http://www.asyura2.com/15/senkyo184/msg/822.html
Tweet |
野党ならずとも心配になる労働者派遣改正法案の核心
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43332
2015年05月15日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
安全保障法制の整備と並んで、通常国会の焦点の1つは労働者派遣法の改正だ。
現状はアナウンサーなど専門28業務であれば、派遣元の会社で有期雇用であっても派遣先で無期限に働けるが、改正案が成立すると最長3年までしか働けなくなるかもしれない懸念がある。大丈夫なのか。
■ なぜそれでも派遣法を改正するのか
派遣の実態はなかなか複雑だ。まず現状を整理しよう。
派遣労働者には、派遣会社と無期雇用契約を結んでいる場合と有期雇用の場合がある。厚生労働省の調査だと、派遣元で期間の定めがない(=無期雇用)契約を結んでいる人は全体の21.3%にすぎない(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg2/koyo/130829/item4_2.pdf)。
つまり、派遣労働者の8割近くは3〜5年程度の有期雇用契約である。
加えて、現状はアナウンサーや通訳、秘書、受付、情報処理システム関係など専門28業務とそれ以外の業務を区別している。なぜか。もともと労働者派遣は賃金をピンハネする業者の横行を防ぐために法律で禁止されていた。いわゆる口入れ屋稼業の締め出しである。
その後、企業が生産性を高めるために業務を外部委託する必要性が高まり、1985年に最初の労働者派遣法が作られた。そのとき、いきなりすべての業務に派遣を認めるのではなく、特殊な専門業務に限って段階的に認めてきた経緯がある。少しずつ枠を広げてきたのだ。
現状は28業務なら無期限に派遣先で働ける。ところが、今回の改正案はまず28業務とそれ以外の業務の区別自体をなくしたうえで、派遣元で有期雇用の場合だと、派遣先で最長3年までしか働けなくなる。
なぜ、そんな改正を目指すのかといえば、厚労省は「不安定な有期派遣労働が固定化するのを防ぎ、キャリアアップの契機にもなる」と説明している。派遣元と有期雇用だから不安定なのに、その状態が派遣先で無期限に続くのはよくないという理屈である。
だが、曲がりなりにも無期限で働けたのに「最長3年で打ち切り」というのは一層、不安定になりはしないか。そんな心配は野党ならずとも、派遣労働者にも当然、あるだろう。
■ セーフティネットはあるか
そういう批判に応えるために、改正案は3年の期間が到来した派遣労働者を抱える派遣会社に雇用安定化策を義務付けた。まず、派遣先企業に対して直接雇用に切り替えるよう依頼する。派遣会社が新たな派遣先を提供する。それから、派遣会社自身が有期雇用から無期雇用に切り替える。無期雇用なら「3年打ち切りルール」を適用しないのだ。最後が、その他安定雇用に必要な措置を講じるーーの4つだ。
派遣先が直接雇用に切り替えてくれれば一番いい。だが派遣先が派遣を受け入れるのは経費節減が狙いだから、実際はなかなか狭き門だろう。そこで2番目の「派遣会社が無期雇用に切り替える」と3番目の「新たな派遣先を見つける」に期待がかかる。
厚労省も無期雇用への切り替えと新たな派遣先の紹介をセーフティネットに考えているようだ(たとえば規制改革会議での発言。http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg2/koyo/130829/summary0829.pdf)。
政府は昨年の通常国会と臨時国会にも改正案を提出したが、成立させられず、今回が3度目の挑戦である。そこで派遣会社の中には法改正を見越して、労働契約を有期雇用から無期雇用に切り替える動きも出始めているようだ。
3年で派遣契約を打ち切られてしまえば、当の労働者も困るが、派遣料が入らなくなる派遣会社も困るからだ。だからといって働く環境が改善しているかといえば、そうとも言えない。
それでも有期契約が無期になり、それが武器になって3年打ち切りもないなら、一歩前進かもしれない。給料の原資は派遣先企業の支払いなので、給料が増えるかどうか、鍵はあくまで派遣先企業が握っている。
■ 真の問題は法律の「派遣社員差別」
興味深いのはテレビ業界だ。専門28業種の中には「放送番組等の制作関係」もある。下請けで働くプロデューサーやディレクターといった人たちだ。心配になって知人のプロデューサーに「3年で契約を打ち切られたら、どうなるの?」と聞いてみたら、こんな返事が返ってきた。
「いろんなケースがあると思うけど、この業界は個人で仕事をしている人も多いですからね。デキる人は個人で番組と契約したりするんじゃないですか」。なるほど、そういう手があったか。派遣会社にピンハネされるくらいなら、いっそ個人で仕事の契約をするのだ。
そうは言っても、だれにも可能ではない。受付の仕事で個人契約は難しいだろう。個人で仕事をとれるほど力量があるなら、そもそも派遣会社と有期雇用契約を結ぶ理由もない。
真の問題は労働者派遣法の根本思想にある。
正社員こそが本来の労働者であって、派遣労働者をあくまで臨時の労働者と位置付けているのだ。それは改正法案の第25条に「派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とする考え方」という文言を追加するところに如実に示されている(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/anbun_1.pdf)。
法律自体が正社員に比べて派遣社員を差別しているのだ。これはおかしくないか。そういう思想に基づいているから、派遣労働を法律で規制する目的も「常用代替防止」という考え方になっている。
つまり、常用労働者=正社員の仕事が派遣社員に取って代わられるのを防止するのが目的なのだ。法律を作った当初、わずか専門13業種に限って派遣を認めたのも「その程度なら大多数の正社員の仕事は奪われずに済むだろう」と考えたからだ。
■「同一労働・同一賃金」が当たり前
一方で派遣労働者は劇的に増えた。だから、彼らの生活安定にも気を配らなければならない。そこで派遣期間に上限を定めて常態化を防ぐ一方、無期雇用や新たな仕事探しを義務付ける、という苦しい改正案の建てつけになっている。
本来なら、企業に対して正社員と派遣労働者の均等・均衡待遇を働きかけるべきなのだ。そういう考えは、改正案の附則第2条3に「政府は派遣労働者と(中略)派遣先に雇用される労働者との均等な待遇及び均衡のとれた待遇の確保の在り方について検討するため、調査研究その他の必要な措置を講ずるものとする」という文言にかろうじて盛り込まれた。
だが、あくまで附則にすぎない。それ自体が今回の法改正は良く言って道半ば、悪く言えば中途半端なことを示している。派遣労働を「臨時的、一時的労働」などと法律で差別しているのは、いまや日本くらいだ。欧州では正規と非正規の区別なく「同一労働・同一賃金」が当たり前である。
最後に非正規労働の現状がどうなっているか、最新のデータを示しておこう。
厚労省が5月12日に公表した労働力調査によれば、2015年1〜3月期に非正規労働者は前年同期に比べて9万人増えて1979万人になった。一方、正規は同じく42万人増えて3265万人である。非正規は全体の37.7%だ(http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/4hanki/dt/pdf/2015_1.pdf)。
これだけみると、非正規は相変わらず増えている話になる。だが、問題はその増え方である。実は2013年10〜12月期の122万人増以来、非正規の伸び率はずっと鈍化している。一方、正規の増え方は14年1〜3月期の58万人減から増加に逆転した。
つまり、いよいよ非正規から正規への転換が定着してきたのだ。企業は非正規を増やすだけでは間に合わず、正社員を増やし始めた。景気が立ち上がってきた証拠の1つでもある。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK184掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。