中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣が示した「集団的自衛権の行使は自衛の措置の一環だとして、専守防衛に含まれるという見解」は、自衛隊（警察予備隊）創設から現在に至るまで積み重ねられてきた憲法条文の恣意的解釈と同じで、国家の存立基盤に関わる問題までが、政治的多数派による“ものは言い様”レベルの説明で決定できるようにする恥ずべき悪質な説明の一つである。

　“専守防衛”だからと言って違憲性から逃れられることはできないが、「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し，その防衛力行使の態様も，自衛のための必要最低限度にとどめ，また保持する防衛力も自衛のための必要最低限度のものに限られる」というのが“専守防衛”の概念である。

　「他国に対する武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされる明白な危険がある場合にも、自衛の措置として武力行使が容認されることになった。それに伴い、専守防衛にはこうした場合も含むと解している」ことが容認されるとしたら、世界のどこかで起きた軍事衝突が、時の政権の世界観や安保観次第で、“専守防衛”に基づく軍事介入を必要とする事態と解することを認めてしまうことになる。

　何が“日本の存立が脅かされる明白な危険”なのかという現実認識は、時の政権（政治的多数派）の性格によって大きく異なるものである。

　違憲性から逃れ政策継続性を尊ぶとしても、他国（しかも軍事同盟を結んでいない相手を想定）に対す攻撃への反撃までも“専守防衛”とするような牽強付会的説明は、将来国策を誤るタネを蒔くようなものである。

　口先のごまかしで無理矢理“専守防衛”の枠内に収めようとするより、“専守防衛”から踏み出した安保政策に移行すると説明するほうが残る禍根はまだ少ないと言える。

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防衛省「集団的自衛権行使は専守防衛に含む」［ＮＨＫ］
5月13日 23時16分

防衛省は、集団的自衛権の行使は自衛の措置の一環だとして、専守防衛に含まれるという見解をまとめました。

この見解は、１２日の参議院外交防衛委員会での質疑の中で、中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣が示したものです。

この中で、中谷大臣は「従来、『専守防衛』の説明に用いてきた『相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使する』ということばは、日本が武力攻撃を受けたときを指すものと考えてきた」と述べました。そのうえで、中谷大臣は「去年の閣議決定で憲法解釈が改められ、他国に対する武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされる明白な危険がある場合にも、自衛の措置として武力行使が容認されることになった。それに伴い、専守防衛にはこうした場合も含むと解している」と述べ、集団的自衛権の行使も自衛の措置の一環だとして専守防衛に含まれるという見解を示しました。

また、中谷大臣は集団的自衛権の行使について、「他国を防衛すること自体を目的とするものではないので、専守防衛の定義に何ら変更はない」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150513/k10010078871000.html
　

コメント
01. 2015年5月14日 17:44:45 : RlRFruY3A2 ＞中谷大臣は集団的自衛権の行使について、「他国を防衛すること自体を目的とするものではないので、 ＞専守防衛の定義に何ら変更はない」と述べました。 何言っているのか　全然わからないのですが？ しょせんイラク戦争を支持していた過去の亡霊ですか？ 安倍ちゃんの「イラク戦争は正しかったんだい　ブッシュ支持したボクは正しかったんだい｝と言うが為だけに起用された大臣ですか？
02. 木曽の山猿 2015年5月14日 18:04:45 : YnLQsTybFStJg : pshmn5FbhI 「平和」という文字を付ければどんな戦闘行為も許容される積極的平和主義と同様、 憲法解釈が変われば先制攻撃も専守防衛で許容される。 相手に殺意を感じたと言えばどんな殺人や傷害も行為も正当防衛となる。 窃盗行為も他人の家に落ちていた物を単に拾っただけと言えば遺失物取得に過ぎない。 賄賂をもらっても友人からの慣習的な贈答と言い逃れられる。 詐欺を働いても相手の勘違いと言えば許される。 国会でやる取り去れる言葉は、 全く論理でなく、 情念でもなく、 記号でもなく、 意味のない「おと」の羅列に過ぎなくなってきた。 なにせボクたち、政権セイトウだもんね。 アベちゃんは最高ケンリョクシャなんだもんね。 ボクチンボウエイダイジンなんだゼ。 ノウタリン政権のノウタリン防衛大臣、 でもこの状態を誰が招いた、 だれがノウタリン政権を許容している？ ノウタリン国民？
03. 罵愚 2015年5月14日 18:15:16 : /bmsqcIot4voM : JGfMSWmTO6 　攻撃は最良の防御だからなぁ〜 [３２削除理由]：削除人：アラシ
04. 2015年5月14日 18:52:39 : RlRFruY3A2 いつもの♪くんか
05. 2015年5月14日 20:29:31 : qMUvaCJu7g >中谷大臣は集団的自衛権の行使について、「他国を防衛すること自体を目的とす >るものではないので、専守防衛の定義に何ら変更はない」 これは米軍のみを対象にして個別的自衛権の行使をする中で共同防衛の一環として米軍に対して攻撃があった時にそれに対してのみ自衛隊が集団的自衛権を行使するがそれ以外のケースでの行使は想定しない、という意味か？分かりにくいが違憲性という観点から判断するとグレーといったところではないか？
06. 罵愚 2015年5月15日 04:41:27 : /bmsqcIot4voM : JGfMSWmTO6 >違憲性という観点から判断するとグレーといったところではないか？ 　あるいはすでに平和憲法を突き抜けて、憲法改正を視野に入れているとか… [３２削除理由]：削除人：アラシ
07. 2015年5月15日 06:40:35 : Al8EXYlbbs 自国、の定義が広がった？ アメリカ様は「他人」ではありません。他人の他は「その他」の他。 主人に吠え掛からないのは、番犬の基本。他人との区別は犬でもつけます。 ブッシュやブレアが自らの間違ってたことを認めてもまだ、ご主人様は間違ってない！！と言い張る、忠実すぎるお犬様です。
08. 2015年5月15日 19:06:20 : IJjjrLkBu1 　 過去の戦争と近代戦争とは同じ戦争と呼べるような物では無い。そもそも専守防衛の理念は、宣戦布告、停戦、撤退、休戦、捕虜の扱いなど、一定のルールの下で、国家対国家が行う場合の概念で有った。 　　従って、敵国が宣戦布告をして来た場合に受けて立つことをして、専守防衛原則の適用を外し、戦争態勢に入る決断を日本国がする、ということだ。それ以外には、幾ら外交上の問題が発生しても、日本国から相手国に軍隊機能を使用した宣戦布告はしない、という原則を意味する。それが現行憲法上の専守防衛の、国民が共有して来た概念で有った。 　　　ところが近代戦争は、国家間の戦争というよりも地域紛争の様相を呈している。国境を跨いで部族毎に結集して抗争となり、なおかつ、そこへ先進多国籍軍需産業国がどちらかに加勢し、空爆を繰り広げるため、軍人、民間人の区別無く被害が発生している。そこで非武装住民で有ったものが家族を殺され自宅を破壊された怒りに端を発して武器を取り、武装市民となるのである。 　　武装市民も国境を超えてシンパシーを感じた部族に参加する。 　　そこへ軍需産業が武器、兵器を供給し、近年は傭兵ビジネスも始めている。 　　既に専守防衛などという、宣戦布告があり、撤収や撤退の決断が可能であり、捕虜になっても一定のルールの下で扱われる、などという戦争は過去である。 　　近代戦争は一度始まれば終わりが無い。何処か第三国が部族長を集めて刀狩りをし、部族毎に民生に移行出来るよう、地道な努力を必要とする。 　　こういう際に必要なのは、民間人を殺傷せずにむしろ復興を目的とした行動に特化した国である。それが日本で有ったのである。どこの部族にも付かず、荒廃した地域を修復して歩くことが信頼に繋がっていたのであるが、もうそれも無い。 　　専守防衛が集団的自衛にコミットするなど、過去戦と近代戦を全く区別出来ていない防衛大臣ではどうにもならない。 　　せめて、宣戦布告を以って始まるものでは無い近代戦に専守防衛は無効である、と宣言するならまだしも、集団的自衛の一環である、などという防衛大臣の下では、過去戦の大本営と変わらず、戦略は全く俯瞰出来ていないのである。 　　このような中で、米英の空爆を終えた地域に掃討で入るか、或いは掃討の指導に現地入りするようなことは有ってはならない。 　　　近代戦は始まれば仲介役無しには終わらない、休戦、敗戦宣言も無い、国境を超えた紛争である。こうした紛争にどのような参加をするのか、当然民間人の中に入ることになるが、日本は過去に民間人をターゲットとして「戦争らしきもの」を行い、愚かにも勝利の雄叫びを挙げていた、その延長になる危険性は、防衛大臣の雑な見解を聞くにつけ、拭うことは出来ないのである。

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