて総括した。安倍首相もそうだが、失敗を経験した政治家こそ貴重である。政治家を生み出すのは客観情勢だ。いずれ橋下氏は復活する。
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