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安倍さんは「粗野・無知の和製ヒトラー」になった
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2015/05/24/post-90.html
サンデー毎日2015年5月24日号
牧太郎の青い空白い雲 連載521
GWの間、安倍晋三首相と日本に、何か空恐ろしいことが起こるような気がしてならなかった。
日米首脳会談後の共同記者会見。安倍さんが下ばっかり見ながら「日米同盟の歴史に新たな1ページを開いた!」と演説している最中、突然の突風。「棒読み首相」の手からカンニングペーパーが2、3枚、飛んでいってしまった。
不吉だった。
翌日、流暢(りゆうちよう)とは言い難い英語で安倍さんが演説をしたのを、メディアは「上下院で演説をしたのは安倍さんが初めて」とお世辞を並べた。こんな威勢のいい演説を聞かされると、空恐ろしいことが起こるような気がして......。
× × ×
ドイツの文学者、アンドリュー・ナゴルスキの『ヒトラーランド−ナチの台頭を目撃した人々』は世界7カ国で刊行され、いま、話題を集めている。
第二次世界大戦に米国が参戦する1941年末までの間に、ドイツを訪れたアメリカ人たちが独裁者アドルフ・ヒトラーをどう見ていたか? を分析した本である。
「粗野で、無知で、教養もなく、ユダヤ人を口汚く罵(ののし)り、誇大妄想にしか見えない『わが闘争』構想を述べ、批判を一切許さず、一対一のインタビューでさえ、質問抜きに演説に終わらせてしまう」
そんな男が独裁者になった「謎」を、この本はいとも簡単に「彼は粗野で、無知で、無教養だったからだ」と結論付けている。「粗野で無知で無教養」の男だから誰も警戒しなかった。そのうちにヒトラーは復讐心(ふくしゆうしん)、敵愾(てきがい)心、差別感情といった「暗い情念」を利用して、権力を手に入れる。粗野・無知・無教養ほどチカラになるものはない! と看破している。
× × ×
米国議会で得意満面だった安倍さんにヒトラーとよく似た「粗野・無知・無教養」を感じた。一般教育レベルの教養に欠けている。
例えば「侵略という言葉の定義は、学界的にも国際的にも定まっていない」と大声を上げる。
1974年の国連決議第1条で「侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全若しくは政治的独立に対する、又は国際連合の憲章と両立しない......」などと具体的に「侵略の定義」を列挙している。 安倍さんは、それを知らない。
つい最近も、テレビのインタビューで、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)のことを「悪い高利貸」にたとえた。
57カ国が参加を表明。世界銀行、国際通貨基金(IMF)まで協力する国際金融機関である。アメリカさえ、参加するタイミングを模索している。それを「マチ金」呼ばわりするのは......あまりに「粗野」ではあるまいか?
批判を許さないのも安倍流。批判を受けると「見解が違う!」と切り捨てる。
一番の「無知」はアメリカと日本では「平和への役割」が違うことを知らないことだ。
米議会演説で「今年の夏には、安保法制を成立させる!」と叫んだ時「安倍さんはついにヒトラーになった」と思った。
× × ×
安倍さんは外国のメディアにまでいちゃもんをつける。『ニューヨーク・タイムズ』が「安倍晋三と日本の歴史」と題した社説で「安倍政権は歴史を粉飾しようとすることで問題を複雑化させてきた」などと、歴史認識を批判すると外務省の川村外務報道官の名で徹底反論する。しかし、アメリカのメディアは「安倍は粗野で無知で無教養」と思っている。
「日本国憲法はアメリカからの押しつけ。だから自主憲法を作る!」と主張する安倍さんが日米同盟を絶対視し、アメリカの要求で創設した自衛隊をアメリカ軍の下請け部隊にしようとしている。アメリカのメディアはこの「矛盾」に気づいているからだ。
アメリカの、アメリカによる、アメリカのための「安倍議会演説」。「粗野・無知・無教養」のヒトラーを軽蔑したように、アメリカは「和製ヒトラー」を陰で軽蔑し、その上で、安倍さんが東アジアの「火種」になることを警戒している。
ともかく「不吉」である。
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